
『ヴェラール』の登場は2017年のこと。レンジローバー・シリーズでは『レンジローバー』(1970年)、『スポーツ』(2005年)、『イヴォーク』(2011年)に次ぐ4番目のモデルとして設定された。
試乗車は2024年から受注開始された2026年モデルの「P440e」の最上位グレード「AUTOBIOGRAPHY(オートバイオグラフィー)」で、2リットルの直列4気筒の「インジニウム」ターボチャージドガソリンエンジンに電気モーター(105kW)を組み合わせたPHEVモデル。
試乗車を借り受けた時点での車載のスペックシートによれば、メーカー希望小売価格が1208万円、これに総額219万6280円(+ドライブレコーダー6万280円)が加算された状態のクルマだった。
◆堂々たるサイズでも威圧感ないスタイリングおそらく筆者にとってこれまで未試乗だったこのヴェラール、世の中にはすでにたくさんのオーナーがおられるだろうが、改めて接してみると「ああ、紛うことなくレンジローバーだな」と思わせられるものだった。
ボディサイズは全長4820mm×全幅1930mm×全高1685mm、ホイールベース2875mmと、最上位のレンジローバー、同・スポーツから見て順当に3番目の大きさ。ただし全高はレンジローバー(1870mm)より185mmも低く、このことが、独特のフラッシュサーフェスのスタイルを引き立てている。
豊かなボディサイズだが決して他に誇示するような威圧感がないのは他のSUVとは一線を画すところ。イギリスのジェントルでアンダーステートメントな精神が息づいていることを強く実感する。
◆ひけらかさず、されど心地よく上質なインテリアひけらかさないということではインテリアもそうだ。途中のマイナーチェンジを経た現在のモデルは、センターコンソールにはシフトレバーがポツンとひとつ備わるだけで、そこからインパネ全体を見渡しても、あくまでシンプルでクリーンな雰囲気。
クロームや艶のあるブラックの加飾が施されているが、飾り立てるというより、気の利いたアクセントのために使われている。資料にはAUTOBIOGRAPHYのシートはエクステンデットウィンザーレザーシートとあるが、シート、インパネ、ステアリングホイール、トリム類の上品なグレーの色づかい、上質さは実に心地いい。
後席は頭上空間はまったく問題なく、クッションは案外と硬めの感触ながら、座面前端のR形状と全体のシェイプが身体にフィットする。クッションの無用は沈み込みがない分、シュン(乗り心地・NVH評価担当の我が家の柴犬)も安定した姿勢を保って乗っていられたようだ。厚みのあるドアの閉じ音はしずかでタンッ!と短く減衰する。
◆「レンジローバーらしい」走りそして走りもまたジェントルなもの。レンジローバーとしてはフロントピラーの傾斜はイヴォーク的だが、視界自体は広く見晴らしがいい。そして走りは最近のPHEVらしく実にスムースで、ハイブリッドの理屈っぽさがまったくなく、加減速を含め自然なドライバビリティなのがいい。
場面を問わず静粛性も高い。乗り味はコイルサスペンションながら、レンジローバーらしくしなやかでゆったりしたもの。穏やかなステアリングフィールもレンジローバーらしいところ。ふと気がつくと、充足した気分で一般道を法定速度で流している……そんなクルマった。
■5つ星評価パッケージング:★★★★★インテリア/居住性:★★★★★パワーソース:★★★★★フットワーク:★★★★★オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。




















