イベント最終日にはジャパンモビリティショー大反省会が開催され、この様子は配信も行なわれた。《写真提供 日本自動車工業会》

日本自動車工業会の会長でありトヨタ自動車の会長でもある豊田章男氏と、タレントのマツコ・デラックスが11月5日、ジャパンモビリティショー2023会場内で『ジャパンモビリティショー大反省会』と題したトークイベントを開催した。

◆100万人規模で人が集まるイベントはふたつしかない
今回開催されたジャパンモビリティショーは、『東京モーターショー』を前身として1954年から開催されてきた。今回で47回目となる長い歴史を持つイベントだが、モーターショーは近年、世界中で来場者数が減っていた。そこで豊田豊田会長は、「何とかしなきゃいけない」と4年ほど前から改革を考え始め、まずは何をやってもいいので、とにかく一度多くの人を集めてみるという目標を立て、前回の東京モーターショーでは約130万人を集めた。ちなみに日本において100万人規模で人が集まるイベントはふたつしかなく、ひとつは夏の甲子園。そしてもうひとつがこのジャパンモビリティショーだ。

豊田会長いわく、今回のモビリティショーは、「一緒に未来づくりに参加する人を集めよう」というコンセプトで開催したとのこと。その結果、オートサロン系の車大好き運転大好きな人たちはもちろん、ベンチャー企業や自動車以外のメーカーなど、さまざまな人が集まった。とくに注目なのは、多くのスタートアップ企業も参加できたということ。ベンチャー企業1社が、100万人に対してプレゼンできる機会はほぼないので、今回集まった100社近いベンチャー企業は貴重な経験ができたのではないかと考えられる。

◆スタートアップには最適な場所だったジャパンモビリティショー
今まで日本のモーターショーでは、『ワールドプレミア』と呼ばれ、世界で初めてこの新車を発表しますといった、初披露イベントが行なわれてきた。しかし昨今、それだけでは引きが弱く集客ができるわけでも無くなっていた。たとえば、タイ(バンコク)のモーターショーでは会場内で車を売ってよいというルールがある。そこで豊田会長は、ジャパンモビリティショーならではのことはなにかをスタッフと一緒に考えたとのこと。

そのひとつが「モビリティの社会で未来を作っていくために、日本で活躍をしているスタートアップ企業と投資家のマッチング」。会場内には「スタートアップフューチャーファクトリー」と名付けられた、スタートアップが集まるエリアが用意され、この期間中、大企業側と商談したいといった案件が430件以上集まったとのこと。また5つのテーマに分けたビジネスマッチングでは、次の打ち合わせが決定している案件が130件と大きな成果が出ている。

マツコ・デラックスさんは、今回のイベントについて以下のように語っている。「日本自動車工業会のいろいろお仕事させて頂くようになって、モーターショーの時代も経験させてもらったが、今回モビリティショーに変わったことで、名前だけではなく雰囲気も大きく変わった。名前が変わっただけじゃ無いと感じた」。

◆未来の東京は四足歩行がキーワード?
ジャパンモビリティショーは、東館ではひとつのメーカーがひとつのブースを出展しているが、西館では「さまざまな会社が連携すると、未来の東京がどなうなるか?」を表現しているブースとなっている。その中でおもしろいのが、4足歩行のモビリティだ。

豊田会長が興味を持って試乗したのは、大阪に本社がありジェットコースターの製造などを手がける「三精テクノロジーズ」が公開した『SR-02』。華々しくデビューと言いたいところだが、メーカーはメンテナンスにかなり苦慮したとの話がある。来場者が多かったことで、コントローラーとの通信不具合が発生。多人数の街中での実証実験が思わぬ形で行なわれた結果となった。マツコ・デラックスに試乗の感想を聞かれた豊田会長は、ラクダみたいな乗り心地だったと表現。すかさず「ラクダに乗ったこと無いからよくわからない」とツッコまれていた。今回出展した新規参入メーカーの技術者からは、普段技術者同士や関係者としか話さないため、一般のお客さんのフィードバックがもらえることは、新鮮でありがたいといった意見もあったという。

◆子どもたちが大人を見て「いいな」と思える社会を作ることが未来を作るという事
西館には壁一面にイラストが描かれたコーナーがある。これは来場者にどんな未来を感じたかを文章で書いてもらい、それをイラストレーターがイラスト化するといった一風変わった企画。中には、トイレの中で釣りができるみたいなものもあったとのことで、豊田会長は、「子どもにとっては便器の中の水は池に見えるのかもしれない」と発想の豊かさに驚いていた。

またイラストがたくさん描かれた壁を前に涙ぐんでいたおばあさんもいたとのこと。マツコ・デラックスはその話を聞き、「今までさまざまなものを見てきたおばあさんだからこそ、子どもたちの描く未来を見ながら、心が熱くなったのではないか」と感心していた。

◆豊田会長が一番よかったクルマは意外なアレだった?
マツコ・デラックスさんに、今回のショーの中で一番気になったクルマを聞かれた豊田会長は、しばらく悩んだ末「トミカ」と答えていた。トミカは夢があり自分で走らせて遊べることが素晴らしいとのこと。またキッザニアについても触れ、世の中、カーボンニュートラルでBEVにするという話で持ちきりの中、エンジンの組み立てを子どもに経験させるという試みはおもしろいと語った。

豊田章男自動車工業会会長。《写真提供 日本自動車工業会》 タレントのマツコ・デラックスさん。《写真提供 日本自動車工業会》 スタッフが急に壇上に呼ばれ、あたふたする場面も。《写真提供 日本自動車工業会》 自動車工業会のスタッフも壇上に急遽呼ばれ、台本なしで一緒に進行させられる羽目に。《写真提供 日本自動車工業会》 ジャパンモビリティショー西館エリア。《写真提供 日本自動車工業会》 ジャパンモビリティショー西館エリア。《写真提供 日本自動車工業会》 スタートアップフューチャーファクトリーと名付けられた、スタートアップが集まるエリアも設置。《写真提供 日本自動車工業会》 スタートアップ15社で競われたピッチのコンテスト「Startup Future Factory Business Pitch Contest & Award」では、タクシーのシェアサービスを展開する株式会社NearMeがグランプリとなり賞金1000万円を獲得した。《写真提供 日本自動車工業会》 未来掲示板は、来場者が文章にした未来像を、イラストレーターがイラストにして壁に描いていくといった新しい試み。《写真提供 日本自動車工業会》 未来掲示板には大人には到底思いつかない、子どもたちの考える未来もたくさん描かれていた。おばあちゃんのエピソードは涙を誘う。《写真提供 日本自動車工業会》 勝手に充電されてずっと走るEV、自動潜水艇、空飛ぶボート、夏でも涼しい道路など、夢のある未来像がたくさん描かれていた。《写真提供 日本自動車工業会》 子どもから大人まで楽しくなるトミカブース。《写真提供 日本自動車工業会》 キッザニアのダイハツブース。エンジンの組み立てを行なっている。《写真提供 日本自動車工業会》 子どもたちが真剣な眼差しでお話を聞いているのが印象的。《写真提供 日本自動車工業会》 日産のブースではエンジンの構造を学んでいた。《写真提供 日本自動車工業会》