ATからDCTへ
かわいいスタイリングで人気の高い『ミニ』がマイナーチェンジされた。BMWとミニブランドは、モジュラーエンジンを展開してコストダウンを行っているが、FF系トランスミッションも共用化を進めるようだ。
今回の改良ポイントは、ガソリンエンジン搭載車のATが従来のトルコン6速から新開発の7速ダブル・クラッチ・トランスミッション(ジョン・クーパー・ワークスは8速AT)に変更された点。ヨーロッパではダイレクトな走行フィールが得られやすい、MTをベースにしたデュアルクラッチが人気だ。ミニではダブルと表現しているがDCTと同じ。
1.5Lターボでも楽しめる
まずはベーシックな1.5リットル直3ツインパワーターボ(136ps)エンジンを搭載する「クーパー」(3ドア)に試乗。ハンドリングはより軽快感が増してコーナーを爽快にクリアできるようになった。このグレードはパドルシフトが装備されていないが、DCTになって快適なシフト操作が可能になった。
そのポイントがオーバル型のシフトレバー。手になじむ形状で、特にダウンシフト時の操作感が気持ちよく、短いストロークのレバーを手のひらで押すと瞬時に変速。パドルシフトもいいが、レバーでシフトするのもドライビングしている実感や爽快感を得やすい。
道幅がやや狭く、勾配もあるワインディングロードを走ったが、DCTのおかげもあって1.5リットル直3ターボでも存分に走りを楽しめた。手に余るようなパワーではなく、シャシー性能が勝っているためパワーを使い切る快感がある。
DCTはアップシフトもダウンシフトも瞬時に行われ満足感が高いが、こうしたやや狭いワインディングではギヤ比がピッタリとこない。2速と3速のギヤ比がもう少しローギヤードであれば、もっと日本のワインディングロードを楽しめるはずだ。
「クーパーS」とDCTの組み合わせは
上級グレードの「クーパーS」(コンバーチブル)に乗り替えると、同じミニとは思えないほどスポーティ。それもそのはずで、2リットル直4直噴ツインパワーターボは192psを発生するため走行モードがノーマルのままでも結構スポーティに走れてしまう。トランスミッションはDCTに変更され、エンジンとの相性もいいようでスムーズにシフトを繰り返す。
モードをスポーツに切り替えてアクセルを踏み込むとコンパクトなボディが弾かれたように前に飛び出す。こちらはパドルシフトが装備されているためステアリングを持ったまま、意のままにシフト操作ができる。フル加速するとあっという間にレッドゾーンに到達するため、パドルシフトの操作タイミングが難しいほど速い。パドルシフトを使って変速したほうがドライビングしている実感を味わいやすいし、加速感にテンポが出て気持ちがいい。
このエンジンとDCTの組み合わせは、かなりスポーティだ。変速が素早いためついつい無駄なシフトを繰り返してしまうほど楽しい。従来のATもスポーティな変速だったが、やはりDCTは切れ味が違ってすっきりしている。以前のモデルとやや違うのは、スポーツモードのダウンシフトでのエキゾースト。前はパンパンという破裂音が混じる演出がかなりあったが、マイナー後はエンジン制御が変更されたのか破裂音の演出は抑えられていた。
192psのパワーをワインディングで楽しむと、クーパーより軽々と加速してコーナーを素早くクリアできる。ミニの持ち味でもあるゴーカートフィーリングはDCTによってさらに楽しくなり、ステアリングの操作どおりにクイックにコーナリングできる。ステアフィールも変更されていて、以前はコーナーの立ち上がりでハンドルを戻すことを意識する必要があったが、マイナー後は戻りも適切になり、保舵力も軽くなったため軽快感が増した。
試乗車の「コンバーチブル クーパーS」は車両価格425万円。それにオプション装備満載のため総額約532万円もしてしまう。ミニとしての魅力はDCT採用によって高まったが、500万円オーバーとなるとほかの選択肢も出てくる。もっともミニファンは、この価格にも納得してしまうのだろうが…。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
丸山 誠|モータージャーナリスト
自動車専門誌やウェブで新車試乗記事、新車解説記事などを執筆。キャンピングカーやキャンピングトレーラーなどにも詳しい。プリウスでキャンピングトレーラーをトーイングしている。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員
【MINI 新型試乗】DCT搭載でミニの魅力はさらに高まった…丸山誠
2018年09月07日(金) 21時00分
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