フィアット 500X SPORT《写真撮影 島崎七生人》

犬の散歩で我が家の前を通りがかったボストンテリアの飼い主さんに「随分大きく“500”って書いてあるけど、島崎さんのクルマ(=500のツインエア)とは違うの?」と訊かれ、「同じ(フィアット)ですが(車種は)違います」と答えた。500のロゴは、相当目立つらしい。

ご存知のとおりフィアット『500X』は、ジープ『レネゲード』とプラットフォームを共有して誕生。日本市場には2015年から導入開始し、2022年11月のマイナーチェンジで、『500e』などと共通の、現在の500のロゴをフロントに大きくあしらったデザインに切り替わった。ボディサイズの差のせいか、500eよりはだいぶ見慣れてきた……といったところか。

試乗車は“SPORT(スポーツ)”と呼ぶ仕様で、外観では専用の前後バンパー、ボディ同色のホイールアーチ、サイドスカートを装着するほか、度ミラーハウジング、ドアハンドルなどがダークグレー仕上げとなる。それと18インチの10本スポークアルミホイールと225/45R18 95Yタイヤ(試乗車はグッドイヤー・イーグルF1)を標準とする。印象としてはSUVというより、オンロードのスポーツモデルの趣が強い。

インテリアではステアリングホイール(のリムの一部分)やメーターフードにアルカンターラが用いられる。後者はまるでアバルト500系のようで、ただの500オーナーの筆者は小さく「おぉ!」と声を上げてしまった。

実用性も十分。とくに後席は頭上空間がしっかり取ってあり、窓からの外の視界も広く快適に過ごせる。私物のフィアット純正シートカバーを使い、乗り心地評価担当の我が家のシュン(柴犬・オス・2歳)を乗せてみたが、柴犬としてはやや大柄で体重が15kg弱あるせいか、人が座った時と同様に収まりのいい着座感が味わえたようだ。

走りは闊達(かったつ)な部類。実は試乗車を受け取った直後は走行5000km足らずの個体だったせいか、サスペンションの締め上げられ具合に「おっ!?」と思わされたが(指定タイヤ空気圧は240kPa)、走らせるに連れ、ハンドリングも含め小気味よさを感じるようになった。1.3リットルの4気筒マルチエア16バルブ・インタークーラー付きエンジン(151ps/27.5kgf・m)の性能を無駄なく引き出せる6速デュアルクラッチの変速もキレ味がよく、グレード名どおりのスポーティな味わいが楽しめる。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

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