日産 リーフe+(参考画像)《撮影 井元康一郎》

富士経済は、EV・PHV向け充電インフラについて、中国や北米など主要16か国の市場を調査。その結果を「EV/PHEV充電インフラの国別整備実態と普及計画 2020」にまとめた。

調査では、主要16か国(欧州6か国、米州2か国、アジア4か国、アセアン3か国、オーストラリア)における急速充電器、ワイヤレス給電システム、普通充電器の市場について現状を把握し、長期予測をした。また、用途別として、公共用、職場用、商用車用の動向、充電ステーションの設置状況も明らかにした。

EV・PHV向け充電インフラは、各国がEVやPHVの普及を積極的に進めており、それに伴い需要が増加している。普通充電器が中心だが、急速充電器の需要も増加しており、中国を中心に市場は拡大していくとみられる。ワイヤレス給電システムは、現状では数千台にとどまるものの、中国や米国を中心に普及が進んでいる。

調査結果によると、主要16か国におけるEV・PHV向け充電インフラの2019年ストック市場は、急速充電器(コネクタ数)が2018年比47.9%増の24万9347個、普通充電器(コネクタ数)が同28.3%増の47万3875個。ワイヤレス給電システム(受電ユニット搭載車両数)は同2.3倍の3530台にとどまっているが、2025年頃から市場は急拡大し、2030年頃には普通充電器の設置台数を上回ると予想される。2035年の充電インフラストック市場は、急速充電器が同4.3倍の72万3600個、普通充電器が同5.6倍の208万4700個。ワイヤレス給電システムは同3209倍の500万6500台に達すると予想する。

国別にみると、中国では国策によりEVやPHVの販売が急増しており、各充電インフラの普及が進んでいる。次いで普及が進んでいるのが米国だが、トランプ政権下で環境保護庁(EPA)と運輸省道路交通安全局(NHTSA)から企業平均燃費規制の基準値を緩和する新たな規制案が発表され、一部で内燃車への回帰がみられるなど、EV・PHVの普及が阻害される可能性もある。アセアンなどの地域でも国策としてEVやPHVの普及が進められている。

◆急速充電器

急速充電器は、中国の標準であるGB/T、日本発祥で世界に先行普及したCHAdeMO、欧州や米国を中心とするCCS(コンボ1/2)、テスラが展開するスーパーチャージャーなどの方式がある。

日本ではCHAdeMOが主力であり、スーパーチャージャーもみられるものの、2019年時点で100個の設置にとどまる。CHAdeMOはこれまで、出力50kWもしくはそれ以下の出力機だったが、新電元工業が90kW機を投入したことで設置が進んでおり、今後も伸びるとみられる。用途別では公共用が中心であり、職場用や商用車用の普及は時間がかかるとみられる。中国ではGB/Tが主力であり、スーパーチャージャーの設置もみられる。

中国は普及が進んでおり、市場規模が大きい。主力となっている60kW機は、2020年に設置数が14万4000個になると予測され、今後も市場をけん引するとみられる。用途別では公共用が中心であるものの、他国と比べて職場用や商用車用の普及が進んでいる。

米国では、CHAdeMOやCCS(コンボ1)、GB/T、スーパーチャージャーの設置がみられる。スーパーチャージャーが主力であり、次いでCCSの設置が多い。フォルクスワーゲン(VW)が設立したElectrify America社が充電ステーションの新規開設を急速な勢いで推進しており、それに伴い急速充電器の需要も増加している。

ドイツでは、CHAdeMOやCCS(コンボ2)、GB/T、スーパーチャージャーの設置がみられる。CCSが主力であり、特に101kW〜150kW機が市場をけん引していくとみられる。また、BMW、ダイムラー、VWグループを中心に展開するIONITYによって、350kW機を中心とした設置数の拡充が続いている。

◆ワイヤレス給電システム

ワイヤレス給電システムは現状、大半が停車中給電システムだが、米国や中国では商用車用の走行中給電システムの普及が始まっている。2035年には停車中が87万台、走行中が414万台になるとみられる。

日本では、ダイヘンが投入したEV・PHV向けシステムなどがあり、2018年は僅少にとどまっている。停車中給電システムは2019年に200台が見込まれ、2025年以降、本格的に伸びるとみられる。また、走行中給電システムは2025年頃に市場が立ち上がり、2030年以降、急伸するとみられる。

中国では、世界に先駆けてタクシーやバス向けの停車中および走行中給電システムを実用化。2019年は1500台が見込まれ、今後も両システムが伸びるとみられる。

米国では、後付タイプのワイヤレス給電システムが実用化しており、スタートアップ企業の製品が個人用および職場用で普及し始めている。また、EVバスを採用した地方自治体や路線バス会社では、これらの車両向けで導入が増加。今後も停車中給電システム、走行中給電システムともに伸長していくとみられる。
ドイツでは、BMWやDaimlerのPHVやEVバス向けワイヤレス給電システムの需要が増加している。停車中給電システムは2019年に700台が見込まれる。走行中給電システムは2025年頃に市場が立ち上がり、2030年以降、急伸するとみられる。

◆普通充電器

普通充電器は、米国や日本で普及するタイプ1、欧州で普及するタイプ2、中国の標準であるGBなどの方式があるが、日本ではタイプ1が主流。搭載バッテリー10kWh前後のPHVの普及が進んでいることなどから、大部分が出力1kW機(100V電源使用時)と3kW機(200V電源使用時)となっており、今後もこの2タイプを中心に伸びるとみられる。

中国では、国家規格であるGBが主流であり、7kW機が中心。公共用を中心に需要が増加するとみられる。

米国ではタイプ1が主流。米国では大容量バッテリー搭載のEVが主流であるため、7kW以上の機種が伸長し、出力の小さい3kW機は2020年以降縮小するとみられる。

ドイツではタイプ2が主流。新規投入のEVやPHVの大出力対応が進んでいることから、22kW機が中心となっている。また、11kW機の需要も増加しており、2030年頃に22kW機の設置数を上回るとみられる。

テスラのスーパーチャージャー《photo by Tesla》