VW パサート オールトラックTDI 4MOTION Advance《撮影 島崎七生人》

◆飾り立てすぎないところがいい

カタログの表紙と同じオリックスホワイトマザーオブパールエフェクト(有償オプション)の試乗車は、プレーンでアンダーステートメントな雰囲気が好ましく思えた。まさしくVWらしいクルマだ。

「ヴァリアント」ともかなり顔つきが違うのは、写真でもおわかりだろう。グリル部は最上段のフチの1本+横3本の“桟”のみメッキとし(ヴァリアントは縦にもメッキが走り、それがバンパーないの通風口のパターンまで連動している)、専用デザインのバンパー側の加飾はマットシルバー仕上げ。その下のスキッドプレートも力強いデザインだが薄くサラリと見せゴツ過ぎない。初代『ゴルフ』(同世代の『パサート』もそうだった)が黒いグリルにポツンとVWサインを置いていたように、シンプルであるほどVWらしいが、「オールトラック」だからと飾り立てすぎないところがいい。

とはいえ標準のヴァリアントより30mm余裕のある160mmの最低地上高、ホイールアーチ部の樹脂のエクステンションなど、オールトラックらしい要素は見逃せない。ホイールサイズは18インチで、245/45 R18 サイズのコンチネンタル・スポーツコンタクト5が組み合わせられており、クロスオーバー車であることを主張する。

さらに今回は2リットルターボディーゼルのTDI(190ps/40.8kgm)を搭載、4WDの駆動システムには専用の“オフロードモード”が設定され、アクセルレスポンスが切り替えられたり、ヒルディセントアシストを効かすなど、文字どおりオールラウンドな走りに対応させている。

◆場所を選ばない大人の走り

実際の走りは落ち着いた大人の味わい……といったところ。車高でヴァリアント+30mmのアイポイントは街中でも周囲の状況をより見やすくしてくれ、狭い場所での取り回しも苦労しない。オンロードはヴァリアントと同等のスムースで快適な走りを提供してくれ、山道でもストレスなしのハンドリングを披露してくれる。ラフロード走行も、足をキチンとストロークさせ、ロードホールディングもしっかり確保しながら安定したもので、路面の凹凸を乗り越える際もボディが音を上げることはなく、高い剛性感も実感できた。

一方でエンジンは、音・振も抑えられ快適性を損なわない。動力性能はゆったりと走らせる際には息の長い加速が味わえる“ノーマル”でよく、ドライバー1名で、少しメリハリのある加減速を楽しみたいなら“スポーツ”モードの切れ味のよさが気持ちよい。

後席の広く快適な居住空間も変わらぬ魅力。639〜1769リットルとの大容量のラゲッジスペースも歴代パサートの美点のひとつだが、床下のもともとフルサイズのスペアタイヤの格納が想定されたスペースも実用的で、しかも鉄板剥き出しではなくフルトリム化され、気持ちよく活用できる点は見逃せない。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

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