曲がる太陽電池」を貼り付けたEV《写真提供 PXP》

PXPは、独自開発した「曲がる太陽電池」を搭載した電気自動車(EV)の実証モデルを完成させ、1月24日から26日にかけて東京ビッグサイトで開催される「第16回オートモーティブワールド」(オートモーティブワールド2024)に出展する。

「曲がる太陽電池」は極薄の金属箔基板を使用し、軽EV(三菱『i-MiEV』)のルーフ上に2.0平方メートルの面積にわたって332枚が貼り付けられている。太陽電池モジュールは、総厚0.7mm、平方メートルあたり重量1.0kgという軽量設計だ。

PXPでは、ペロブスカイト材料とカルコパイライト材料のタンデム構造を用いた、高効率な「曲がる太陽電池」を研究しているが、実証EVはカルコパイライト材料を用いて検証を行なう。生産設備のパイロットラインの立ち上げが完了次第、変換効率18%前後のカルコパイライト太陽電池を再搭載し、本格的に実発電量データを取得する予定だ。

また「曲がる太陽電池」では漆黒のセルが実現した。普通のセルでは、黒い太陽電池の表面に白い櫛状電極が形成されているため、意匠性がやや劣っている。「曲がる太陽電池」では車のルーフとの一体感が増し、デザインを損なうことなく太陽電池を搭載できる。

柔軟性に優れた「曲がる太陽電池」の採用により、ルーフの曲率が大きな外周領域まで設置ができ、変換効率18%前後でも十分な発電量を確保できるようになった。

最高技術責任者の杉本広紀氏は、2.0平方メートルの狭いルーフのEVに変換効率18%の太陽電池を搭載した場合でも、太陽光による発電量だけで1日16km走行可能となるという。また太陽電池をタンデム化して変換効率が28%になれば、1日37km走行可能だという。太陽電池を搭載したEVが経済的にメリットのあるコストで導入されることで、普及の加速が期待される。

2020年に設立されたPXPは、ソーラーパネルのデバイス研究と量産技術開発に経験を持つ技術者が集まるグリーンテック開発のスタートアップだ。ペロブスカイト/カルコパイライトのタンデム構造を用いたソーラーパネルや、全固体電池一体型ソーラーパネルを研究開発している。

高意匠セル(上)と標準セル(下)《画像提供 PXP》 搭載可能面積と必要変換効率との関係《画像提供 PXP》