ルノー キャプチャー 新型《写真撮影 小林岳夫》

◆国内では新進気鋭、欧州ではベストセラーのルノー キャプチャー


日本では『カングー』とR.S.(ルノー・スポール)のイメージが強いルノーだが、それら趣味性の高いクルマ(カングーは欧州では普通の商用車だが…)を手がけながらも、真の姿はコンパクトカーが主体の大衆車メーカーだ。

日本におけるブランド別輸入車販売台数の年間ランキングでは、このところ10位あたりが定位置となっている。本来の実力からするとまだまだとはいえ、少し前まではずっと下位に沈んでいたことを思うと、ここ数年で大きな進歩をはたしたといえる。
2020年の欧州におけるモデル別販売台数ランキングでは、2位にルーテシア(現地名「クリオ」)、7位にキャプチャーという2台が上位に名を連ねるほどだ。

(※ご参考 1位VW『ゴルフ』、3位プジョー『208』、4位オペル『コルサ』、5位シュコダ 『オクタヴィア』、6位トヨタ『ヤリス』、8位フォード『フォーカス』、9位VW『ポロ』、10位ダチア『サンデロ』)

しかも『キャプチャー』は初代もそうだったように、SUV全体のベストセラーとなっている。そのキャプチャーのニューモデルがいよいよ日本に上陸した。

◆ライバルとエクステリア、インテリア、荷室容量を比較


この7年で世の中が変わったこととしては、SUVがすっかり当たり前になり、かつてはCセグに手の届かない人が買うものという感もあったBセグが、ダウンサイザーに積極的に選ばれるようになったことなどが挙げられる。それを受けて、多くのメーカーがこれまでにも増してBセグのSUVに力を入れ始めているが、中でもそれが顕著なのがフランス勢だ。

ここでは2代目キャプチャーをメインに、最大のライバルであるプジョー『2008』をはじめ、日本勢のホンダ『ヴェゼル』やマツダ『CX-30』などと比べてみることにしたい。

ボディサイズは、Bセグ全体が拡大傾向にあり、全長はキャプチャーが従来比で約10cm伸びて4230mmに、2008も同145mm増の4305mmとなった。初代ヴェゼルやCX-30はさらに大きい。2640mmというホイールベースは、2008よりも30mm長く、クラス最長となる。全高は、SUVらしさを追求すべく1600mm程度としているものと、機械式立体駐車場に配慮してか、1550mm以下にとどめているものに分かれ、今回ではキャプチャーと初代ヴェゼルが前者、2008とCX-30が後者に該当する。

ダウンサイザーへの配慮からか、このところおしなべてインテリア質感の向上が著しい。ヴェゼルは初代も評価が高かったところ、新型はさらに引き上げられているようで、CX-30もなかなかのもの。フランス勢の2台もソフトパッドをふんだんに用いたりアンビエントライトを採用したりしている。

デザイン面でも、キャプチャーはフローティングセンターコンソールを、2008は独自のi-コックピットなど、個性的なアプローチを見せる。シートの生地や着座感もフランス勢と日本勢では少なからず違うあたりもお国柄が感じられる。

キャプチャーは、このクラスではまだ珍しい、後席乗員向けのエアコン吹き出し口が設けられたり、各部のクリアランスの拡大が図られたりと、より後席乗員の居住性を高める配慮がなされている点も特徴。一方で、2008と新型ヴェゼルには大面積のパノラマガラスルーフが設定されている。

ラゲッジ容量はキャプチャーが536リットルと2008の434リットルを大きくしのぎクラストップに。しかもリアシートを前後スライドが可能でアレンジの自由度が高い点も特筆できる。一方で、ヴェゼルはホンダ独自のセンタータンクレイアウトの強みが光る。

◆全面的な進化と乗り出し300万を切る魅力的な価格


パワートレインもそれぞれ。各メーカーの考え方の違いが興味深い。キャプチャーは154ps、270Nmという、このクラスとしてはかなり強力な1.3リットル直4ターボと7速DCTの組み合わせ。このクラスの量産モデルとしてはかなりエンジンが力強く、スポーツモードにするとさらにアクセルレスポンスとトルクの盛り上がり感が向上して楽しく走れる。DCTもあえてつながりをおだやかにして扱いやすくされている。

このクラスのエンジンは3気筒も増えてきており、2008は130ps、230Nmの1.2リットル直3ターボと8速トルコンATの組み合わせとなるが、やや非力なエンジンをトルコンが上手く補っている印象。3気筒エンジンの音や振動も概ねよく抑えられている。

日本勢はパワートレインの設定が多彩で、新型ヴェゼルはe:HEVと呼ぶ本格的ハイブリッドが主体となる。CX-30は、2.0リットル直4のガソリンとスカイアクティブX、1.8リットル直4ディーゼルが選べるのが特徴だ。

足まわりの味付けも、各モデルの特色が出ている。キャプチャーは日産と三菱とのアライアンスによるグローバルプラットフォームを採用。クイックなステアリングレシオにより俊敏なハンドリングを実現しており、それに合わせて、足まわりもロールを抑えたダンピングを効かせた味付け。このクラスとしては動力性能と併せて、スポーティさの際立つ乗り味に仕上がっている。

対する2008は、現代的にひきしまった中にもしなやかさを感じさせるあたりは、「猫足」と評されたプジョーならでは。こちらもキャプチャーほどではないがハンドリングは俊敏かつ軽快で、その中に適度な寛容さがあり、リラックスして乗れる。フランス勢に比べると日本勢は乗り心地がやや硬め。CX-30はGベクタリングコントロールという独自のデバイスを用いている点が評価できる。

先進運転支援装備についても、いまやこのクラスでもかなり充実してきており、従来型とは見違えるほどに進化して、車線維持機能も全車に設定されているほどで、上級機種に対しても遜色ない水準に達していることは大いに歓迎したい。

これほどあらゆる点で大きな進化をはたしながらも、新しいキャプチャーも2008も価格は299万円〜とかなりがんばっている点も見逃せない。手ごろな価格とサイズのオシャレなSUVというトレンディなカテゴリーに、こうした魅力的な選択肢が増えるのはありがたいかぎり。中でも曲面を多用した官能的なフレンチデザインをまとい、クラスを超えた走行性能や実用性を身につけた万能選手のキャプチャーは、とりわけ注目すべき存在といえそうだ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★

岡本幸一郎|モータージャーナリスト
1968年、富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報映像の制作や自動車専門誌の編集に携わったのち、フリーランスのモータージャーナリストとして活動。幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもスポーツカーと高級セダンを中心に25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに多方面に鋭意執筆中。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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