マツダ CX-5 改良新型《撮影 中野英幸》

多くの人に愛されている、マツダを代表するクロスオーバーSUVが『CX-5』だ。世界120カ国で発売され、今ではマツダのグローバル販売台数の4分の1を占めるまでに成長した。



2017年2月に初めてのモデルチェンジを実施し、18年3月には初めての商品改良を行っている。このときパワーユニットのアップデートを行い、2.5リットルのガソリンエンジンには気筒休止システムを導入した。

それから7か月後の10月、マツダは再び商品改良モデルを送り出している。最大のニュースは、高速クルージングで余裕を感じるトルクフルな走りのクリーンディーゼルと同じように、ガソリンエンジンにも直噴ターボエンジンを設定したことだ。

新設定された直噴ターボエンジン「SKYACTIVE-G 2.5T」
これまでのガソリンエンジン、「スカイアクティブG 2.5(SKYACTIV-G 2.5)」は、市街地で軽快な走りを特徴とし、扱いやすい。だが、低速からの加速レスポンスに物足りなさを感じたのも事実である。この弱点を解消するために過給ライトサイジングコンセプトで「スカイアクティブG 2.5 T(SKYACTIVE-G 2.5T)」を開発。日本の交通事情に合わせて最適チューニングを施した。

スカイアクティブG 2.5Tは、意のままに操ることができ、上質な走りをさらに進化させた新世代の高効率過給ガソリンエンジンだ。適正なサイズのエンジンに過給機のターボチャージャーを追加し、大排気量の自然吸気エンジンと同等の過渡レスポンスを身につけるとともに、実用域の分厚いトルクを実現した。すでに2016年モデルの北米向け『CX-9』から搭載されているターボで、実績もある。

低速領域の過給能力を高めるために、吸排気系と可変バルブ機構に工夫を凝らし、加速レスポンスと低速域でのトルクを向上させた。 排気容積を最小化するために4-3-2排気システムを採用し、それぞれの排気通路にプライマリーとセカンダリー、2つの通路を設定し、可変バルブを排気マニホールドに設置している。残留ガスが入っているとターボ効果が薄いので流速と流量を高めるなど、吸気行程での掃気効果を向上させ、吸い出し効果を利用するために排気マニホールドには可変バルブを閉状態にするノズルを装備した。



ブローダウン排気の流速によって隣接するシリンダーの残留排気ガスを吸い出し、低速でも速やかにレスポンスするようにしている。この直噴ターボのベースとなっているのは、気筒休止システムと可変バルブタイミング機構を組み込んだ直噴/ミラーサイクル採用のPY-RPS型直列4気筒DOHCエンジンだ。排気量は2488ccと変わらない。その気筒休止システムを省き、三菱製のターボユニットを組み込んだ。日本仕様はサイフに優しいレギュラーガソリン対応としている。

が、最高出力は169kW(230ps)/ 4250rpmと、40psもパワーアップされている。また、最大トルクもディーゼルターボに迫る420Nm(42.8kg-m)/ 2000rpmを達成した。自然吸気エンジンより17.1kg-mも増強された。

低回転域でもトルクフル、高回転域は今一歩
CX-5の直噴ガソリンターボはパンチある加速を披露する。ターボは1000回転台から強く後押しし、気持ちよくスピードを乗せていった。スムースさ、静粛性はディーゼルターボの一歩上をいく。ターボの過給効果は低回転から現れるから低速でもトルクは豊かだ。クールEGRの採用によって不快なノッキングも上手に封じている。アイドリングから少し上の低回転域で多少ともこもり音が発生するが、フレキシブルな走りを見せ、扱いやすい。1500回転も回っていれば、そこからアクセルを踏んでも力強い加速を引き出すことができる。

最近のダウンサイジングターボは、低回転から速やかにパワーとトルクを発生するが、高回転の伸びとパンチ力は今一歩のエンジンが多い。このPY-VPTS型直噴ターボもその例に漏れない。得意とするのは実用域の豊かなトルクだ。アクセルを踏み込むと4500rpmあたりでシフトアップしていく。さすがにディーゼルターボよりは高回転まで回り、マニュアルモードでは5300回転まで引っ張れる。だが、5000回転の手前からパワーとトルクは萎え、元気がない。また、4000回転手前からエンジン音も一気に高まる。



得意とするのは高速クルージングでの追い越しやワインディングロードの走りだ。応答レスポンスは鋭いし、自然吸気エンジンではパンチがなかった2000回転前後のトルクも厚みを増した。高速走行ではキレのいい加速を見せ、クルージング時の静粛性も良好だ。燃費はJC08モードではなく、最新のWLTCで12.6km/リットル(2WD)と発表されている。自然吸気エンジンより2km/リットルほど悪いが、余裕ある動力性能を考えれば納得できる数値だろう。郊外の道や高速走行では、さらなる上乗せを期待できる。

ディーゼルモデルに待望のMT仕様
2.2リットルのディーゼルターボに待望の6速MT車が加えられたのもニュースのひとつだ。シフトストロークはそれなりだが、クラッチは軽くて操作しやすいし、つながりも適切だから気持ちよく変速できた。シンクロも強力だから小気味よく、テンポよくシフトワークを楽しむことができる。また、低速トルクも豊かだから、3速ギアで30km/hの低速走行も無理なくこなした。アテンザの6速MT車よりローギアード化されていることもあり、6速AT車よりレスポンス鋭い加速を見せる。



100km/h巡航時の回転数も6速MT車のほうが低いから燃費の点でも優位に立つ。WLTCモード燃費は6速AT車が19.4km/リットル、これに対し6速MT車は17.4km/リットルだ。ちなみに100km/h巡航の回転数はAT車が約2200回転、これに対し6速MT車は1800回転でクルージングできる。

「GVCプラス」は頼もしい助っ人に
自慢のハンドリングは、新たに採用された「G-ベクタリングコントロール・プラス(GVCプラス)」によって、より安定した車両挙動を実現した。G-ベクタリングコントロールはコーナーでステアリングを切るとエンジンのトルクをわずかに絞り、荷重移動を速やかに行うことによって前輪の接地性を高め、旋回性を高める車両挙動安定の制御だ。これに対しGVCプラスは、コーナーを脱出するときの車両安定性を高めるブレーキ制御で、ステアリングを戻すときに外側の前輪にほんの少しブレーキをかけ、ロールしているときの揺り戻しを減らし、安定方向に導く。

連続するタイトコーナーを走ったときのロールの揺り戻しが減り、挙動の乱れはグッと減っていた。効果がよく分かるのは危険回避のために行うダブルレーンチェンジの場面だ。逆にステアリングを切ったときの揺り返しが減り、リアの接地感も増しているから姿勢が安定し、脱出しやすいのである。滑りやすい路面では、より効果が分かりやすいだろう。頼もしい助っ人の登場である。



また、最新のCX-5はステアリングのスッキリ感が増し、サスペンションの動きも滑らかになったように感じられた。無駄な動きが減り、タイヤの能力も上手に使いきっている。きめ細かいチューニングによって今まで以上に意のままに、気持ちいい走りを楽しめるようになった。外観やインテリアの変更はわずかだ。が、走りの実力は大きくレベルアップしている。ユーザーにとって実のある商品改良であったことが嬉しい。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★

片岡英明│モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員

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