ジープ ラングラー スポーツ《撮影 島崎七生人》

◆「古風なクルマ」のイメージだが…

『Gクラス』『ジムニー』と今年はオーセンティックなオフロード4WDのフルモデルチェンジが相次いだ。そこへ真打ち登場とばかりに新型に切り替わったのが、このジープ『ラングラー』である。11年振りの全面改良だ。

意外といっては失礼ながら、ラングラーはジープ全体の販売台数のおよそ4割を占め、市場別では日本が1番売れているのだそう(次いで中国、韓国)。“CJ”を前身とするこのクルマは、今風の“SUV”とは一線を画す超本格オフロード4WDである。

レポーター自身のラングラー初経験は1992年、角目の初代“YJ”だったが、取材で晩秋の信州方面へ行き、寒空のもと、縮んだトップをかじかんだ手で引っ張りホックを止めるのに苦労した(こととスパルタンな乗り味)は、いまでも鮮明に覚えている。乗用車ライクな最近のSUVの感覚からすれば、古風なクルマ……そんなイメージを抱く人も多いのではないだろうか?

が、実車に乗れば、そんなイメージは払拭、上書きされるに違いない。

◆中身は洗練、先進化

スタイリングでいうと、フロントグリルの7本のスロットのうちの左右に丸型ヘッドランプを食い込ませ、これは先祖のCJ5のデザインを引用したもの。子細に見ればフロントスクリーンのフレームのエッジが丸められ、ガラスとの段差もないなど、ゴツいだけでなく各部ディテールは洗練されている。

さらにそのフレームを始め、ドア、ヒンジ、フェンダー、スイングゲートにはアルミを用いるなど、軽量化が行われ、現代的なエンジニアリングも盛り込まれた。さらにブラインドスポットモニター、リヤクロスパスディテクションなど、先進の安全システム、セキュリティ機能も設定する。

インテリアもインパネ、ドアなどはフルトリム化され、洗練された造り。とはいえ横一直線のインパネはYJのオマージュだそうで、最新の他のジープの各モデルと較べれば、デザインのためのデザインは排した、機能的でシンプルな仕上げなのが好ましい。

シートの座り心地、ステアリングやシフト、ペダルといった操作系も今や普通の乗用車と変わらない感触。なおインパネには8.4インチのVGAタッチパネルモニターが備わり(メーター内にも液晶の情報表示を備える)、カーナビやApple CarPlay、Android Autoなどの利用も可能だ。

◆身軽に走り回れている感たっぷり


試乗車は受注生産という、2ドアの「スポーツ」。ラングラーといえば……つい2ドアのこちらを選んでしまうが、何より全長4320mm、ホイールベース2460mmのコンパクトさは、走り出すと何か気持ちが軽く、自由になった気になるもの。少年の心を持った大人向き……と言えようか。

事実、街中、オンロードでの走りはスポーツカーといわないまでも、“身軽に走り回れている感”をたっぷりと味わわせてくれるものだ。搭載エンジンは3.6リットルのV6で284ps/35.4kgmの性能で、これに8速ATの組み合わせだが、発進からスムースで、オンロードならアクセルを僅かに多めに踏み込みながら走れば、気持ちのいいドライブが体験できる。

ステアリングへのキックバックの小ささ、ショーとホイールベースながら不快感のない乗り味、簡素なトップながら低級なノイズを発せず、不満のない静粛性など、2018年に登場しただけのことはある快適性の高さも見逃せない。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

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