マツダ3 新型 セダン《撮影 中野英幸》

◆インテリアの質感は上々、エンジンフィールは…


『マツダ3』を公道で初めてドライブした。まずはディーゼルのセダン。プロアクティブのツーリングセレクションというモデルゆえシートはファブリックとなるが、それでもインテリア全体の質感は高く、雰囲気は上々だ。

ところがエンジンフィールは、いささか期待したほどでなかったというのが正直なところ。アクセルを踏み増した直後にパッと前に出る感覚はあるのだが、そのあとが続かない。従来のアクセラに設定されていたシーケンシャルツインターボを備えたSKYACTIV-D 2.2が持っていたような盛り上がり感には遠くおよばない。

マツダ3のSKYACTIV-D 1.8は、シンプルな既存のSKYACTIV-D 1.5の拡大版であり、SKYACTIV-D 2.2ほど凝ったメカニズムを持つわけではないので、あまり多くは期待できないのは否めず。マニュアルシフトやアクセルの踏み具合でキックダウンさせるなどしてタイミングよくシフトダウンすることができれば、ダイレクト感のあるATも効いて、それなりに瞬発力のある加速が得られるが、そこにSKYACTIV-D 2.2のようなドライビングプレジャーはない。


ディーゼルっぽいゴロゴロ感も低〜中速では思ったよりも気になった。とはいえ同等の排気量のガソリンに比べると、それなりにトルク感はあることと、むろん経済性には優れるので、そのあたりを理由に選ぶのはありかなと思う。

アクセラの車格でスカイアクティブ-D 2.2というのは、オーバースペックな組み合わせであるところが魅力だったりして、いまやアクセラでも中古車市場でプチプレミアが付いているくらい。しかも洗練された最終型よりも、荒々しくても力強さを直感させた改良前のモデルが人気という。商品性というのは難しいものだとつくづく思う。

◆全体としてはやや物足りなさ、今後の改良に期待したい


フットワークについて、車検証を見ると、もう少し軽いものと思っていたところ、前軸重が900kgを超えていることにちょっと驚いたのだが、乗り味に重々しさはなく、むしろ軽やか。テストコースで乗った際は、ハッチバックよりもセダンのほうが4輪のグリップバランスがよく好印象だったのだが、こうして公道でドライブしてもフラット感があり、ハッチバックよりもゆったりとした乗り味が与えられていることはうかがえた。

半面、リアのトーションビーム化が乗り心地に与える影響が、公道だとどうなのか気になっていたのだが、やはりマルチリンクの快適性には及ばない。舗装のきれいな路面を低速で走る市街地のような状況であればまだよいのだが、都市高速や郊外の荒れた路面を通過すると突き上げや跳ねが気になる。


ただし、トーションビームを採用したのはトー変化を嫌ってのものであり、コントロール性を高めにるには好都合との判断があったようだが、たしかに一発で舵角の決まるハンドリングの気持ちよさはアクセラ時代をしのぐ。また、従来はステアリングの切りはじめの動きが過敏で違和感を覚えたGVCとのマッチングもよくなった。

期待値が高すぎたせいか、全体としてはやや物足りなさを覚えたのは否めず。今後の改良に期待したいところだが、それでもこのクラスのセダンで世界屈指のスタイリッシュな姿には、見れば見るほどホレボレさせられる。

■5つ星評価(セダン)
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★

岡本幸一郎|モータージャーナリスト
1968年、富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報映像の制作や自動車専門誌の編集に携わったのち、フリーランスのモータージャーナリストとして活動。幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもスポーツカーと高級セダンを中心に25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに多方面に鋭意執筆中。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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