初代マツダ『ロードスター』NA型が登場してから30年。2代目NB、3代目NC、現行NDと歴代モデルそれぞれに、数々のエピソードがある。そのなかでも3代目NCについて「当時、最も速かった」部分があるという。新たに商品本部主査に就任した斎藤茂樹氏が教えてくれた。
これまで、マツダの商品本部主査といえば中山雅氏(デザイン本部副主査兼任)。ことし春から中山氏はデザイン本部副本部長兼デザイン本部副主査に就任し、車両開発推進部副主査だった斎藤茂樹氏が商品本部主査に就いた。ロードスターの哲学を継承する斎藤主査は、どんなマツダ人生を歩んできたか。1000台以上のロードスターが集結した春の恒例「軽井沢ミーティング」のトークショーに登場し、その一端を打ち明けてくれた。
「ぼくは副主査の時代、走りと燃費を担当していた。実は中山と同期で、ちょうど1989年、ロードスターの発売開始と同時に入社した仲間なんですよ。で、クルマの運転が好きってことで、入社してすぐに車両実験部に配属して、そこからのマツダ人生が始まりました」
「いろいろと仕事を覚えたあとに任されたのがロードスター2代目のNBですね。どんな仕事をしたかっていうと、機能開発という泥臭い仕事です。雪侵入とか水浸入とか、エンジンの触れ干渉、路面干渉、それから燃料タンクの給油性、サービス性などですね」
ロードスター好きを前にして語るからか「泥臭い」という形容詞を出しながらも、本人にとってはすべてが「面白い現場」のようで、深さ300mmほどの水が溜まった路面に突っ込んだり、吹雪を再現したなかでの150km/h走行でエンストしてしまうエピソードなどを、熱く語る。そして時代は3代目NCへ。斎藤主査は、NC乗りをよろこばせるこんな思い出話を明かした。
「そのあとはパワートレインを担当しました。NCの走りをずっとみてきました。ちょうどNCでエレキスロットルに変わった時代ですね。当時、マツダでは『世界一のレスポンスをめざせ』ということで、『ポルシェとかのエレキにも勝とう』って気持ちで取り組んできました」
「実は、アクセルを踏んでスロットルが開く時間は、NCが当時、我々が知っていたもののなかでは最も速かったんです。エレキスロットルって、人がアクセルを踏むと、コンピューターは『ほんとうにいま踏んだ?』って聞いてくるんです。そこから『ちゃんと踏んでるよ』っていうやり取りがあって、始めてスロットルが開くんですよね」
「NCが誕生した時代は、マツダ車はレスポンス重視だった。とにかくアクセル踏んだら勢いよく出て、ハンドル切ったらサッと曲がって、とにかく勢いのいい軽快なモデルをめざした」
このNCとNDの間に、ロードスターの歴史のなかで、大きく舵を切る場面をむかえる。斎藤主査はこう続ける。
「マツダはその後、ゆっくりでも人の感覚に一番あう特性がいいだろう、という考え方に変わったんですね。『人馬一体』自体は初代ロードスター以来の考え方ですが、そこから今の考え方に行き着くんです。歩くがごとくクルマを運転する、そんな方向に特性を変えてつくったのが、2010年の3代目『プレマシー』です。で、開発陣が『これでいこうや』みたいに想いがひとつになって、『CX-5』から『アテンザ』、『アクセラ』と続いていきます」
軽井沢ミーティングに集結したロードスター好きは、このトークショーでどんどん前のめりになっていく。このあと、NDの今後、そして次世代「NE」への想いを語るころには、自然と拍手がわき起こることに……。
マツダ ロードスター 3代目は、最速のスロットルレスポンスを持っていた
2019年06月02日(日) 18時00分
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