CES2020に初出展したブリヂストン。1回目の出展にも関わらず人気のNorthHallの一等地に構えることができた

ブリヂストンは米国・ラスベガスで開催の、世界最大規模のIT家電ショー「CES 2020」へ初出展した。自動運転を想定した先進的な技術を通じ、モビリティの進化や安全性、効率性を支える様々なソリューションを展示している。

ブースではその実現に向け、「次世代タイヤで拡張するモビリティ領域」「スマートタイヤテクノロジーで実現するモビリティの安全性」「ウェブフリートソリューションで進めるモビリティの効率化」といった3つのテーマを用意した。

会場に入って最初に目を引いたのは、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)とトヨタが進める「有人与圧ローバ(以下、ローバ)」用タイヤだ。ローバが月面を走破するためのタイヤ(接地体)として研究開発しているもので、月面で接地体が果たすべき4つの役割り(重量を支える、駆動力・制動力を伝える、方向を転換・維持する、路面変化に追従する)を実現する。会場ではしなやかで強靭な接地体の開発に挑戦する同社の姿を紹介した。

同社が目指す新たなイノベーションとして展示されたのが「非空気入りタイヤ」。このタイヤはこれまでとは違い、空気を不要とすることで充填にかかる手間を含むメンテナンスを不要としているのが最大のポイント。たとえば自転車のシェアリングは世界的に広がりを見せているが、その一方で空気が抜けていて使えないまま放置されるといった例も少なくない。非空気入りタイヤならそんな心配も不要となるわけだ。ブリヂストンではこのタイヤを使った自転車のプロトタイプを東京オリンピック2020の選手村に用意。選手村での利用結果から販売への道を探っていきたい考えだ。

新たなソリューションとして出展されたのが、タイヤの歪みを検知してタイヤの荷重や摩耗状況を測定できる「スマート・ストレインセンサー」だ。タイヤそのものにセンサーを取り付け、タイヤそのものが状況を判断できるようにしたのが最大の特徴。取得したデータはRF帯の電波を使い、クラウド経由で各車両に配信される。データは蓄積されるので、タイヤの保守管理にも役立つというわけだ。特に従来なら複数の機能を持たせることで機能が複雑化していたが、今回は取得するデータをタイヤの摩耗に特化しているので無駄な電力を使うこともない。2〜3年後に、主としてバスやトラックなどの業務用分野での実用化を目指す。

また、ブリヂストンは昨年4月、オランダの大手地図サプライヤー「TomTom」からデジタルフリートソリューション事業を買収。テレマティクス技術・データを活用し、顧客企業の車両の生産性、安全性、コスト効率向上を実現するためのソリューションプラットフォーム「ウェブフリートソリューション」として提案していく。会場ではそのデモンストレーションを見ることができた。

今回のブリヂストンがCESへ初出展したことについて、同社ブランドコミュニケーション推進ユニットの宮下和久さんは、「昨年の東京モーターショーでは様々な趣向を凝らしたことで予想を超える多くの人に来場いただいた。別の分野に出展することで、今まで見えてこなかったモノが見えてくることも数多いことを実感した」という。さらにブリヂストンが目指す今後の方向性についても「これまでの単品販売する事業形態からサービスとか、MaaSを支えるコントリビューターになりたいと考えている」と語った。

JZXAとトヨタが進める「有人与圧ローバ」に参画。月面で接地体が果たすべき4つの役割りを実現する