オートモビルカウンシル2021 ヤナセクラシックカーセンターブース《写真撮影  内田俊一》

ヤナセクラシックセンターは、4月9日から11日まで開催されているオートモビルカウンシル2021に出展。今後はメルセデスだけでなく、これまでヤナセが扱ってきたフォルクスワーゲンやアウディも手掛けていく方針だという。

◆ヤナセの企業理念を具現化するために

ヤナセオートシステムズ取締役社長の江花辰実氏は、ヤナセクラシックカーセンターの設立の趣旨について、「ヤナセの企業理念である、“最上質な商品、サービス、技術を感謝の心を込めて提供し、夢と感動溢れるクルマのある人生を作ること”。これを具現化するひとつとして、乗って楽しむクラシックカーをお届けすることだ」と説明。

現在専任のテクニシャンは7名、アドバイザー1名、アシスタント2名という陣容で事業を行っており、「ヤナセが保有する、ヤナセの歴史でもある日本に輸入された様々な車両の貴重な資料なども閲覧出来るような体制も整えている。施設内には輸入車専門の塗装工場やリビルト工場も併設している」という。また、「協力企業のスタークラフトと3Dプリンターを使った部品の復刻製作を行う」と述べる。

さらに「これまではメルセデス中心のテクニシャンだったが、直近ではアウディのベテランメカニックを採用し、今後は車種拡大にも取り組んでいきたい」とコメント。ヤナセオートシステムズヤナセクラシックカーセンター担当の神埜雅弘氏も、「フォルクスワーゲンとアウディは社内で色々調べて、当時ヤナセがやっていた時代の整備書や資料は全部手に入った」とのことなので、この2メーカーも力を入れていくことになる。

また、昨年暮れに、神奈川県横浜市鶴見区にショールームを開設。「クラシックカーレース等に出場するオーナーがクルマを預けることや、そういったクルマに定期整備のサービスを提供することなどを計画しているパートナー企業とタイアップし、ここで我々の販売車両を展示する。将来的にはこのパートナー企業はクラシックカーのレンタルやツーリングなども予定しているので、この地域でのクラシックカーファンのサロン的な役割を果たせるような場になることを目指している」と話す。

◆正規輸入車に加え並行輸入車も

現在同社が販売する整備済み車両のメニューは大きく2つある。神埜氏によると、ひとつは、「過去ヤナセが正規輸入した車両を改めてヤナセクラシックカーセンターで購入したクルマだ」という。この背景に、「憧れのクルマを買ったのだが壊れてなかなか調子が良くないなどで、我々のところに修理依頼がある。せっかく購入したのにさらに修理費用がかかるという噂が世間に広がってしまうと、こういったクルマを買いたいというお客様が躊躇してしまう原因のひとつになるのではないか」。

ヤナセクラシックカーセンターには、「これらのクルマが日本に輸入されてきたときの新車整備、その後不具合が発生しその修理をしたり、メーカーに対して改善依頼をしたりしていた人間が働いているので、そういう人間が見るとこのクルマはもう少しするとここが壊れるのではないかなどの予防整備が出来る。これは我々が蓄積してきたナレッジの使い方のひとつで、そこに加え、普通の不具合や登録に必要な車検整備も行い、それらを含めたクルマの整備をパッケージにして、さらにヤナセクラシックカー保証を付けて販売する」。今回展示されたメルセデスベンツ『560SL(R107)』と『500SL(R129)』がそれにあたる。

もうひとつは、今回初めてのメニューに加えた「並行輸入車だ」と神埜氏。「我々が知っている限りの整備、不具合の修理、日本法規に合わせる改善といったことはすべてやった上で販売する。しかしこちらは正規輸入ではないが故に、ヤナセクラシックカー保証は付けない」とのことだ。こちらの例として『280SL(W113)』が展示された。

蓄積されたナレッジとあったが、神埜氏によるとこれは、「例えばお客様からオイルが漏れているという話が出たときに、壊れている漏れなのか、それとも正常の範囲の滲みなのかの判断は、当時のワークショップマニュアルを見ても書いていない。それこそ当時、現場でお客様のクルマを修理してきた人たちが体で覚えた知識だ。こういったことを指すもので、現在それを若いメカニックに伝承していくことにも取り組んでいる」という。

◆レストアでオーダーメイドも

ヤナセクラシックカーではレストアにも取り組んでいる。同社としては、「エンジン、ミッションのオーバーホールから始まり、ボディも塗装を剥がしてきっちり塗り直すくらいのことをやる」ことをレストアと指し、その第1号車が今回展示された『190SL』だ。

2年ほどかけてレストアされたとのことで、ボディカラーもベージュだったものから、メルセデスによくあるシルバーと内装赤に憧れているというユーザーの要望から、「当時のシルバーの調色のデータがあったのでそれに合わせてパネルに色を塗り、そこから何パターンか用意して決定。内装の赤も『300SL“ガルウィング”』の内装の赤がイメージだったので、ドイツの革を作っている会社と相談し、濃淡やシボの強弱も含めたサンプルを取り寄せ塗装したパネルと比較して、お客様にチョイスしてもらった」とこだわりを語った。

◆今年はビートルベースのフォーミュラ

また同社では毎回このイベントにヤナセの歴史に関わるクルマを紹介している。今年は『フォーミュラVEE/EMPIクルセイダー』が展示された。これはヤナセが輸入した個体そのもので、フォルクスワーゲンのインポーターだった時代に、1967年に開催された第9回東京オートショーに出展したクルマそのものだ。

「当時のフォルクスワーゲン『TYPE1(ビートル)』から1200ccエンジンとミッションをミッドシップに搭載。ブレーキやステアリング、フロントサスペンションもそのまま移植することで、安いお金でフォーミュラレースが出来ることからアメリカで大流行。その後ヨーロッパにも飛び火した」。しかし日本ではユーザーの関心を引き付けることが出来なかった。「このクルマはヤナセが輸入した後愛好家の手に渡り、最終的にはある企業が大事に保管しており、今回借りして展示している」と説明した。

メルセデスベンツ 560SL(R107)《写真撮影  内田俊一》 メルセデスベンツ 500SL(R129)《写真撮影  内田俊一》 メルセデスベンツ 280SL(W113)《写真撮影  内田俊一》 メルセデスベンツ 190SL《写真撮影  内田俊一》 メルセデスベンツ 190SL《写真撮影  内田俊一》 メルセデスベンツ 190SL《写真撮影  内田千鶴子》 メルセデスベンツ 190SL《写真撮影  内田俊一》 フォーミュラVEE/EMPIクルセイダー《写真撮影  内田千鶴子》 フォーミュラVEE/EMPIクルセイダー《写真撮影  内田千鶴子》 フォーミュラVEE/EMPIクルセイダー《写真撮影  内田俊一》 協力企業のスタークラフトと3Dプリンターを使い部品の復刻製作も行う予定だ《写真撮影  内田俊一》