ホンダ フィット 新型(NESS)撮影 中村孝仁

e:HEVのモデルからガソリンエンジンの『フィット』に間をおかずに乗り換えてみた。その違いは顕著で、性格も別物だと言っても過言ではなかった。

◆ガソリン車は110kgものアドバンテージ


ガソリンエンジンはe:HEVの1496ccよりさらに小さな1317ccの直4ユニットを搭載する。ただし、最高出力についてはどちらも98psで同じ。もっともe:HEVの方はこれに80ps、253Nmのモーターが追加されるから、本来なら圧倒的にパフォーマンスで上回っていなければならない。因みにエンジン単体の最大トルクは e:HEVが127Nmに対してガソリンは118Nmだから、この点においても性能的優位性は明らかにe:HEVにある。

一方で車重はe:HEV LUXEが1200kg(FF)。ガソリンNESSは1090kgだから、その差110kg。これは無視できない。で、結果どういう印象を持ったかと言うと、えっ?ガソリンの方が軽快じゃん…というものだった。

当たり前のことではあるけれど、初めからガソリンエンジンの軽快なハミングが聞こえる。ただし、アイドリング時の振動や騒音は徹底的に抑え込まれているのか、アイドリングストップしているのか、エンジンがかかっているのかは小さなメーターナセルの上側を走るタコメーターを見ないと分からないほどであった。

◆乗っていて何となくウキウキするのはシートのせい?


「NESS(ネス)」というグレードだけはメーカーオプションとはなるがアクセント2トーンという、グリーンハウス回りとドア下のシル部分にライムグリーンのアクセントを入れ他カラーリングが選べる。こいつが実は中々効果的でまず外観ではクルマを軽快に見せているし、ライバル車との違いをかなり明確にしてくれる。積極的にNESSというグレードを選びたくなる動機付けにもなる。

因みに今回のフィットには、下からBASIC、HOME、NESS、CROSSTAR、LUXEの5グレードが存在し、すべてのモデルにFWD/4WD、ガソリン/e:HEVの設定がある。まあ、当てはまる想定ユーザーはBASICがいわゆる価格に拘るユーザー。HOMEは文字通りファミリーユーザー、そしてCROSSTARは車高が高くメーカーオプションながらルーフレールの設定もあるなど、SUV市場のユーザー向け。そしてLUXEは高価格でも高級車然としたBセグメントのクルマが欲しいユーザー向けと、かなり明確にターゲット層が別れている。

そうした中でNESSはと言うと、少なくともLUXEと比較した場合その走りにはかなり軽快感が伴うし、見た目にも若々しさが漲り、多少の騒音の侵入を気にしなければかなり颯爽と走れるということで、若者層をターゲットにしたのか?とも思える。もっともその名前、NESSは車名のフィットとつなげ合わせるとフィットネスとなる(どうもシャレで付けたらしい)から、若者のみならずこうしたアスリート指向のユーザー層も狙ったといえよう。

シートは撥水ファブリックシートとなり、シートサイドに外観同様ライムグリーンのアクセントを入れている。本革のLUXEに比べると若干シートのテンションが高い。だから、車重も手伝ってか少し上下動が大きく、その吸収力も少ない。乗っていて何となくウキウキするのはそのせいか?別に気になるレベルじゃないし、音の侵入などと相まって、こちらの方が活発に走っている印象を与えるのだ。



◆幅広い層のユーザーから支持されて当然

絶対的なパワーは大したことはないが、モーターも併用しているe:HEVと大きな差があるかと言えば、全然気になるような差はないし、そもそもガソリンとe:HEVの価格差は税抜きで34万9800円もある。 この差はランニングコストだけで回収しようとすると、相当な年月乗らなくてはならず、ガソリンで十分と思うユーザーはかなりいるのではないかと思う。

因みに燃費はガソリンが14.1km/リットルだったから、21km/リットル強だったe:HEVとはかなり大きな差になったが、それでもまあ走り方にもよるが、一般的には車検2回分では取り戻せない。


110kgという重量差はさすがに運動性能には影響を与えているようで、同じ185/55R60のヨコハマ・ブルーアース-Aを履いているが全体的にNESSの軽快感がLUXEのそれを上回る。まあ、他のグレードには乗っていないので何とも言えないが、少なくともこの二つのグレードでは走りの軽快感がだいぶ違う。余談だがガソリンにはフロントインナーフェンダーに樹脂インナーが使われていて(e:HEVは不織布)、音の侵入という点では不利だが走行している高揚感はこちらの方が高い。

それにしてもここまでグレードによる走りの印象を顕著に変えた今回のフィット。かなり幅広い層のユーザーから支持されて当然という気がした。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファーデプト代表取締役も務める

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