トヨタ ヤリス(1.5L ガソリン)《撮影 小林岳夫》

◆後方視界と取りまわし性をチェックすべし

クルマがフルモデルチェンジを行うと、通常は居住性や走行性能が高まる。新型は旧型から進化して当然だが、『ヤリス』の後席は、前身の『ヴィッツ』に比べて窮屈だ。身長170cmの大人4名が乗車した時、ヴィッツでは後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ2つ分だが、ヤリスでは1つ少々に減る。

床と座面の間隔も足りず、ヤリスでは腰が落ち込んで膝が持ち上がる。開発者は「ヤリスの後席は、ヴィッツに比べて前後席に座る乗員同士の間隔が37mm減り、床と座面の間隔も32mm下まわる」という。


またヤリスはヴィッツ以上に、サイドウインドウの下端を後ろに向けて大きく持ち上げた。ヤリスの後席はサイドウインドウが狭いために閉塞感が伴い、ドライバーにとっては後方視界も悪い。視界は安全性を左右するから、ヤリスのボディ形状には複数の欠点がある。

従って4名で乗車するユーザーがヤリスを購入する時は、後席の快適性を確認したい。車庫入れや縦列駐車を試して、後方視界と取りまわし性もチェックする。



◆ドライバーと助手席の満足感は高まった

その代わりにヤリスでは、ドライバーと助手席の満足感は高まった。インパネなどの内装が上質になり、前席は腰の支え方も良好だ。

走りについては、プラットフォームを刷新してボディ剛性を高めた効果もあり、ヴィッツに比べると走行安定性と乗り心地が改善された。後輪の接地性を優先させて安定性を十分に確保した上で、操舵角に対して比較的正確に曲がるから峠道なども走りやすい。


乗り心地はタイヤサイズで異なる。14インチタイヤ(175/70R14)は、転がり抵抗を抑えた燃費重視で、指定空気圧も転がり抵抗を抑える目的で前輪が250kPa、後輪も240kPaと高い。硬さが目立ち、あまり推奨できる設定ではない。

バランスが良いのは15インチタイヤ(185/60R15)で、指定空気圧も230・220kPaに下がり、低速域では硬めながら粗さは抑えた。16インチ(185/55R16)は扁平率が55%に下がってタイヤの硬さを感じるが、指定空気圧は220・210kPaと低く、さほど不快ではない。

◆ガソリン車のオススメ仕様は


なお16インチタイヤは最上級グレードの「Z」のみにオプション設定され、車両重量が60kgほど重いハイブリッドの方が相性が良い。

ヤリスのノーマルエンジン車を買うなら、動力性能に余裕のある1.5リットルを搭載した中級の「G」(175万6000円)を選び、15インチタイヤ&アルミホイール(5万9400円)、3灯式フルLEDヘッドランプ(8万2500円)、ブラインドスポットモニター(10万100円)などを装着する。合計すれば約200万円だ。

今のコンパクトカーは、安全装備を中心に機能が向上して好ましいが、価格も相応に高くなった。



■5つ星評価
パッケージング:★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★

渡辺陽一郎|カーライフ・ジャーナリスト
1961年に生まれ、1985年に自動車雑誌を扱う出版社に入社。編集者として購入ガイド誌、4WD誌、キャンピングカー誌などを手掛け、10年ほど編集長を務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様に怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けている。

トヨタ ヤリス(1.5L ガソリン)《撮影 小林岳夫》 トヨタ ヤリス(1.5L ガソリン)《撮影 小林岳夫》 トヨタ ヤリス(1.5L ガソリン)《撮影 小林岳夫》 トヨタ ヤリス(1.5L ガソリン)《撮影 小林岳夫》 トヨタ ヤリス(1.5L ガソリン)《撮影 小林岳夫》 トヨタ ヤリス(1.5L ガソリン)《撮影 小林岳夫》 トヨタ ヤリス(1.5L ガソリン)。写真は16インチ装備《撮影 小林岳夫》 トヨタ ヤリス(1.5L ガソリン)《撮影 小林岳夫》