ホンダ CB650R《撮影 ダン・アオキ》

16歳の誕生日と共に原付免許を取り、でも、20代はクルマに夢中。アラサーでリターンライダーになるも、40代は仕事に忙殺される。そしてアラフィフで2輪に再々入門。そんな浦島ライダーが、最新のバイクをチェックしていきます!

◆ホンダらしく、わかりやすくカッコいい


ホンダ『CB650R』のデザイン上のハイライトは、キレイに並んだ4本のエグゾーストパイプである。いうまでもなく、マルチこと直列4気筒エンジンを搭載しているわけですが、「エッ!? 4気筒なの?」と驚くかどうかで、バイク好きの世代が分かれるかもしれませんね。

1980年代のバイクブームのころには、250ccでも各社競って4気筒モデルを出したものですが、いまやクオーターからナナハンまで、並列2気筒が興隆を極めている。機械的な合理性を考えるとそれが正解なのだろうけれど、「やはりマルチの『シャーン!』と回るフィールがだね……」となどと自慢げに話すと、若年層にウザがられるので気をつけましょう……って、アレ?

ホンダCB650Rは、648cc直列4気筒(95ps、64Nm)を積んだスポーツバイク。短く切り落とされたテール。小さくまとまったマフラー。ギュッと凝縮された感のあるエンジンとトランスミッション。マス(重量物)の集中化を視覚化した、いかにも今どきのスタイル。スマートに筋肉質で、いいデザインだと思う。


ホンダのバイクらしく、わかりやすくカッコいい。LEDを用いた丸型ヘッドランプは、これまでのCBファンへのオマージュでしょう。上はCB1000R、下はCB250Rと、シリーズ全体のイメージを上手に共通化している。

CB650Rの価格は97万9000円。フルカウルモデルのCBR650Rが105万6000円。ちなみに、CB400SUPER FOURが88万4400円。SUPER BOL D'ORが104万0600円だから、新しい650系は、価格面でなかなか頑張ったといえるのではないでしょうか。スティール製のダイヤモンドフレームにエンジンを吊るといったコンベンショナルな作りにして、世界市場を相手に一定の販売数を見込めるグローバルモデルゆえの恩恵だ。

◆トルクが厚く、よく粘る4気筒


CB650Rのシート高は810cm。「ちょっと高いかも」と警戒する人がいるかもしれませんが、シートの前半分はかなり細身で、かつシートの角が削られているので、意外に足つきはいい。ライディングポジションは、先代にあたるCB650Fより前傾が強まったとされるが、依然としてネイキッドのそれ。気負わず、自然に乗れる。600cc超の排気量を持ちながら、街なかでの取り回しも楽。細かい道が多い市街地でも気軽に走れます。

ツインカム4バルブのマルチシリンダーは、エンジンに空気を取り込む吸気ダクトの形状や吸気経路、エアクリーナーやその取付位置を見直して、よりスムーズにフレッシュな空気を送り込めるよう工夫が施された。アウトプットは、「F」より5psアップの最高出力95ps/12000rpm、最大トルクは64Nm/8500rpm。4気筒らしくスムーズに吹け上がるが、むしろ中低回転域でのピックアップのよさ、トルクの厚さが印象的。


そして、4気筒ながらよく粘る。アイドリングプラスでの這うような走りも厭わない、日常的に使いやすいパワーユニットです。トランスミッションは6速MT。アシスト&スリッパークラッチが組み込まれているので、クラッチレバーを軽く握れるのがありがたい。

足まわりは、フロントに倒立フォークが与えられ、ダブルディスクにラジアルマウントされたブレーキキャリパーと、なかなかアグレッシブだ。もちろんABS付き。一方で、スポーティなルックスから予想されるより、乗り心地はずいぶんと柔らかい。少々荒れた舗装でもしなやかに路面の凹凸を吸収して、軽やかに駆け抜けます。

◆ポテンシャルの高さと尖り過ぎていないスポーツ性


いざスロットルを開けてやれば、マルチの快音とともにデジタルメーターの表示が突き抜けるように高回転域まで……というよりは、エンジンの回転に従ってもりもりとトルクを紡ぎながら素早く速度を稼いでいく。そんな感じ。CBR650R、気張らなくとも速いバイクですね。

一般道では、スロットルを軽くひねるだけのズボラな運転で十分に流れをリードできるし、高速道路でも、前方からの風は甘受しなければならないが、動力的にはまったく余裕。トップギアで100km/h巡航すると、エンジン回転数は4750rpm付近だから、たっぷり伸びしろを残しています。

バイクの趣味性が強調されるニッポン市場では立ち位置が少々難しいCB650Rだけれど、ポテンシャルの高さと尖り過ぎないスポーツ性の好バランスが魅力。初の「400cc超え」バイクとして購入する人にも親しみやすい性格でいながら、酸いも甘いも噛み分けて、「もうリッターはいらないかな」と感じているベテランライダーにも対応できる懐の深さがある。

パッと見、「CB250Rと間違われるかも!?」という懸念はありますが、うっかり“ニーハン”と勘違いした相手に段違いの底力を見せつけるのがオーナーの密かな楽しみになる、かもしれませんね。

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