CBR650Rに装着、走り始めから安心して地面を掴んでくれる《撮影 土屋勇人》

初代ロードスマートに乗ったときのことを覚えている。ビッグネイキッドに装着されていたと思うが、剛性感が高くカッチリとした乗り味で、グリップ感は希薄だがハンドリングにクセがなく、道を選ばず無難に走れてしまうタイヤだった印象が残っている。

元々はツーリングタイヤらしい安定志向だったが、IIからIIIへと進化する中でよりスポーティな乗り味になっていった。そして、ダンロップ創業110年目に合わせるかのようなタイミングで発表されたIVは従来のIIIから5年という長いスパンを経ての登場となる。

ダンロップの開発者が「ツーリングタイヤの新たなベンチマーク」と豪語する新作タイヤ。当然、期待も高まるというものだ。事実、今回のメディア向け試乗会は12月初旬というタイヤにとっては厳しい季節に、しかも一般公道という敢えてハードな条件下で行われた。開発陣の自信の程をうかがい知ることができるだろう。

◆フットワークは軽く安心感も抜群

今回のテスト走行だが、排気量やジャンルの異なるモデルごとに同一車種を2台ずつ用意し、それぞれにIIIとIVを履かせて同一条件で比較する方法がとられた。場所は中高速コーナーが多いワインディングである。

最初にテストしたのはCBR650R。直4エンジン搭載の最新フルカウルスポーツで、軽量コンパクトな車体と適度なパワーが持ち味のバランスの良いモデルだ。まずはIIIでコースの下見を兼ねてウォームアップ。沿道の気温計は6度を示しタイヤ表面はカチカチに冷えている。ライダーにとっては遠慮したくなるシチュエーションだが、乗ってすぐに接地感が得られるなど単独で乗るとIIIも全然悪くないな、という感じ。ただ、車両の特性なのか独特のフロントのねっちりとした接地感が逆に重さとなって切り返しなどの応答性がやや鈍い感じはした。

これに対しIVだが、トレッドパターンなどの見た目はさほど変わらないのだが、走り出すとその違いはすぐに分かるほどでまずフロントが軽い。レーンチェンジのつもりで左右に車体を振ってみたが、フロントのプロファイルが尖ったせいか直立付近からのモーションがより軽快になっている。それでいて接地感はより鮮明なので自信をもって最初からペースを上げていけるし、それを許容する初期グリップが最初から与えられている感じだ。

試しに表面を指で押してみたが、明らかにIIIより柔らかい。これはほぼほぼフルシリカならではの感触。ブレーキングでもABSの入りが若干遅く、タイヤが粘ってくれるためよりハードに減速できることもメリット。

コーナリングでも徐々にバンク角を増やしていったが一向にタイヤが根を上げる気配はなく、旋回中も安心して荷重をかけて曲げていくことができる。もちろん、ハイグリップ系のようなベタッと貼りつくようなグリップ感ではないのだが、いまにも滑り出しそうな心許なさを感じた場面は一度もなく、気が付くとフルバンク近くまで使って走っていた。

続けて試乗したビッグネイキッドのCB1100RSもほぼ同様の傾向で、重量がある分ハンドリングの軽快感が際立って感じられ、より積極的な走りが楽しめた。ちなみに他の車両も含め、一様にIIIよりIVのほうがエッジの深いところまで使っている車両が目立っていた。つまり、ライダーやマシンが変わっても同じようにタイヤに対する信頼感が持てるということだろう。

◆重量級マシンとのマッチングは◎

特筆できるのが乗り心地の良さ。ちょうど橋の継ぎ目に下手をすると腰を痛めそうなぐらいの激しいギャップがあったのだが、IIIに比べてIVは明らかに突き上げが穏やか。それは極端としても、アスファルトの補修跡など路面の細かい凹凸を滑らかなタッチでいなしてくれるので乗っていて気持ちがいい。車種とのマッチングもあるが、まるでサスペンションの性能をアップしたようなグレード感があるのだ。これが開発陣の言う「気持ちが、続く」のメリットだと実感。特にそれを顕著に感じたのはNinja1000やハヤブサ、FJR1300などの重量車だった。

とりわけ、「GTスペック」を装着したFJR1300に関してはハンドリングも見違えるほど軽快になり、ターンインのタイミングに遅れることなく自分のイメージしたとおりのラインに乗せられるため、自信を持ってコーナーに飛び込んでいける。重量級マシンであることを忘れてしまうほどスポーティな走りができてしまう、ある意味で最も変わり映えした一台に思えた。

一方、車種とのマッチングという点では、元々フロントが軽快なモデルに関しては違いが分かりづらい部分もあり、今回の中ではZ900RSは逆にフロントが軽すぎてしまい、もう少し手応えが欲しい感じもした。これは乗り手の好みにもよると思うが、大型バイクらしいどっしりとした安定感を求める人にはIIIのほうが感性に合うことがあるかもしれない。

いずれにしても、ロードスマートIVはバイクが持っている基本性能をオールレンジで高める(引き出す)ポテンシャルを持っていることが確認できた。例えるなら耐久性と快適性を兼ね備えたスポーツタイヤと言ってもいいレベルであり、きっと多くのライダーのストライクゾーンにはまるはずだ。佐川健太郎|モーターサイクルジャーナリスト
早稲田大学教育学部卒業後、出版・販促コンサルタント会社を経て独立。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。(株)モト・マニアックス代表。バイク動画ジャーナル『MOTOCOM』編集長。日本交通心理学会員。MFJ公認インストラクター。

バランスの良い車種だけに、装着車の持ち味をさらにタイヤで引き出してくれる《撮影 土屋勇人》 重量級のマシンに装着すると、ハンドリングが軽快に変化する《撮影 土屋勇人》 左:SPORTMAX ROAD SMART IV(新モデル)、右:SPORTMAX ROAD SMART III(前モデル)。明らかに新モデルのほうが、細かいトレッドパターンとなっている《撮影 土屋勇人》 ツーリングでの楽しさを追求したのが、ロードスマートIVである《提供 住友ゴム工業》 サイドウォールをチェックすると、前モデル比較で柔らかくなっていることがわかる《撮影 土屋勇人》 “丸い”ということも特徴の1つ、ハンドリングの軽快さを引き出している《撮影 土屋勇人》 今回のテスト走行は、排気量やジャンルの異なるモデルごとに同一車種を2台ずつ用意し、それぞれにIIIとIVを履かせて同一条件で比較することができた。《撮影 土屋勇人》 新旧モデルを比較することで、進化を明確に感じることができた《撮影 土屋勇人》 ダンロップ・ロードスマートIV試乗会《撮影 土屋勇人》 ダンロップ・ロードスマートIV試乗会《撮影 土屋勇人》 ダンロップ・ロードスマートIV試乗会《撮影 土屋勇人》 ダンロップ・ロードスマートIV試乗会《撮影 土屋勇人》 ダンロップ・ロードスマートIV試乗会《撮影 土屋勇人》 ダンロップ・ロードスマートIV試乗会《撮影 土屋勇人》 ダンロップ・ロードスマートIV試乗会《撮影 土屋勇人》 ダンロップ・ロードスマートIV試乗会《撮影 土屋勇人》 ダンロップ・ロードスマートIV試乗会《撮影 土屋勇人》 ダンロップ・ロードスマートIV試乗会《撮影 土屋勇人》 ダンロップ・ロードスマートIV試乗会《撮影 土屋勇人》 ダンロップ・ロードスマートIV試乗会《撮影 土屋勇人》 ダンロップ・ロードスマートIV試乗会《撮影 土屋勇人》 ダンロップ・ロードスマートIV試乗会《撮影 土屋勇人》 ダンロップ・ロードスマートIV試乗会《撮影 土屋勇人》 佐川氏によると、今回のベストマッチングはCBR650R!《撮影 土屋勇人》 乗っているだけで、とても楽しい気持ちにしてくれる《撮影 土屋勇人》 ツーリングでの楽しさを追求したのが、ロードスマートIVである《撮影 土屋勇人》 左:SPORTMAX ROAD SMART IV(新モデル)、右:SPORTMAX ROAD SMART III(前モデル)。明らかに新モデルのほうが、細かいトレッドパターンとなっている《撮影 土屋勇人》