試乗時はあいにくの雨だった。が、そのことをまったく意に介さない……というばかりか、雨さえも味方につけて、懐の深い走りとじっくりと向き合わせてくれた。『6シリーズ グランツーリスモ』の風格たるや然もありなん、である。
価格設定でみると、クーペ、グランクーペ、カブリオレ(と各々のM6モデル)を上位に据えた位置づけ。とはいえ1000万円超の高級車であることは変わりない。しかもホイールベースはシリーズ内のグランクーペよりさらに100mm長く、『7シリーズ』の標準ボディと共通の3070mm。冒頭で触れた印象の裏付けになっていそうだが、ラグジュアリー度にかけてBMWのトップレベルといえる。
ボディ形状はサッシュレス4枚ドア+ハッチバックで、“クーペスタイル”の常套句が当てはまる今どきのスタイリングだ。サイドウインド後端の形状は解釈が新しいが“ホフマイスター・キンク”の一種なのだそう。全長×全幅は5105mm×1900mmだと実は試乗後に知ったが、事実上7シリーズ相当ながら軽やかな身のこなしでサイズ感を意識させられないのは、BMWの他の上級モデルと同じだ。
ダコタレザーの厚みある風合いが心地いいレザーシートの備わる室内は、奇をてらわないBMWの文法どおりに仕上げられたもの。インパネ中央には、各種機能の表示がなされる自立式コントロールディスプレイが備わる。それと「なるほど」と思わせられるのが後席で、足元の広さは想像に難くないが、着姿勢での頭上の余裕と豊かなシートサイズなのは6シリーズならではというより、ほぼ7シリーズといった快適さだ。
そして走り。走行モードを切り替えればスポーティな振るまいも魅せるが、個人的にはノーマル状態のしっとりとしたステアリングフィールがいいと思った。同時に4輪アダプティブエアサスペンションの威力は絶大で、路面状況や走行シーンにかかわらず、BMWらしい身のこなしを、ため息が出るほどの神経を逆撫でしない最上級のなめらかな乗り味とともに味わわせてくれる。
搭載エンジンは3リットルの直6ツインパワーターボで、340ps/450Nmの性能を持つ。常に十二分な余力を残してクルマを走らせる……そんな印象だ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。
【BMW 6シリーズ グランツーリスモ 試乗】ため息を誘うステアリングフィールと乗り味…島崎七生人
2018年08月28日(火) 19時00分
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