アウディ 技術開発担当取締役 ペーター・メルテンス氏(フランクフルトモーターショー2017)《撮影 関 航介》

9月12日に開幕したフランクフルトモーターショーにおいて、プレミアムブランドであるアウディが出展。自動運転のコンセプトカー2台をワールドプレミアした。2025年までに売り上げの3分の1を電気自動車(EV、PHV)にするというアウディ。今回は、技術開発担当取締役のペーター・メルテンス氏に話を聞く機会を得た。

上述したように、ラインナップの電動化を急速に推し進めるアウディ。内燃機関のエンジニアたちについては「まだまだ仕事がなくなるようなことはない」と断言するメルテンス氏。「2025年までに3分の1は電気自動車(EV、PHV)になるが、その他のクルマはガソリン、天然ガス、軽油を燃料とするエンジンを使ったクルマになる。電動化は進めて行くが、引き続き仕事はたくさんある」ということだ。

電動化によるブランドの差別化について聞かれると「もちろんアウディはスポーティなブランドなので、今持ってる要素は電気自動車になっても保持していきたい」と語る。「来年『e-tron』というEVを発売する予定だが、このe-tronでもアウディブランドのデザインや快適性、高品質を保っていく」と、ブランドの持つ要素は変わらないことを強調した。

フランクフルトショーで公開された新型『A8』では、初のレベル3自動運転を搭載する。「高速道路のみ、60km/h以下」という制限はあるものの、アウディにおける自動運転開発において大きな一歩であることに変わりはない。

「次はレベル4に飛躍する、ということはなく、まずはレベル3をさらに拡張して行くという開発になると思う」と今後の方向性を語るメルテンス氏。「今のクルマ(A8)を東京に持って行ってすぐ走らせられるかというと、そんな簡単なものではない。ですからこれをベースに、まずは速度制限を80、100、120km/hと少しずつ上げていきたい。それを実現した先にあるのが、今回発表した『エレーヌ』だ」と、今回発表されたA8とコンセプトカーの繋がりを明かした。

同じく発表された『AICON(アイコン)』については「これはレベル5。ステアリングホイールもアクセルもブレーキもない完全な自動運転車。しかし実現には10年以上の時間がかかるだろう」と、まだまだ時間がかかることを認めながらも「ただ、それに向けての貴重な基盤を、今回発表できたと思っている」と、自動運転開発におけるA8の重要性を語った。

また、自動運転の進歩にAI(人工知能)が欠かせないことも強調する。「レベルが上がるに従って、システムがより複雑になってくる。そうするとAIの助けが必要だ。ディープラーニングという言葉があるが、人間の手で全ての状況に沿ったルールを設定するのは不可能。体験から自ら学んでいくという能力を活用しないと、完全自動運転の実現は難しいだろう」と、AIが今後大きな役割を果たして行くと述べた。

アウディ 技術開発担当取締役 ペーター・メルテンス氏(フランクフルトモーターショー2017)《撮影 関 航介》 アウディ・エレーヌ アウディ AICON(フランクフルトモータショー2017)《撮影 佐藤靖彦》