ITS世界会議ロサンゼルス2022に出展したパナソニック《写真撮影 会田肇》

パナソニックはオートモーティブシステムズやパナソニックコネクトなどと共に、2022年9月18日から22日までロサンゼルス・コンベンションセンター(LACC)で開催されている「第28回ITS世界会議2022」に出展した。

パナソニックはグループ全体で、車載端末から交通インフラまで幅広くITS事業に取り組んで来ており、特に交通事故の防止などの安全への追求だけでなく、環境分野への貢献に向けた技術開発や取り組みを進めているところでもある。この日はパナソニック オートモーティブシステムズで取締役副社長執行役員をつとめる水山正重氏に案内していただいた。

◆2050年、カーボンニュートラル実現に向けた“Panasonic GREEN IMPACT”
パナソニックが取り組んでいる目標として水山氏は、「グループ全体で“Panasonic GREEN IMPACT”を掲げ、カーボンニュートラルに向けた同グループとしての取り組みを大きく打ち出している。地球全体の二酸化炭素の排出量は2019年で年間 336億トン(出典:IEA)あるとされ、そのうちの1%の削減を2050年までに実現することが目標だ」と述べた。

その中には、その材料や商品などのサプライチェーンから製造に関わる工場で発生する二酸化炭素だけにとどまらず、さらには製品を使った際の省エネ効果を上げることでその削減効果を狙う。「“1%”というとその数値は小さく感じられるが、多くの企業が世界中にある中でこの数値の貢献度はかなり大きい」と水山氏は話す。

パナソニックとして、この取り組みをITSに絡めることで、たとえば、渋滞の解消を進めれば、それはエネルギーロスの解消にもつながるわけで、これもカーボンニュートラルに向けた効果として捉えられる。「今回の出展ではこうした構想を出展全体で捉え、パナソニックの目指す方向性を打ち出している」(水山氏)というわけだ。

●高出力対応EV用車載充電システム
そうした中でパナソニックがもっとも力を入れているのが、ユーザの充電時間短縮による利便性向上に向けたxEV用車載充電システムの取り組み「On Board Charging system for xEV」である。EVにとって車載充電システムは不可欠であって、その使い勝手を考えれば短時間で充電を行わなければならない。そこで肝となるのが11kWを超える高出力対応の車載充電システムだ。

水山氏によれば「弊社は最高22kWの高出力対応の充電システムを欧州プレミアムカー向けに量産提供中だ。11kWを超える充電システムを提供できているのは弊社以外にもう1社しかない」という。特に要となっているのが「筐体のコンパクトさで、これを実現するには効率的な放熱やエネルギーロス軽減が欠かせない。パナソニックはこれを実現した上で、欧州車メーカーのより高電圧化への求めに対しても応えていく予定」(水山氏)という、

●「Drowsiness Estimation and Cognitive Distraction Detection」
ドライバーをモニタリングして交通安全に役立てていこうというもので、人間研究のノウハウを生かした眠気推定と漫然状態検出により、交通事故削減に貢献する取り組みとして出展された。これはカメラによる人の状態を検知するものだが、「人の研究してよく知る、人が何をしているのかを知るとことでいろんなセンシングで捉えられるようにする。それが快適や安心に役立つ。これをグループ一丸となって取り組み、自動車の新たなソリューションとして提供していきたい」(水山氏)とした。

●「Connected Intersection toward Beyond 5G/6G era」
5G後を見据えたマルチアクセス無線ネットワークにより、交差点での安全性を高める技術。ワイヤレスLANの中にミリ波を使った技術があるが、セルラーV2Xを併用する形でより大容量の伝送を実現する。モビリティが必要な高精度地図や映像情報をリアルタイムに共有することができる。

●「Cirrus by Panasonic Connected Intersections」
北米における取り組みとして紹介された。この取り組みでは、次世代コネクテッドビークル技術を活用し、クラウドをベースにした交差点アプリケーションを研究している。信号を最適にコントロールすることで、クルマの流れをスムーズにしたり、緊急車をスケジュール通りに現場へ到着できるようにする取り組みで、これは現在、アメリカ運輸省と共に研究を進めているところだ。また、「Connected Intersection toward Beyond 5G/6G era」とは補完的に働かせられることも見逃せない。

●「Augmented Reality Head Up Display Simulation Tool」
AR-HUD(拡張現実ヘッドアップディスプレイ)による早期に効率よく課題を特定し、解決するツール。実際の風景や周辺の交通環境をディスプレイ上にガイダンス、アラートとして重ね合わせ、それがオーガナイズとして正しいかどうかを開発段階でチェックできるシミュレーターとしている。かなり大型のヘッドアップディスプレイにも対応できることも大きなポイントだ。

●「79 GHz Band 4D Imaging Radar」
79GHz帯を使った4Dレーダーにより、視認性の低い環境での車両周辺の物体を検出する。水山氏曰く、「LiDARを置き換えるレーダー」と表現し、「LiDARはとても高価である上に、濃霧にも弱い。その点、4Dレーダーは形状が人に対しても識別できる能力を備えている」。一方で「距離は80m程度」(水山氏)なので、路線バスのような低速走行を主体とした車両に向くお考えている」とした。

●パナソニックとして今後のITSをどう方向付けるかを水山副社長に聞いた
「車載メーカーとして、コックピットでは一定のシェアを獲得できているが、モビリティに向けて様々なソリューションを提供し、社会課題の解決に取り組んでいくのがITSとして捉えている。その中で具体的な課題を特定し、それに役立つようなソリューションを提供して、さらにそれを隣接領域へ広げていく形で新たなモビリティとして取り組んでいきたい。もちろん、コックピットのUXを安心安全で使いやすく、心地よいものに鋭意進めていく。そうした既存の発展とは別に新たな(領域の)生み出しも考えていきたい」

パナソニックは、2050年、カーボンニュートラル実現に向けた“Panasonic GREEN IMPACT”を掲げる《写真提供 パナソニック》 「On Board Charging system for xEV」《写真提供 パナソニック》 「On Board Charging system for xEV」コンパクトなのに高出力対応なのがポイント《写真撮影 会田肇》 「Drowsiness Estimation and Cognitive Distraction Detection」《写真提供 パナソニック》 「Connected Intersection toward Beyond 5G/6G era」《写真提供 パナソニック》 「Cirrus by Panasonic Connected Intersections」《写真提供 パナソニック》 「Augmented Reality Head Up Display Simulation Tool」《写真提供 パナソニック》 「Augmented Reality Head Up Display Simulation Tool」会場でデモを体験できた《写真撮影 会田肇》 「79 GHz Band 4D Imaging Radar」《写真提供 パナソニック》 「79 GHz Band 4D Imaging Radar」レーダーなのに人の形状がはっきりとわかる(右)《写真撮影 会田肇》 パナソニック オートモーティブシステムズ取締役副社長執行役員 水山正重氏《写真撮影 会田肇》