ホンダ フィット 新型(ネス・ハイブリッド)《撮影 中野英幸》

新型『フィット』はフランス車っぽいというコメントを何度か目にしている。フランス車を10台以上所有し、取材では新旧合わせて50以上の車種に乗ってきた筆者も、似たような気持ちを抱いている。

◆給油口のこだわりにも関心、ドイツ車とは正反対の世界観

フランス車はスペックで表すのが難しいので、個人の主観に基づくところも大きいし、猫足という言葉があるように猫っぽいクルマだと思っているので、愛犬をイメージしたというデザインコンセプトとは方向性が違う。

でも過度な演出を入れず、プロポーションの良さをしっかり考えたうえで、シンプルかつスマートな姿としたスタイリングは彼の国のクルマを思わせる。とりわけ多くのクルマが円形や角形に切り欠いただけとしている給油口のリッドなど、細かい部分までこだわって全体としてのまとまりを追求したところは素直に感心する。


大きな窓がもたらす開放感とソフトな仕立てのインテリアは、ドイツ車とは正反対の世界観で、乗り込んだだけでホッとする。前席下に燃料タンクを置いた歴代フィットは、前席の座り心地は期待できなかったが、新型は構造を変更することでクッションを厚くしており、腰を下ろすとたしかに従来より沈み込みを感じた。



◆かつてのホンダのコンパクトカーとは一線を画した乗り心地

それ以上に驚いたのはしっとりした乗り心地だ。『N-WGN』も似たような感触だったが、かつてのホンダのコンパクトカーとは一線を画している。高速道路でのゆったりした揺れは、昔のシトロエンを思わせるほどだ。しっとり動く足回りはコーナーでの信頼できる接地感も実現。加えてガソリン車なら約100kg軽いボディを生かした軽快なハンドリングも味わえる。

静かで力に余裕があるのは1.5リットル+2モーターのハイブリッド仕様だけれど、1.3リットルのガソリン仕様でも力不足はないし、このクラスでは希少になりつつある4気筒を適度に回して必要な加速を手に入れる作業もまた、かつてのフレンチベーシックを彷彿とさせる。

というわけで、フランス車の良さを知る人にも満足できる日本車であることは間違いない。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

森口将之|モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト
1962年東京都生まれ。自動車専門誌の編集部を経て1993年に独立。雑誌、インターネット、ラジオなどで活動。ヨーロッパ車、なかでもフランス車を得 意とし、カテゴリーではコンパクトカーや商用車など生活に根づいた車種を好む。趣味の乗り物である旧車の解説や試乗も多く担当する。また自動車以外の交通 事情やまちづくりなども精力的に取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員。

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