ボルボ XC40 リチャージ《写真撮影 中村孝仁》

◆一度決めたらとことんそれに向かうブランド
1980年代から4台のボルボを乗り継いだ経験を持つ筆者。ボルボというブランドをそれなりに知っているつもりだが、それにしてもこのメーカーのやることは極端だ。

その昔(と言っても1960年代)、スポーツカーは危険だから作らない!と宣言して以降ボルボはスポーツカーを作っていない。その時代からクルマのスタイリングは四角四面でごつごつ感の強いものだったが、理由は「横風に対して強みを持つから」だった。3点式シートベルトの採用やラムダセンサーの採用(ボルボはラムダゾンドと呼んでいた記憶があるが)、横方向からの衝突に対処したSIPSの採用等々、書き始めたらきりがないほど新しいことに挑戦したり、頑なな姿勢を崩さない頑固さを持つブランドである。

そんなブランドが今、電気自動車(BEV)に夢中である。というか電気自動車メーカーになると宣言している。そういえば1998年には「時代は燃料電池だ」といってフォードと合併したが、あれは失敗だった。ボルボの電気自動車化がどのくらい進んでいるかというと、日本国内でもすでに10%を超える電気自動車の販売実績を上げている。日本の電気自動車比率は2022年にたったの0.22%だそうだから、ボルボの比率はとんでもなく高い。

そのトップランナーともいえるモデルとして登場したのが『XC40リチャージ』である。ボルボが言うには2025年までに世界販売の50%を電気自動車にし、2030年には完全電気自動車メーカーになるという。一度こうと決めたらとことんそれに向かう姿勢が常に鮮明なブランド、それがボルボだと思う。

◆後輪駆動に変わったメリットとは
XC40リチャージは2023年の登場時は前後にモーターを搭載したツインモーターAWD(全輪駆動)も存在した。それが2024年はリアのみのシングルモーター仕様のみとなって再登場。一見後退したかの印象ではあるし、性能的にシングルモーターだと劣ると感じていたが、あにはからんや、150kg軽いことを活かしてか、駿足を誇る。モーターはリアだけ、つまりRWD(後輪駆動)である。RWDのボルボは恐らく「940」以来だろう。まあ、RWDになったメリットも少し感じられた。

それは微速で走る時の操舵感覚が駆動を司っていないことから非常にナイーブというかスムーズな印象が得られたことだ。そんなわけだからシングルモーターになったネガ要素は正直言うと全く感じなかった。

それにしてもドアを開けてドライバーズシートに着座した途端に既に電源が入り、後はシフトレバーをドライブ側に倒しアクセルを踏むだけ。これで発進可能というのはやはり慣れるまでにかなり時間がかかる。それに、写真を撮る際に後席に移動すると電源が落ちてしまうのでインパネがブラックアウトしてしまうのは困りものだったが、まあユーザーには無関係である。

◆環境に対するこだわりも徹底している
冒頭にやることが極端だと書いたが、安全はもとより環境に対する強いこだわりがあるのもボルボの特徴で、XC40では100%レザーフリーの室内空間を作り上げている。えっ?ステアリングもレザーじゃないの?と聞いたところ、フェイクレザーで作っているそうだが、その感触はレザーであることを全く疑わないほどである。それにカーペット素材も100%リサイクル素材を使うなど、本当にこのメーカーのやることは徹底している。インパネにはスウェーデン・アビスコ国立公園の山々を等高線で表現した模様を映し出している。夜になるとくっきりと等高線が表示されてなかなかユニークである。

その昔、高級車と言えばウッドパネルに本革内装と相場は決まっていたが、どうもそうした要素は希薄になり、新たな高級車感を今構築している最中なのだと思う。たとえばメルセデスなどはダッシュをすべてディスプレイにする方向に傾いているようで、ウッドパネルが懐かしい。

だいたい満充電で400km程度走れる。一応WLTCモードでは590kmとなっているが、丸々一昼夜充電して100%充電完了としたところで410kmの表示が精いっぱいであった。とはいえ、なんとなく日常的には十分。まだ“BEV幼稚園程度”の経験しかない筆者にはとても無理だが、同業のBEVエキスパートは可能走行距離ゼロも試したことがあるそうで、ゼロでも走るというのだが、チキンな私にはとてもそんなことは試せない。呼び出せばすぐに近場の充電施設を案内してくれるナビがあるのでまあ心配なさそうだが、クルマの良さは解っていても一抹の不安が常に付きまとう。まあ、クルマのせいではない。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来46年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

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