ヤマハ 発動機の電動アシスト自転車『PAS Babby un SP』(右)と『PAS CITY-V』(左)に試乗《写真撮影 宮崎壮人》

娘の入園とともにわが家にやってきた電動アシスト自転車は、3年経った今では毎日に欠かせない存在となっている。送り迎えはもちろん、ちょっとした買い物や少し遠くの公園へ行くときにも、娘を乗せて大活躍。抱っこして後席に乗せていたのが、今では自分でヒョイと乗り込むようになり、そんなところでも成長を感じている。

ただ、3年前に初めて乗った時には、スイスイとあまりの軽快さに衝撃を受けたものだが、今や娘の体重は22kgオーバー。初期と比べると、出足の重さを感じるようになり、ペダルを漕ぐ抵抗も大きくなったように感じる。ちょっと長い時間乗ると、太ももがパンパンになることもあり、買い物帰りに前カゴが満杯の状態なら、なおさらのこと。

もうちょっとアシストがパワフルならいいのになぁ、最新モデルだとそのあたりも進化しているのだろうか? などと、ちょうどそんなことを考えていたタイミングで、わが家が愛用しているヤマハの子乗せ電動アシスト自転車の2021年モデル、『PAS Babby un SP』に試乗する機会をいただいた。

◆リヤチャイルドシートが進化!子乗せモデル『PAS Babby un SP』


「PAS unシリーズ」は、軽量・コンパクトなボディに、PASシリーズ最上位のアシスト力を持ち、登坂時など状況に合わせて全自動でアシスト力を制御する「スマートパワーアシスト」を搭載し、子育て世代に絶大な人気を誇る子乗せ電動アシスト自転車だ。2人同乗基準適合で、フロントチャイルドシートがついた『PAS Kiss mini un』『PAS Kiss mini un SP』には、この2021年モデルより新開発の繭型フロントチャイルドシート「コクーンルームプラス」が新たに搭載されているのが大きなトピックだ。

そして今回試乗した「PAS Babby un SP」は、リヤチャイルドシートが標準装備となり、子供の頭部を270度包み込む安心感のあるリヤチャイルドシートや、大容量のチューブパイプバスケットなど、より安心で利便性の高い機能を備えている。


さっそくわが家愛用の旧モデルと並べてみると、まず目を惹くのはやはり、リヤチャイルドシートが頑丈ですっぽりと身体を包み込むような頼もしいサポート形状になっていること。わが家のモデルは、ヘッドレストが頭を包む湾曲が浅く、上半身部分のサイドの張り出しも小さいが、最新モデルはガッチリとカバーされている。幸いこれまでに転倒したことはないが、ヒヤリとしたことはあり、万が一転倒した際には最新モデルの方なら、子供の頭や身体を守ってくれそうだと感じる。

さらによく見ると、正直なところ現在はちょっと装着に手間取りがちなリヤチャイルドシートのベルトが、まったく違うものに変わっている。長さ調節のベロが超薄型になるなど全体的にスッキリとしていて、バックルもコンパクトになり、扱いやすい。

そして前カゴはこれまで、底部分まですべてサイドに穴が空いていて、小さな物を入れると落ちてしまうことがあった。それが最新モデルは底から10cmくらいがぐるりとカバーされていて、これなら小物も飛び出さないだろうなと感じる。



◆3年前のモデルとは航続距離もアシスト感も段違い


ざっと外観を見ただけで気づいた変化はこのくらいだが、さて乗ってみるとどうだろう。

キーのアンロックは同じ操作で、カチッという操作感が気持ちいい。アシストのオン/オフスイッチを兼ねているデジタル表示をオンにすると、現在のバッテリー充電量が表示され、スイッチで切り替えるとだいたいの走行可能距離が表示される。3つの走行モードが選べるところも同じだが、充電100%の状態で走行可能距離の表示を見てビックリ。わが家のモデルでは「オートエコモードプラス」だと54kmなのだが、最新モデルではなんと74kmと出ていて、20kmも長く走れるようになっている。

ノーマルの「スマートパワーモード」では、わが家モデルが46km、最新モデルが57km。「強モード」ではわが家モデルが37kmに対し、最新モデルは51km。アシストを最強にしても、わが家モデルのエコモードとそれほど変わらない走行可能距離を実現していることになる。


そして座り慣れたサドルにまたがり、最初はノーマルで走りだす。と、最初の1〜2漕ぎであまりの軽さ、スムーズさ、グイグイと力強いアシストに衝撃を受けてしまった。ペダルの重さや抵抗がほぼないような感覚で、足が勝手に前へ前へと動いているように爽快。わが家モデルで強モードにした時の感覚が、最新モデルではノーマルで体感できるようになったイメージだ。

試しに強モードにしてみると、街中ではちょっと速すぎると感じるくらい、ヒュンヒュンと加速して風をきって走る。とくに、停止状態から走り出す時の瞬時の加速や、少し速度がのってきてからの再加速が力強く、上り坂をものともせずに軽々と走ってくれる。

再びスイッチでエコモードにすると、わが家モデルのエコモードで感じるようなペダルに重石がついたような感覚はなく、最新モデルのノーマルよりやや加速が穏やかになるかな、くらいの落ち着いた走りになる。わが家モデルでは、娘を乗せている時はもちろん、普段もあまりエコモードにする気にはなれないのだが、これなら1人で買い物に行く時などには、「ずっとエコモードでいいなぁ」と思えたのだった。

◆さすがヤマハ!な安定感と荷重移動のしやすさ


3年間愛用してきて、いちばん気に入っているのが、走っている時の重心が低めなのか、カーブの多い道でも外側に膨らむことなく、思った通りの弧を描くことができる、安定感と荷重移動のしやすさ。そこはバイクで培ったノウハウが生きているのではと思うほど、さすがヤマハだと感心するポイントで、最新モデルでも健在だ。停車中はハンドルがグラグラしないのに、走り出すとすぐに自由になって動かしやすくなり、ブレーキも握りやすい。急な下り坂でブレーキをかけてもふらついたり、前のめりになることが少ないので、安心して乗れるところも変わらない魅力だった。

1つ残念な点を挙げるとすれば、わが家モデルはサドルがやや小さめで、漕いでいるうちにお尻が前に滑ってきてしまい、何度もお尻を浮かせて座り直す必要がある。最新モデルでも見た目は同じサドルがついており、やはりちょっと前に滑ってきてしまったところは、ぜひ改善してほしいポイントだ。

とはいえ、パワフルなアシストによる軽快な走りだけでなく、バッテリーの持ちもよくなり、リヤチャイルドシートやバスケットの使い勝手と安全性もアップしていた最新モデルの「PAS Babby un SP」。最後に、スタンドをかけて停車しようとして、サドルの後ろにあるグリップを握ったら、そこも握りやすさがグッとアップしていて感激した。まだまだわが家モデルも壊れそうにはないのだが、買い換えたくなってしまうほどだった。

◆ビンテージ風のセンス光る、通勤に最適な『PAS CITY-V』


続いて、スタイリッシュでスポーティな24インチの電動アシスト自転車『PAS CITY-V』にも試乗した。以前から健康のために自転車通勤をしている人は多かったが、コロナ禍で公共交通機関の利用を減らすために、自転車通勤に切り替える人も増えているという。そんなシーンにぴったりな、オシャレなデザインと高い走行性能を両立したモデルとなっている。

ビンテージっぽい深みのあるバーガンディのカラーに、ホイールカバーなどのシルバーがアクセントになり、革巻き風のグリップやサドルなどに、絶妙なさじ加減でレトロなエッセンスが入ったデザインは、男女問わず好まれそうなセンスの良さ。女性がスカートを履いていても乗り降りしやすいV型フレームで、フラットバーを採用したハンドルでも、一般的なスポーティモデルのように前傾姿勢になりすぎないのも嬉しいところだ。


PAS CTY-Vには、スピードセンサーで車速を、トルクセンサーでペダルを踏む力を、クランク回転センサーでクランクを回す速さを感知し、状況に応じたアシストをする、ヤマハ独自の「スマートパワーアシスト」が新たに搭載されたほか、もう1つスポーティな走りを叶える技術がある。

それが、アシスト制御機構の「S.P.E.C.5」。内装5段変速と最適なアシスト制御によって、よりスムーズな加速を実現するというものだ。変速操作はピアノ式のラピットファイヤーシフトで、ショートストロークの軽快な操作感にテンションアップ。高回転領域での出力が増したことによって、低速〜中速ギアを使った登坂がパワフルになり、空回り感のないリニアなフィーリングが持ち味となっている。

◆Babby un SPがミニバン的なら、CTY-Vはスポーツセダンの感覚


サドルにまたがってみると、背筋が自然とシャキッと伸びるような姿勢がすがすがしい。手のひらに上質な感触をもたらすハンドルを握り、いざ漕ぎ出してみる。足裏にカッチリとした上質な手応えがありながら、スイスイと、でもただ軽いだけではない心地よいペダルフィールが新鮮だ。脚全体で漕ぐような大味な感覚ではなく、足首から下だけが軽やかにペダルを回しているような余裕もある。

先ほどのPAS Babby un SPがミニバン的だとすると、PAS CTY-Vはスポーツセダンの乗り味といった感覚。交差点を曲がる際の身のこなしも俊敏なのに、全体的な乗り味はトンガリすぎず、上質感がしっかりある。大人のスポーティ感覚だ。


しかもそれが、上り坂など電動アシストなしでは苦しくなるシーンでも、変わらず軽快なところがさすがスマートパワーアシスト。一充電での走行可能距離は、「オートエコモードプラス」で78km、「スマートパワーモード」で55km、「強モード」で48kmと充分な距離。速度がのってきてからの加速フィールがとくに爽快なので、長距離を走る方が楽しいのではないかという気にさえなってくる。

坂道もガシガシ登れるし、別売りのアクセサリーでオシャレなフロントバスケットやリヤキャリヤもあり、トータルコーディネートしながら実用性もアップできる。これなら、通勤や通学で普通の自転車ではちょっと敬遠するような距離でも、気持ちよく走っていけそうだ。

◆電動アシスト自転車は最新モデルをまずチェックすべき


今回の最新モデルの試乗で強く感じたのは、電動アシスト自転車は今、ラクで便利というレベルを大きく超えて、気持ちいい、楽しいという魅力もしっかり手にしているのだということ。新生活のスタートに向けて電動アシスト自転車の購入を検討しているなら、どれも同じと適当に選ぶのではなく、最新モデルをまずチェックすべき。これまでのユーザーの声に真摯に応え、技術の進化やノウハウの蓄積がフィードバックされていて、より安心便利な使いやすさ、史上最高の快適性と気持ちのいい走りが、必ずそこにあるはずだ。

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト
映画声優、自動車雑誌『ティーポ(Tipo)』編集者を経て、カーライフ・ジャーナリストとして独立。 現在は雑誌、ウェブサイト、ラジオ、トークショーなどに出演・寄稿する他、セーフティ&エコドライブのインストラクターも務める。04年・05年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

『PAS Babby un SP』とまるも亜希子さん《写真撮影 宮崎壮人》 『PAS CITY-V』とまるも亜希子さん《写真撮影 宮崎壮人》 ヤマハ PAS CITY-V《写真撮影 宮崎壮人》 ヤマハ PAS CITY-V《写真撮影 宮崎壮人》 ヤマハ PAS Babby un SP《写真撮影 宮崎壮人》 ヤマハ PAS Babby un SP《写真撮影 宮崎壮人》 まるも亜希子さん私物の旧モデル(奥)と最新のPAS Babby un SP(手前)《写真撮影 宮崎壮人》 旧モデル(奥)と最新のPAS Babby un SP(手前)。チャイルドシートも進化している《写真撮影 宮崎壮人》 ヤマハ PAS Babby un SP《写真撮影 宮崎壮人》 ヤマハ PAS Babby un SP《写真撮影 宮崎壮人》 ヤマハ PAS Babby un SP《写真撮影 宮崎壮人》 ヤマハ PAS Babby un SP《写真撮影 宮崎壮人》 ヤマハ PAS Babby un SP《写真撮影 宮崎壮人》 ヤマハ PAS Babby un SP《写真撮影 宮崎壮人》 ヤマハ PAS Babby un SP《写真撮影 宮崎壮人》 ヤマハ PAS Babby un SPのバッテリー《写真撮影 宮崎壮人》 ヤマハ PAS Babby un SPの大型液晶画面。アシストモード切り替えと、航続距離の表示《写真撮影 宮崎壮人》 ヤマハ PAS Babby un SP《写真撮影 宮崎壮人》 ヤマハ PAS Babby un SP《写真撮影 宮崎壮人》 ヤマハ PAS Babby un SP《写真撮影 宮崎壮人》 ヤマハ PAS Babby un SP《写真撮影 宮崎壮人》 ヤマハ PAS Babby un SP《写真撮影 宮崎壮人》 ヤマハ PAS Babby un SP《写真撮影 宮崎壮人》 ヤマハ PAS Babby un SP《写真撮影 宮崎壮人》 ヤマハ PAS Babby un SP《写真撮影 宮崎壮人》 ヤマハ PAS Babby un SP《写真撮影 宮崎壮人》 ヤマハ PAS CITY-V《写真撮影 宮崎壮人》 ヤマハ PAS CITY-V《写真撮影 宮崎壮人》 ヤマハ PAS CITY-V《写真撮影 宮崎壮人》 ヤマハ PAS CITY-V《写真撮影 宮崎壮人》 ヤマハ PAS CITY-V《写真撮影 宮崎壮人》 ヤマハ PAS CITY-V《写真撮影 宮崎壮人》 ヤマハ PAS CITY-V《写真撮影 宮崎壮人》 ヤマハ PAS CITY-V《写真撮影 宮崎壮人》 ヤマハ PAS CITY-V《写真撮影 宮崎壮人》 ヤマハ PAS CITY-V《写真撮影 宮崎壮人》 ヤマハ PAS CITY-V《写真撮影 宮崎壮人》 ヤマハ PAS CITY-V《写真撮影 宮崎壮人》 ヤマハ PAS CITY-Vの大型液晶画面。アシストモードの切り替えと残電池量の表示《写真撮影 宮崎壮人》