トヨタ RAV4 Adventure(アドベンチャー)《撮影 小林岳夫》

トヨタは、ミドルクラスSUV『RAV4』をフルモデルチェンジし、3年ぶりに国内市場に復活させた。

◆「ハイブリッド」「ガソリン」「グレード」によって異なる4WDシステム


新型『RAV4』が搭載するのは「ダイナミックフォースエンジン」と名付けられた新世代のパワーユニットだ。直噴の直列4気筒DOHCガソリンエンジンとハイブリッドシステムを組み合わせたリダクション機構付きのTHS IIが用意されている。また、主役となる4WDモデルは、ハイブリッド車に電気式4輪駆動のE-Fourを採用した。

E-Fourが採用する電気式の4輪駆動は、通常は前輪駆動のFFの状態で走る。だが、加速時や滑りやすい路面ではスムーズに4WD状態に切り替え、走行安定性を賢くアシストするのだ。

最新設計のRAV4はモーターで駆動する後輪の駆動力を今までより1.3倍も増大するとともに、走行状況に応じてトルク配分を調整する制御を追加して前後のトルク配分を100:0から20:80へと高めた。

2.0リットルの直列4気筒直噴DOHCエンジン搭載車には2種類の4WDシステムを採用した。「X」と「G」が採用するのは、FFの状態と4WDの状態を自動的に電子制御し、路面と天候に関わらず安定した走りを実現するダイナミックトルクコントロール4WDだ。通常はFFでの走行だから燃費がいい。だが、滑りやすい路面では後輪にも最適なトルクを配分し、安定した走りを実現する、前後のトルク配分は、最大で50:50だ。

「G」のZパッケージと専用パーツを組み込んだアドベンチャー(Adventure)は、世界初の新しい電子制御4WDシステム、「ダイナミックトルクベクタリングAWD」を採用した。これは後輪のカップリングをふたつに増やすことによって前後のトルク配分だけでなく後輪の左右へも独立してトルクを配分する最新の4WDシステムである。

トルクベクタリング機構は、ステアリング操作と路面状況に応じてエンジンの駆動力トルクを変え、前後輪にトルクを最適に配分するとともに後輪のトルクを左右それぞれで絶妙に独立制御する技術だ。

4輪への接地荷重を最適化することにより、安定した走りを実現した。それだけでなく、ブレーキも緻密に協調制御するから意のままのコーナリングを楽しめる。また、FF走行のときには後輪の駆動系を切り離すディスコネクト機構を装備しているから燃費も悪くならない。

◆3タイプの4WDシステムをオフロードでチェック


特設のオフロードコースで3タイプの4WDシステムの違いをチェックした。最初にステアリングを握ったのは、ダイナミックトルクベクタリングAWDを採用するアドベンチャーだ。

反時計回りにダートコースを旋回したが、内側のパイロンを舐めるように、狙ったラインに無理なく乗せることができた。コーナーの入り口でステアリングを切ると、エンジンのトルクを絶妙に絞って荷重移動を速やかに行う。接地能力が高いだけでなく、舵の入りもいい。しかもコーナリング中のRAV4の挙動は驚くほど安定していた。それでいて操る楽しみもある。

次にダイナミックトルクコントロール4WDの実力を試す。こちらも狙ったラインに乗せやすいし、コントロールしやすかった。が、スピードが出てくるとアンダーステアが顔を出し、徐々に外側にはらむようになる。

ダイナミックトルクベクタリングAWDよりステアリングの操作量は増えたし、アクセルのコントロールにも気を遣った。ロールしているときの揺り戻しも少し大きいように感じる。

この両車と大きく違う挙動を見せたのがハイブリッド車に採用されているE-Fourだ。滑りやすい路面では前後輪のトルク配分を100:0から20:80まで自動的に可変させ、クルマを安定方向に導くのである。

前後の駆動トルクを瞬時に連続可変して安定させようとするが、リダクション機構付きのTHS IIは驚くほどパワフルだ。だからステアリングを切り込み、アクセルを踏み込んで向きを変えようとすると、思った以上にクルマが内側に切れ込んでしまった。

向きを変えようとして意識的に後輪のトルク配分を増やすからオーバーステアになりやすいのだ。ただし、コツを飲み込んでしまえばスポーツドライビングを楽しめる。意外にも、リアを振り回す走りを楽しめたのは電気式4WDのE-Fourだった。だが、パワフルだから繊細なドライビングが望まれる。

◆“オーナーの好み”と“使うステージ”によって光る個性


ガソリンエンジン搭載車は、深いわだちのモーグル走行のほか、急勾配の登坂路と下り坂も走ってみた。オフロードではマルチテレインセレクトを「ロック&ダート」モードにして走行したが、走破性能は本格派のクロスカントリー4WDに負けていない。

特にダイナミックトルクベクタリングAWDを採用したアドベンチャーは、どのステージでも驚異的な走破能力を見せつけている。

タイヤが宙に浮く過酷なモーグルコースではトラクション能力が高く、空転も小さく抑えられていた。スリップは最小に抑えられ、スタックしそうになってもアクセルを踏み込むだけで脱出できる。

また、登坂路ではヒルスタートアシストコントロールが発進をサポートし、グリップを失うことなくスムーズに発進することができた。急勾配の下り坂では威力を発揮したのは、アドベンチャーに装備されているダウンヒルアシストコントロールだ。前が見えない急勾配を低速を維持しながら不安なく下りることができた。

過酷なステージではダイナミックトルクベクタリングAWDの優位性が光っている。が、フラットダートではダイナミックトルクコントロール4WDの素直な走りが印象的だった。

また、E-Fourの操る楽しさにもひかれる。4WDシステムは、オーナーの好みと使うステージによって選べばいいだろう。



片岡英明│モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員

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