トヨタ自動車(東京モーターショー2019)《photo (c) Getty Images》

「今回のトヨタブースには来年発売されるようなクルマはありません。テーマは人を中心とした未来の暮らし。まずはお越しいただいた皆様に楽しんでいただけること、ファンを感じていただくことを大切にしました」

東京モーターショー2019、青海ホールのトヨタ自動車プレスカンファレンスで豊田章男社長はこう語った(23日)。今回のトヨタブースは異例ずくめ。市販予定車や近未来の商品アンテナ的モデルは1台も置かれず、カーシェアリング、電動化、コネクティビティ、自動運転の4つの技術革新がもたらす未来のモビリティの表現に徹したもので、トヨタいわく「モビリティのテーマパーク」。北米家電ショーCESなどでよくみられる先端プレゼンの手法を自動車側にぐっと寄せたような演出であった。

そのココロについて、豊田社長はこう説き明かす。

「世界は今、人工知能やロボティクスなど、自動化に向かって急激に進んでいます。その中で“人間がロボットに使われる時代が来るんじゃないか”という不安の声も聞こえてきます。しかし、トヨタは人間の力を信じ、人が中心でいつづける未来を描きます。トヨタブースでいちばん伝えたいのはヒューマンコネクテッド。人間同士がつながる社会、人のぬくもりや優しさを感じることができる社会。今日はとにかく“人”の話なんです」

ブースのひな壇に飾られる未来モビリティはバス、貨物車、移動オフィスなど多目的に使える箱型移動体『e-Palette』、カーシェアリング時代にあえてパーソナル所有する意味を追求したスポーツモビリティ『e-RACER』、車内でスポーツジム、カラオケ、AR(拡張現実)などを楽しめる一人用移動体『e-4me(フォーミー)』、AIによる健康診断を受けながら病院に向かうことができる『e-Care』、宅配便の荷物をドアまで運ぶ『Micro Palette』、空飛ぶほうきをイメージしたパーソナルモビリティ『e-broom』など。これらは単に飾られるだけだけでなく、来場者が実際に体験可能。プレイ実績に応じてブース内の「トヨタコンビニ」でレアグッズに交換可能であるという。

「アメリカではクルマの誕生によって、1500万頭の馬がクルマに置き換わりました。しかし、それでも競走馬は残りました。馬は人間と心を通わせることができ、また障害物があったら自ら避け、穴があったら自分の判断で飛び越えます。AIの進化によって、クルマも人と心を通わせる存在になる時が来るのではないでしょうか。e-Paletteのような、大勢が共有するモビリティが馬車とすれば、e-RACERは愛馬。未来のモビリティは、馬車と愛馬が共存するものになるのではないでしょうか。これからのトヨタにご期待下さい」(豊田社長)

ちなみに先般技術発表された新型『ヤリス』をはじめとする市販車は、青海ホールに近いトヨタショウルーム、メガウェブに展示されている。そのアピールも忘れていなかった。

トヨタ自動車(東京モーターショー2019)《photo (c) Getty Images》 トヨタ自動車(東京モーターショー2019)《photo (c) Getty Images》