ダイハツ タント 新型(カスタム・プロトタイプ)《撮影 雪岡直樹》

この数か月間の国内販売ランキングを見ると、1位がホンダ『N-BOX』、2位はスズキ『スペーシア』、3位はダイハツ『タント』だ。すべて全高が1700mmを超えるスライドドアを備えた軽自動車になる。

この内、タントは発売から5年以上を経過するが、人気は根強い。2019年7月のフルモデルチェンジを控えて、新型のプロトタイプをクローズドコースで試乗した。

◆後席の快適性が格段に向上


新型は先代型の欠点潰しを行っている。居住性については先代型も車内が広く、前席は快適で積載性も優れていたが、後席の座り心地は悪かった。座面の柔軟性が乏しく、床と座面の間隔も足りないから、足を前方へ投げ出す座り方になった。

そこで新型は、後席の座面を柔軟に仕上げて、床と座面の間隔も拡大した。後席にチャイルドシートを装着するユーザーにはメリットの乏しい改善だが、広い室内を生かして大人4名で乗車する用途では、快適性が格段に向上している。

◆背高ボディでも安定した走り


走行性能は、先代型の場合、ノーマルエンジンの動力性能が不足していた。操舵感も曖昧で、峠道などでは旋回軌跡が拡大しやすい。全般的に動きが鈍く、曲がりにくい印象も強かった。

これらの欠点を改善することも視野に入れ、新型タントはエンジン、CVT(無段変速AT)、プラットフォーム、サスペンションなどを刷新した。CVTはギヤを組み込んで変速幅を広げ、発進時などの動力性能と、巡航時の燃費を向上させている。

カーブを曲がる時の姿勢は、先代型では内側が浮き上がる印象だったが、新型では外側が沈む。安定性のレベルが底上げされ、高い速度域まで後輪の接地性が保たれる。そのために高重心のボディでも、曲がりにくさを感じさせない自然なセッティングが可能になった。操舵に対する反応も同様で、先代型の鈍さを払拭している。

◆商品力をバランス良く高めた


装備では全車速追従型クルーズコントロールも採用され、長距離移動時の快適性を高めた。ただし追従走行中に自動停車した後、2秒が経過すると再発進してしまう。パーキングブレーキが電動式になる日産『デイズ』&三菱『eKシリーズ』と違って、自動停止を続けられない。

また緊急自動ブレーキの作動上限速度は、車両に対しても従来と同じ80km/hにとどまる。今後の改善が期待される部分も散見されるが、欠点を減らして運転支援機能などを加えることにより、商品力をバランス良く高めた。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★
オススメ度:★★★★

渡辺陽一郎|カーライフ・ジャーナリスト
1961年に生まれ、1985年に自動車雑誌を扱う出版社に入社。編集者として購入ガイド誌、4WD誌、キャンピングカー誌などを手掛け、10年ほど編集長を務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様に怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けている。

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