車椅子レーサーの青木拓磨が、ハンドシフトを備えたホンダ「CBR1000RR」で22年ぶりに鈴鹿サーキットを走った(7月28日)《写真 モビリティランド》

7月28日、2018-2019 FIM世界耐久選手権最終戦“コカ・コーラ"鈴鹿8時間耐久ロードレース 第42回大会の決勝レース前のセレモニーで、鈴鹿サーキットを青木拓磨が22年ぶりに疾走した。

拓磨はロードレース世界選手権(WGP)で活躍したライダー。1995年、1996年にかけて全日本ロードレース選手権スーパーバイククラスを2連覇し、1997年にはWGPデビューを果たす。この年、500ccのV型2気筒エンジンを搭載するホンダ「NSR500V」を駆って世界に挑んだ拓磨は、その翌年もWGPを戦う予定だった。しかし1998年、シーズン前のテスト中にクラッシュ。脊髄を損傷して下半身不随となる。

以降、拓磨はハンドドライブで行う四輪レースなどに積極的に参戦。2020年には四輪レースのFIA世界耐久選手権(WEC)ル・マン24時間レースへの参戦を表明している。また、レンタルバイクで誰もが気軽に参戦できる耐久レース『レン耐』を主催し、二輪ロードレースの普及にも尽力している。

今回のプロジェクト“Takuma Rides Again”は、兄弟でありともにレーシングライダーとして切磋琢磨してきた兄・青木宣篤と弟・青木治親が立ち上げた。宣篤はスズキのMotoGPテストライダーを務め、また、2019年鈴鹿8耐にも参戦するレーシングライダーであり、治親は現在、オートレーサーとして活躍している。拓磨がデモランを行うのは、イギリス製のハンドシフトを備えたホンダ「CBR1000RR」だ。


鈴鹿8耐の決勝レース前、鈴鹿サーキットのコース上に兄弟とともに姿を現した拓磨はこう語った。

「(事故後も)あきらめたくなくて、四輪のレースに参戦しています。絶対にまた世界に戻る、と思ってやってきました。今回、プロジェクトを立ち上げてくれた治親のおかげでこうして(再びバイクに乗ることを)達成できました」

そうして「うれしい!!」と、抑えきれないように感情を言葉に乗せる。そんな拓磨のデモランを前に、弟の治親は「夢のよう」と語り、兄の宣篤はあふれる涙に声を詰まらせた。

拓磨は約2周にわたってデモランを実施。鈴鹿サーキットに詰めかけた多くのファンは、22年ぶりに拓磨がバイクを駆り鈴鹿サーキットを疾走する姿に、大きく温かい拍手を送った。

走行を終えた拓磨を迎える兄・宣篤(右)と弟・治親《撮影 伊藤英里》 車椅子レーサーの青木拓磨が、ハンドシフトを備えたホンダ「CBR1000RR」で22年ぶりに鈴鹿サーキットを走った(7月28日)《写真 モビリティランド》