レクサス LC500h《撮影 島崎七生人》

試乗車『LC500h』のメーカー希望車両本体価格は1350万円。実車に接してまず思ったのは、価格度外視で「1台もらおう」といえる人生を送ってくるべき(そういえる人間になっているべき)だった…ということである。

試乗後ずっと考えてきたことだが、『LC』で強く感じたのは、日本車では久しく感じなかった作り手のピュアな“志”が宿っている…ということ。熱意、自信と置き換えてもいいが、すべての開発エンジニアにとっても“自分で欲しいクルマ”に仕上がったに違いない。実際には1日に50台にも満たない生産ペースだから、当面は顧客に届けられる分で精一杯だろうが、自分でも乗らずにはいられない関係者は大勢いることだろう。

とにかく走りが気持ちいい。タイヤノイズ、振動、共鳴の少なさは驚異的で、サスペンションのしなやかな動き、乗り味もよく、それでいてワインディングもしっかりとラインをトレースしながら、自然な身のこなしで走り切る。新設計の懐の深いサスペンションだからこそ、21インチサイズの扁平タイヤも履きこなしている。

V8の豪快なサウンド、パワーフィールも手応えが十分。だがそれ以上に、3.5リットルのV6とモーターを組み合わせたハイブリッドも納得のいく仕上がりぶりで、自然で十分なパワー感と、折々でEV走行も可能な洗練された印象が『LC』に相応しい。『GT-R』『NSX』あるいは『LFA』といったスーパースポーツと違い、一般道を思いのままのペースで流すように走らせても気持ちが癒される。何か神経を逆撫でする要因がないこともこのクルマの魅力だ。

外観スタイルは(スピンドルグリルと一部のディテールを除き)控えめですらあるが、フォルムがキレイでいい。フラットなアウターレンズの奥に光るミステリアスなテールランプなど、おや!?と目を惹く要素もちりばめられている。インテリアはアナログ時計の位置がどうかな?と思えるくらいで、奇抜なデザインに圧倒されるようなことがなく、スッと乗り込め、居心地もいい。

もちろん後席は本来的に着ていたジャケットの置き場で、試しに乗り込んでみると当然ながらスペースは限られていた。と、そこで運転免許を取った頃に友人が意気揚々と乗って来た『セリカLB』の後席に乗せられたことを思い出した。そういう世代のクルマ好きも今はいい大人だが、輸入車からまた戻ってみようか…そう思わせてくれる存在感も『LC』にはあると思う。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

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