トヨタ RAV4 Adventure《撮影 島崎七生人》

初代『RAV4』の登場は、今から実に25年も前。リヤにマウントされたスペアタイヤも、あえてそうしていたかのような、コンパクトで都会的なクロスオーバー4WDとしてデビューを飾った。

発表・発売の直前、取材でトヨタのテストコースで実車と初対面し、スタイリングの印象から「随分カジュアルな“四駆”が出てきたものだ」と思ったもの。けれど撮影と試乗で高速周回路面を走れば快適だし、富士山の麓近くの、野生のキジ(クジャクだったかも?)が試乗車の目の前を横切るような自然の地形を生かした場所でも何食わぬ顔で走りきり、楽しく、身軽で、4WD性能も並々ならないことに舌を巻いた覚えがある。日本市場では3代目が『ヴァンガード』『クルーガー』に置き替わって以降、4代目は日本市場には投入されることなくきたが、今回の5代目は、機能もコンセプトも満を持して磨き上げての再登場…。そんな印象がある。

◆進化した性能を引き立てるためのスタイリング

スタイリングは写真でもおわかりのとおり、カジュアルというよりもワイルドなムード。ネイティブなオフローダーの雰囲気を加味、ソフト&オンロード寄りの近年のトレンドとひと味違うもの。

しかし実際に試乗してみると、前述した初代『RAV4』以来の走りの性能がより進化し、そのことを引き立てるためのスタイリングがこうなのだ…、と理解できた。

安心、快適なうえ、しっかりと走ってくれる実力の高さが味わえた、のである。試乗はオンロードとちょっとしたラフロードで行なったが、ドライバーの意思に忠実な反応、挙動を示してくれるのを実感。とくに駆動力は前後配分だけでなく、リヤの配分を左右にも0:100〜100:0で制御する“ダイナミックトルクベクタリング”により、安定した4輪の接地感とライントレース性が得られ、気持ちよく爽快にクルマを走らせることができ、その自然なマナー、フィーリングには感心。メーターパネル内の表示をみていると、適宜、細かな駆動力制御を実行しているのもわかった。またコーナリング時の姿勢変化も穏やかで、乗り味もフラットでスッキリとしているのもいい。装着タイヤ(ヨコハマAVID GT BluEarth、235/55R19 101V)のマッチングもよく、サスペンション、制御と三位一体となった走りに貢献している。

◆リズミカルでキレ味のいいパワー感

試乗車は「Adventure」で2リットルの4気筒直噴エンジン(171ps/21.1kgm)+CVTを搭載。このパワートレインも設計が新しいだけあり十分な性能を発揮してくれ、とくにCVTは小型化、ベルト狭角化の恩恵で、CVTであることをほとんどの場面で実感させない、リズミカルでキレ味のいいパワー感を味わわせてくれる。

インパネは水平のラインが1本通った、スッキリと上質なデザイン。細かなことだが、ドアのインナーグリップの指先が触れる側がラバーで仕上げられており、手を滑らさずに握れるのがいい。後席は足元はもちろん頭上空間の余裕は注目に値。シートも適度なクッションで身体を受け止めてくれ、リクライニングはもっとも起こした状態が快適な着座感だった。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

トヨタ RAV4 Adventure《撮影 小林岳夫》 トヨタ RAV4 Adventure《撮影 小林岳夫》 トヨタ RAV4 Adventure《撮影 島崎七生人》 トヨタ RAV4 Adventure《撮影 島崎七生人》 トヨタ RAV4 Adventure《撮影 島崎七生人》 トヨタ RAV4 Adventure《撮影 島崎七生人》 トヨタ RAV4 Adventure《撮影 島崎七生人》 トヨタ RAV4 Adventure《撮影 島崎七生人》 トヨタ RAV4 Adventure《撮影 島崎七生人》 トヨタ RAV4 Adventure《撮影 島崎七生人》 トヨタ RAV4 Adventure《撮影 島崎七生人》