ロイヤルエンフィールド ハンター350《写真提供 ロイヤルエンフィールド》

ロイヤルエンフィールドが2022年8月に発表した『ハンター350』。発売後半年足らずで10万台以上のセールスを記録し、世界的なヒットへ至った。ハイテクマシンが多く登場する今日において、異色な存在ともいえるハンター350を今回、試乗してきた。

◆こういうスタイルが好きなんだ!
「オートバイって、シンプルなほど良いんだよなぁ」というライダーは少なくない。空冷エンジンが水冷化されたときも、フレームが鉄からアルミになったときも、キャブレターがインジェクション化されたときもアナログ派はそう言って嘆いてきた。昨今では電子制御が進化し、新車はABSやCBSが義務化され、トラクションコントロールや出力特性を切り替えることのできるライドモードも多くのモデルが搭載。スマートフォンとリンクするモデルも珍しくなくなっているし、前走車との車間距離を保つアダプティブ・クルーズコントロールを搭載するハイテクマシンまで登場している。

しかしどうだ、ロイヤルエンフィールドのハンター350はシンプルそのもので、特別な装備はなにもない。丸いヘッドライトに一眼メーター、オーソドックスなティアドロップ型の燃料タンクに空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒エンジン。リヤサスはツインショックと昔ながらのスタイルで、「こういうのが欲しかった」という歓喜の声が聞こえてきそうではないか。

普通二輪免許で乗れるアンダー400。このクラスには空冷シングルのロングセラーであり大横綱であるヤマハ『SR400』があったものの、環境規制が影響し惜しまれつつ絶版となっていることもあり、ハンター350は注目の1台と言えるだろう。

◆見た目にも美しい直立単気筒エンジン
始動はセルスターターで一発。シングルエンジンの直立したシリンダーには冷却フィンが刻まれ、クランクケースカバーは丸みを帯びている。1本しかないエキパイは短く膨らむサイレンサーにつながって、歯切れのよいサウンドを奏でるからたまらない。走らせれば、低回転域から充分にトルクがあり、気持ちよく吹け上がっていく。

最高出力20ps/6100rpmというスペックの数値だけを見れば非力さを想像してしまうが、街乗りで使う常用回転域で力不足を感じることはない。バランサーシャフトによって不快な振動は低減され、丸みのあるバイブレーションを感じつつ高回転までスムーズかつ力強く回って速度を上げていく。軽やかに加速し、身のこなしは俊敏。

ロングストロークエンジンの味わい深さを堪能しつつ、ノンビリゆったりと流すつもりだったが、元気ハツラツとした出力特性に加え、シャープなハンドリングでキビキビ走り、ロードスター的なキャラクターを持っているからアクセルは大きく開けがちになる。

プラットフォームを共通とした『メテオ350』や『クラシック350』をロイヤルエンフィールドは同クラスに兄弟車としてラインナップするが、ハンター350では前後17インチの足回りを唯一採用し、ホイールベースも短縮化。車体重量を10kg以上も軽くし、差別化が巧みに図られているのは見事としか言いようがない。

◆レトロスタイルだが決してローテクではない
冒頭で特別な装備はなにもないと書いたものの、それは見た目のハナシで決してローテクではない。アナログ時代をオマージュしたレトロスタイルのメーターは、デジタルディスプレイを備え、「トリッパー」と呼ぶ独自のナビゲーションシステムに対応。USBポートも装備し、モバイルデバイスの充電も可能としている。

チューブレスタイヤを履くホイールは軽量高剛性なアルミキャスト製だし、フロント300mm径、リア270mm径のディスクブレーキにはデュアルチャンネルのABSが備わる。もちろん吸気機構は、フューエルインジェクションだ。

◆相棒と対話するかのように
ただし、電子制御に頼ることはせず、名門ハリス・パフォーマンス社との共同開発によるフレームと、同社の空冷単気筒エンジンだけで秀逸なバランスに仕上げられている。ハンター350は2022年8月に発表され、発売後半年足らずで10万台以上のセールスを記録し、世界的なヒットへ至ったが、そのワケは乗れば納得がいく。

レトロムードの中に現代の技術を取り入れつつ、アナログのぬくもりや心地よさを直感的にライダーへ伝えていて、オートバイと対話して走るような楽しさがそこにはある。それはロイヤルエンフィールドの長きにわたるモーターサイクルの開発で培われたもので、近年の驚異的とも言える世界での販売実績がその実力を示している。

レトロ風でシンプルであるなど、多くのライダーが求めている要素が数多く盛り込まれ、開発チームが市場の要求を熟知していることがわかるのだ。今後、日本でも着実とファンを増やしていくことは間違いないだろう。

■5つ星評価
パワーソース:★★★★★
ハンドリング:★★★★
扱いやすさ:★★★★
快適性:★★★
オススメ度:★★★★

青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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