ホンダ PCXハイブリッド《撮影 ダン・アオキ》

16歳の誕生日と共に原付免許を取り、でも、20代はクルマに夢中。アラサーでリターンライダーになるも、40代は仕事に忙殺される。そしてアラフィフで2輪に再々入門。そんな浦島ライダーが、最新のバイクをチェックしていきます!

◆違和感ないハイブリッド

ホンダが放つ、量産二輪車世界初のハイブリッドスクーター『PCXハイブリッド』(受注生産車)。さっそくスロットルグリップを回して走り始めると、「ヒーン」という高周波音とともに滑らかに速度を上げていき……ということはなく、普通に「ブロン!」とエンジンがかかって、シングルシリンダーらしい振動と音を伴って、濃紺のスクーターは加速していく。

感覚の鈍さでは人後に落ちない自分の場合、事前に知らなければ、このバイクがハイブリッドモデルだとはわからないだろう。「エンジンとモーターの協業」に過剰な期待を抱いていた手前、なんだか拍子抜けした感じだ。

でも、その感想は、ある意味ホンダの技術陣が狙ったことでもある。純粋な内燃機関モデルから乗り換えても違和感ないハイブリッド。それが、PCXハイブリッドだから。

◆モーターアシストの持続時間は、約3秒


3代目PCXのいちモデルとして登場したハイブリッドバージョン。そのシステムは、初代PCXから搭載されていた「アイドリングストップ機能」を発展させたものといえる。セルモーターと発電機を一体化させた「ACGスターター」の出力を上げ、アイドリングストップからの復帰(エンジン始動)のみならず、駆動をアシストする機能をも与えたのだ。

125ccとモーターを組み合わせたシステムは、スペースが限られる2輪用らしいシンプルな構成を特徴とする。もちろんシステムを統括制御したりバッテリーを管理するデバイスは必要だが、目に付く追加装備としては、アウトプットが増大したACGに必要な電力を供給するため、シート下後半部分に搭載したリチウムイオンバッテリーくらい。シート下の収納スペースは28リッターから23リッターに減少したけれど、8リッターの燃料タンク容量は変わらない。車重の増加も、5kg増の135kgに抑えられている。

スロットル操作に伴うモーターアシストの持続時間は、約3秒。「短ッ!」と思うかもしれない。でも、試しに自分のバイクやクルマで強めの加速を続けてみてください。3秒って、意外と長くないですか!? ちなみに、PCXハイブリッドの場合、3秒後にいきなりモーターアシストをオフにすると不自然さが残るので、プラス約1秒を使ってアシスト量を徐々に減らす工夫が採られている。細やかな気遣いですね。

◆モーターによるアシストを実感できるか


デジタルメーターを見ると、向かって左に「バッテリー」と「CHARGE/ASSIST」、右に「燃料」が表示される。チラチラと液量画面をチェックしながら運転すると、スロットルを強めに捻るとすかさずASSIST方向に表示が伸びるのがわかる。

PCXハイブリッドのパワープラントが発生する駆動トルクは、124cc単気筒エンジンが1.2kgm、電気モーターのそれが0.44kgm。単純に足すことはできないけれど、150cc版PCXの最大トルクが1.4kgmだから、アシスト稼働時の、ハイブリッドモデルの力強さが想像できよう。でも、「モーターによる助力のありがたさ」を実感できるかというと、うーん、よくわからない……。

そんな鈍いライダー(←自分のことです)には「S」モードですよ。じんわり走り始めたり、逆に全開加速では「D」モードと変わらないけれど、走行中にスロットルを開けると、そのたびに小さな過給機が軽〜く働いたかの速度の伸びを見せる。「天使にやんわり背中を押されるよう」というのは、スイマセン、ちょっとカッコつけすぎました。

Sモードでは、減速時の回生(エネルギー回収)も頻繁に働くようになるので、加速・減速とも強化され、結果的にメリハリある走りになる。それでいて、アシスト/チャージに伴う不自然さが上手に削がれているのは立派。ここは「ホンダの技術陣に拍手!」ですね ハイブリッドシステムの恩恵を貪欲にむさぼりたいなら、迷わず「S」モードです。

説明の順序が逆になりましたが、PCXハイブリッドには、「D(アイドリングストップ有り)」、「S」モード、さらに「D(アイドリングストップなし)」が用意される。左グリップの根本にMODEボタンが設けられ、停止・走行中を問わず、指先で押すことで順に走行モードを切り替えられる。

◆うーん、プレミアム!


PCXハイブリッドの価格は、43万2000円。ノーマルPCXの34万2360円はもとより、150ccバージョンの37万3680円/39万5280円(ABS付き)よりお高い。

ちなみに、PCXのハイブリッドシステムはライドフィールの向上に重点が置かれているため、燃費はノーマルPCXの50.7km/リッター(WMTCモード値)に対し51.9km/リッターと、驚くほどの差はない。だから、PCXハイブリッドを購入する理由は、経済性というより、PCXらしい「プレミアム感の強化」にありましょう。

昨2017年の東京モーターショーで、ホンダはPCXのハイブリッドと併せてELECTLIC(電動モデル)も展示。次世代モーターサイクルの姿を模索している。つまり、受注生産のハイブリッド版をわざわざ注文するということは、それだけ積極的にバイクの進化に手を貸しているということで、そのご褒美が、4輪車と共通の「HYBRID」バッヂと、PCXハイブリッド専用のボディカラーたる「パークダークナイトブルー」というわけ。うーん、プレミアム!

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