ホンダの竹内弘平副社長《写真撮影 山田清志》

ホンダ(本田技研工業)が5月13日に発表した2021年度の連結決算は、売上収益が前年度比10.5%増の14兆5526億円、営業利益が同32.0%増の8712億円、当期利益が同9.4%増の7607億円と大きく業績を伸ばした。しかし、それを手放しに喜べる状況ではないようだ。

「2021年度の実績について、需要は堅調なものの、半導体の供給不足に加え、新型コロナウィルス感染症が拡大を繰り返し、生産は厳しい状況が続いた。また、原材料価格の高騰などにより、コストも大きく上昇した。それを全方位での収益改善努力に取り組み、対前年度、また、対前回見通しともに増収増益とすることができた」と竹内弘平副社長は振り返った。

主な営業利益の増減要因は、売上台数・構成変化で1399億円の減、インセンティブ抑制などで2055億円の増、売価・コスト影響で569億円の減、諸経費で560億円の増、為替影響が1689億円の増だった。

事業別の業績は、二輪事業が売上収益2兆1852億円(前年度比22.3%増)、営業利益3114億円(同38.7%増)。四輪事業が売上収益9兆3605億円(同6.6%増)、営業利益2362億円(同161.7%増)。ライフクリエーション事業とその他の事業が売上収益4217億円(同23.4%増)、営業損益94億円の赤字(前年度は116億円の赤字)で、うち航空機と航空エンジンの営業損益は337億円の赤字だった。

この数字を見てもわかるとおり、四輪事業より二輪事業のほうが稼いでおり、ホンダは二輪事業に支えられているのだ。当然、営業利益率も大きな差がある。二輪が14.3%なのに対し、四輪は2.5%だ。前年度の1.0%に比べれば、大きな進展だが、乗用車メーカーでは最下位。前年度に赤字を計上した三菱自動車(4.2%)、マツダ(3.3%)、日産自動車(2.9%)より低いのだ。

四輪のモデル数を削減し、英国工場とトルコ工場を閉鎖、そして狭山工場(埼玉県狭山市)での完成車生産をやめるなど、四輪の構造改革を進めているが、まだ道半ばと言っていい。2022年度についても、引き続き構造改革を行っていくが、二輪事業がホンダを支える状況は四輪車の販売台数が12万6000台増えて420万台となっても変わらないだろう。

というのも、前年度から継続している原材料の高騰は留まるところを見せず、部品点数の多い四輪車のほうがその影響を大きくくけるからだ。竹内副社長も「コスト上昇については短期間で吸収することが非常に厳しい状況であり、お取引先やお客さまを考慮したうえで、挽回策を検討していく」と話す。具体的には車両を値上げしていくということだ。

それでも収益の挽回は難しいようだ。2022年度の通期業績見通しを見えても、売上収益が21年度より11.7%も増えて16兆2500億円という見通しに対し、営業利益は7.0%減の8100億円、当期利益は0.6%増の7650億円という計画だ。

ホンダは「脱ガソリン」を宣言し、車両の電動化へ向けて大きく動き出したが、そのためには膨大な投資が必要となり、四輪事業の収益力を大幅に高めていかなければならない。

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