全日本学生ジムカーナ、男子団体優勝を飾った日本大学インテグラ《写真撮影 荒巻利樹》

8月21日、鈴鹿サーキット国際南コースにて、『全日本学生ジムカーナ選手権大会』が開催された。各地方の支部戦を勝ち抜いた34の大学自動車部が、日本一を目指して大会に臨んだ。

学生モータースポーツは「究極の団体戦」
“聖地”こと鈴鹿南にて行われる全日本学生ジムカーナは、全日本学生自動車連盟が主催する大会の中で最も規模が大きなものだ。指定されたコースを1台ずつ走行し、タイムが速い選手が勝者となる。

学生の競技は、男女それぞれの「個人の部」に加えて、大学全体で争う「団体の部」があることが特徴だ。男子は3名、女子は2名の選手のタイムの合計値が、その大学の成績となる。飛び抜けて速い選手、いわゆる「エース」がいたとしても、他の選手が速いタイムを出せなければ、大学としての優勝は望めない。

また、自動車部の競技に出場する選手は1人で走るわけではない。選手が無事に走行を終えるためには、クルマの丁寧な整備が欠かせない。つまり、全国制覇のためには、選手を含めた自動車部の部員全員が、部車を走らせるために努力する必要がある。学生モータースポーツは個人競技に見えて、実は究極の団体競技なのだ。

優勝候補を襲ったトラブル、波乱の幕開け
気になる出場車両だが、ホンダ車が人気だ。『インテグラ』や『シビック』が、ジムカーナ競技でも過半数を占める。大同大学などが投入する『CR-X』や大阪工業大学の『フィット』などを含め、ホンダ車は実に32台が出場する。

一方で、関西支部で優勝した立命館大学は、現行のスズキ『スイフトスポーツ』で出場する。また、三重大学はマツダ『ロードスター』で、出場車両の中では唯一のFR。そして、立教大学が投入するフォルクスワーゲン『ポロ』は、特注のロールケージが組み込まれているという自動車部の中でも一際異彩を放つ存在だ。

出場する大学は、各地方の支部戦を勝ち抜いた強豪校揃い。激戦区の関東地方を制した日本大学をはじめ、各大学に実力者が揃う。中でも注目されていたのが、金曜日の練習会でトップタイムを叩き出した早稲田大学。2021年に続く連覇が期待されたが、土曜日に開催された前日練習会で男子車両のエンジンがブロー。急遽女子車両に乗り換えて本番に出走することとなる。優勝候補を襲った突然のマシントラブル。2022年の全日本ジムカーナは波乱の幕開けとなった。

逆転に次ぐ逆転!栄冠を掴んだのは…
迎えた8月21日、決勝日。朝こそ雨模様だったものの、走行開始前に雨が止み、徐々に路面が乾きつつある状況。午前の走行では難しい路面に悩まされ、パイロンタッチ(PT、タイムに5秒加算のペナルティ)やスピンを喫する選手も。

1本目の走行を終えた段階で、男子団体トップに立ったのは3名の選手がキッチリタイムを残した日本大学。2番手に芝浦工業大学、3番手には広島大学がつけ、午前の走行を折り返す。一方、女子は個人トップ2名が1/100秒まで同タイムというハイレベルな争い。団体は広島大学、早稲田大学、聖心女子大学という順番になった。

太陽が顔を出し、すっかり路面も乾き切った午後。2本目の走行が始まると、各選手が続々と午前のタイムを更新していく。そんな中、早稲田大学と中央大学の選手が他に先んじて1分13秒台のタイムを記録する。しかし、両名とも痛恨のパイロンタッチで下位に沈むことに。

優勝争いは日本大学が逃げ切るかと思われたが、午後の第1走者で芝浦工業大学が逆転に成功。しかし、すぐに日本大学もタイムを更新して首位を取り返す。そこに割り込んできたのは午前9位と低迷していた慶應義塾大学。第3走者でエースの選手が1分13秒89というタイムを叩き出し、個人でも団体でも首位に躍り出る。

全体の最終走者となった日本大学は、タイムアップが優勝のための必要条件というプレッシャーのかかる場面。会場の全員が最終走者の走りを見守る中、読み上げられたタイムは1分14秒02と個人2番手。しかし、3名の選手の合計タイムで慶應義塾大学を再び逆転し、日本大学が実に1993年以来の全日本男子団体優勝を成し遂げた。

一方、ハイレベルな争いとなった女子だが、個人の部で早稲田大学の選手が競り勝つと、団体でも早稲田が逆転を決めて優勝。苦しい展開を強いられた早稲田大学だったが、意地で結果を持ち帰ることとなった。

今年も熱い戦いが繰り広げられた全日本学生ジムカーナ選手権大会。ジムカーナは終わったが、自動車部の戦いはまだ続く。次戦は11月20日に開催予定の、「全日本学生自動車運転競技選手権大会」だ。

日本大学は女子も個人2位と健闘《写真撮影 荒巻利樹》 逆境から女子団体優勝を果たした早稲田大学シビック《写真撮影 中野龍太》 全日本学生ジムカーナ、男子団体優勝を飾った日本大学インテグラ《写真撮影 荒巻利樹》 疾走する慶應義塾大学シビック《写真撮影 荒巻利樹》 芝浦工業大学は団体3位《写真撮影 荒巻利樹》 無念のトラブルとなった早稲田大学の男子車両、インテグラ《写真撮影 荒巻利樹》 広島大学シビック、愛称は「神号」《写真撮影 荒巻利樹》 女子団体準優勝の同志社大学、男子団体も6位入賞《写真撮影 荒巻利樹》 ニューカラーのお披露目となった駒澤大学《写真撮影 中野龍太》 シビックを急遽投入してきた千葉工業大学《写真撮影 荒巻利樹》 一際目立つカラーリングの明治大学インテグラ《写真撮影 中野龍太》 エンジン載せ替えで戦闘力を上げてきた東京大学インテグラ《写真撮影 荒巻利樹》 快音を響かせる拓殖大学シビック《写真撮影 中野龍太》 緑がフレッシュな印象の青山学院大学《写真撮影 荒巻利樹》 立教大学の投入するフォルクスワーゲン ポロ、大会でも異色の存在《写真撮影 中野龍太》 赤いラインが映える東京理科大学《写真撮影 荒巻利樹》 関西大学はCR-Xで全日本に挑戦《写真撮影 荒巻利樹》 ユーロテールが自慢という工学院大学インテグラ《写真撮影 荒巻利樹》 大阪工業大学は将来を見据えたニューマシン、フィットで参戦《写真撮影 荒巻利樹》 数多の不調を乗り越えて参戦しているという名城大学シビック《写真撮影 荒巻利樹》 オレンジが眩しい法政大学インテグラ《写真撮影 中野龍太》 特徴的なカラーリングの近畿大学シビック《写真撮影 荒巻利樹》 自らミッションオーバーホールを行ったという愛知工業大学のシビック《写真撮影 荒巻利樹》 甲南大学が投入するDC5インテグラ、自動車部では珍しい《写真撮影 荒巻利樹》 圧倒的な快音を自負する名古屋工業大学のCR-X《写真撮影 荒巻利樹》 暴れるマシンを手懐ける広島工業大学の選手《写真撮影 中野龍太》 関西学院大学のインテグラは一目でそれと分かるデザイン《写真撮影 荒巻利樹》 ロードスターで参戦する三重大学《写真撮影 荒巻利樹》 シンプルな外見に反し高い戦闘力を持つ山口大学のシビック《写真撮影 荒巻利樹》 大同大学は20年もの間、CR-Xを維持しているという《写真撮影 荒巻利樹》 中央大学の部車、「チャンピオンシビック」《写真撮影 荒巻利樹》 九州代表として全日本に挑む福岡大学《写真撮影 荒巻利樹》 立命館大学は他大学に先駆けてスイフトスポーツを投入《写真撮影 荒巻利樹》 中部地区の覇者、静岡大学《写真撮影 中野龍太》 東京農業大学、部車の愛称は「だいこんシビック」《写真撮影 中野龍太》 聖心女子大学は唯一の女子大自動車部《写真撮影 荒巻利樹》 男子車とそっくりな慶應義塾大学の女子車シビック《写真撮影 荒巻利樹》 男子団体優勝を果たした日本大学の選手3名《写真撮影 中野龍太》 早稲田は2014年以来の女子団体制覇《写真撮影 中野龍太》