セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)が今季2022年限りでのF1引退を発表(写真は2021年F1アゼルバイジャンGP=2位)。《Photo by Pirelli》

7月28日、2010〜13年にF1世界王座を4年連続で獲得したセバスチャン・ベッテルが、今季2022年限りでのF1引退を発表した。

セバスチャン・ベッテルはドイツ国籍の35歳(1987年7月3日生まれ)。2007年第7戦アメリカGPで、正ドライバー欠場の代役として当時のBMWザウバー陣営からF1レースデビューを果たした。同年第11戦ハンガリーGP以降はトロロッソ(現アルファタウリ)のレギュラーレースドライバーに就任。翌2008年、イタリアGPでF1初優勝を飾った。

2009年にはレッドブルへと移籍し、2010〜13年、ルノーエンジンを背に4年連続ドライバーズチャンピオン獲得を成す。

ベッテルの23歳と約4カ月での初王座獲得はF1最年少記録だ。ルイス・ハミルトンも2008年、23歳時に初戴冠していたが、2010年のベッテルの方が23歳の誕生日からの経過日数が少なく、記録更新となった(両者ともシーズン最終戦で初戴冠)。昨季2021年に初王座に就いたマックス・フェルスタッペンは24歳で、ベッテルの記録は破れず(フェルスタッペンは2020年までに初戴冠していれば記録更新だった。なお、2005年のフェルナンド・アロンソも24歳での初戴冠=ハミルトンの前の最年少記録)。

2015〜20年はフェラーリで戦い、2021年から現在のアストンマーティンで走っているベッテル。F1通算53勝は歴代3位、王座獲得4回は同4位タイの数字になっている(本稿における記録等はすべて2022年7月28日時点)。

ベッテルは、「多くの素晴らしい人々とともにF1で仕事をするという機会に恵まれてきた。感謝すべき人がたくさんいる」と自身のキャリアに関わった人たちへの謝意を示し、「F1引退の決断は難しかった」としながら、シーズン後には次にフォーカスすることについてしっかり考えたい意向や、家族との時間をもっともちたい思いなどをコメントしている。もちろん今季残りレースには全力で取り組むこと、そしてF1を支える情熱的なファンへの感謝も述べている。

アストンマーティンは来季もベッテルにドライブしてもらいたい意向だったが、「本人の決意を敬意をもって受け入れる」旨を表明。アストンマーティンによれば今季最終戦がベッテルのF1通算300戦エントリーにあたる見込みとのことで、偉大な王者の“メモリアルラストラン”まで、一緒にベストを尽くし続ける意志も示している。

ベッテルのアストンマーティン加入後の決勝最高位は昨年のアゼルバイジャンGPでの2位。現状のマシン戦闘力では真っ向から通算54勝目を狙うのは難しいが、今季残りレース(10戦の予定)のどこかで波乱の展開でもあれば、熟練の技で勝機をつかむ可能性もあるだろう。そして、3年ぶりに開催される予定の日本GP(10月7〜9日)、ベッテルお気に入りのコースである鈴鹿での戦いは、日本にも多いベッテルのファンにとって、彼のF1での走りを日本で最後に堪能できる機会となる。

アストンマーティンに加入した2021年はハンガリーGPでも2位で表彰台に立ったが、この後、失格になってしまった。《Photo by Pirelli》 #5 セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン/2022年フランスGP)《Photo by Pirelli》 #5 セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン/2022年フランスGP)《Photo by Pirelli》 現時点での最後の優勝、フェラーリ時代の2019年シンガポールGP。《Photo by Pirelli》 2013年、インドGPで4年連続のチャンピオン獲得を決定(当時はレッドブル所属)。《Photo by Red Bull》 2010年、アブダビGPで自身初のF1世界タイトルを獲得したときは23歳と約4カ月だった(当時はレッドブル所属)。《Photo by Red Bull》