KYOJO CUP 2022年シーズン 新規参戦ドライバー合同オーディション《写真撮影 中野英幸》

「KYOJO CUP」2021シーズンの最終戦も終わり、年末を控えて静かになった頃、「富士スピードウェイ」では密かにKYOJO CUP 2022シーズンのシート争いが始まっていました。今回は、新人編集部員の私イオナがオーディションに潜入取材してみました!

この日集まった女性ドライバーたちは経歴も様々。会社員の方やチームマネージャーを経験している方など多彩なメンバーが集まっています。皆さんの大半は、スーパー耐久、ロードスターパーティーレース、KYOJO CUPなどのレースに実際に参戦していたりレース経験のある方ばかり。初心者+ライセンスが必要なカーレースの経歴無し+レーシングカー乗ったことないという未経験者は当然、私だけでした。

今回のオーディションには、KYOJO CUP 2021シーズンに出場していた猪爪杏奈さんの姿もあり、「2021シーズンの結果を受けて、1からレースに対する取り組みや技術をやり直そうと思ったんです!」とのことでオーディションに特別参加されていました。これはハイレベルなすごいオーディションになりそうだ…!

「KYOJO」とは?
ところで『KYOJO CUP』とは何なのか、改めてご紹介。「KYOJO」とは「競争女子」略した造語です。KYOJO CUPは、ルマン24時間レースで日本人初優勝を飾った元レーシングドライバーの関谷正徳さんが主催する、日本初の「女子に限定」したプロレースシリーズです。

2017年から始まったこのレースは、来シーズンで6年目。歴代シリーズチャンピオンには、小山美姫(2017、2018年)、村松日向子(2019年)、三浦愛(2020年)、辻本始温(2021年)各選手が輝いており、シリーズチャンピオンにはスポーツ庁の後援により「文部科学大臣賞」が贈呈されます。

様々な経歴を持つオーディション参加メンバー
今回のオーディションは、2022年シーズンへの参戦を検討している新規ドライバーが対象。一次選考の書類審査と二次選考の実技があり、私を含め、一次選考の書類審査に合格した計9人が二次選考に参加しました。

「去年は書類で落ちてしまったんですが、その後は自力でVITAをレンタルして練習を重ねていました。乗れば乗るほどVITAの楽しさを知り、今回リベンジしました!」(参加者・辻田慈さん)、「KYOJOには以前スポット参戦しました。年々参戦台数が増えてきて面白そうだと思ったので今回挑戦しています」(参加者・岡村絵莉さん)、「私の目指す目標の一つとして、KYOJOに出場してVITAに乗る事でした!」(参加者・高野理加さん)と、皆さん熱い思いを語っていました。

そして中には、「自分がマネジメントしたドライバーがモータースポーツの歴史に名を残すことが目標です。モータースポーツを底上げするべく、まずは自分自身がドライバーになろうと思って今回挑戦しています」(参加者・宮島花蓮さん)といった、夢を叶えるために人生を捧げている方もいました。

いざ、初レーシングカー!
オーディションでは初めに座学での技術講習を40分ほど行い、関谷さんからVITAの特性や走らせ方を学びます。講習後は二人一組になり、実際にレースで使用されている車両での実車走行練習をおこないます。

まずは走行する上で大切なシート合わせ。KYOJOに出場している選手の皆さんが使用しているシートパッドを拝借したりお風呂マットを切り貼りしながら、メカニックの方がベストポジションに合わせてくれます。

そして待望のVITAでの実走行スタート。まずは大きく円をかきながらシフトアップ/ダウンの練習。外側に置かれた4つの赤いコーンを目印にシフト操作を行なっていきます。

エンジンをかけると、ミッドシップのため背中のすぐ後ろから鳴り響くエンジン音。エンジンの回転数を上げると、思わず驚いてアクセルを緩めてしまうほどの爆音が鳴り、振動がシートを通して体全体に響きわたります。これには思わず興奮しました!

私もいざスタート!と思いきや早速エンスト。クラッチペダルが今まで経験した(といっても自分のパジェロミニ H56A型くらいしかないのですが)どのマニュアルミッション車より重く、半クラッチになるポジション探しが難しい。しかもシフトレバーは右手側にあるHパターンだし重いしで、とにかく大変です。

2→3→4速/4→3→2速 とシフトチェンジ練習をしなければいけない外周路走行は、中々リズム良くギアを入れられず、また人生初のヒールアンドトゥー(レーサーならできて当たり前のペダルワーク)をしなければいけないので、とても頭を使うし悪戦苦闘してしまいました…。そして、クラッチを切っているつもりが、ペダル踏み込みが不十分だったようで、車にダメージを与えるような行為もしてしまっていました(シフト時にギャーっとギアノイズが…)。


タイムトライアルでは、まさかのビリ!? だけど…
お昼休憩を挟んだ午後の練習では、簡単なミニコースを作り、ブレーキ、シフト操作、コーナリングの勉強を行いました。関谷さんがロードスターで先導し、各自コースを確認。各々オーディション最後に行われるタイムアタックの練習をしていきました。

そしていよいよ、タイムアタックです!測定5Lap、計7Lapでのタイムトライアル形式で、途中で退席された2名を除いた計7名で挑みます。

終始、参加者同士和気あいあいと話していましたが、タイムトライアルとなると皆さん目つきが変わり、会場であるP7駐車場はシーン……エンジン音だけが響きます。取材での参加とはいえ、この状況に私も大緊張。順番は最後だったのですが、さあ計測!というときに力んで思わずスピンをしてしまいました。周りに何もなく単独スピンだったのが不幸中の幸い。曲がれる体勢ではないのに、ステアリングを大きく切ってアクセルを踏んだことによる、アンダーステアからのオーバーステアによるスピンでした。

無事に走り終わりタイムを見てみると、トップはKYOJO CUP経験者である猪爪杏奈さんで、タイムは「23秒1」!私はなんと最下位の「33秒8」でした。初心者で初めてのレーシングカーで、周りは経験者だらけ。そりゃそうだろうとこの結果に納得していたはずなのですが、まだまだ勉強が足りてないと痛感し、帰り道の高速道路で涙が勝手に溢れてきたのは良い思い出です。

しかーし!後日、気を取り直し、記事を書くため改めてタイムシートを見てみると、なんとタイムを見間違えてるではありませんか!!!

私はなんと4番手の「24秒9」を記録していたのです。上達スピードは早いと当日関谷さんからお褒めの言葉をいただいていたのですが、間違いを発見し、あの言葉の意味をやっと理解しました…(笑)

VITAが入門カーって言うけど本当なのか
レースで使用されている『VITA』とは、日本のレースカーメーカー(コンストラクター)としては老舗となる「ウエスト・レーシングカーズ」が開発して販売しているレースカーです。セミモノコックフレームに、トヨタ・ヤリス/ヴィッツの1.5リットル自然吸気エンジンをミドシップに搭載し、5速マニュアルトランスミッションを組み合わせる本格的なレースマシンとなっています。

2021シーズンを戦った先輩レーサーの皆さんは「最初は乗れるか心配だったけど、入門カテゴリーだけあってすぐ乗りこなすことができて楽しい車だよ!」とのこと。実際、運転してみてどうだったかオーディション参加メンバーの皆さんにも話を聞いてみると、「思っていたより乗りやすい!」(参加者・宮島花蓮さん)、「自分の出来ていない所がよくわかり、電子制御がないため運転の基本が身につくし、とても勉強になる!」(参加者・下岸可憐さん)、「クセもないし、MT車を乗っているなら抵抗なくVITAに挑戦できますね!」(参加者・高野理加さん)と答えてくれました。

実際、私も初めてのレーシングカーで、オーディションを通して1日体験しましたが、抵抗なくスッと運転できたことが一番印象に残っています。

車両本体価格は355万円から(エンジン、トランスミッションは別)とレースカーの中では安く、入門カテゴリーとして人気がある理由が、この経験を通して知ることができました。KYOJO CUPと同日併催される「FCR-VITA」は男女混合レースとなっていて、先日の最終戦では27台も出場していました。乗りやすい、気軽にレースを始めやすいという事が、参加台数の多さで証明されているのではないでしょうか。

関谷さんからみた今回のオーディションは?
「一言で言うと“難しい”。最近は世の中がAT車ばかりということもあり、MT車に不慣れという印象を持ったかな。現状だと、上手くなるという以前のところにまだ参加者がいる状態。シフト操作やヒールアンドトゥーなど普段から身近に練習できている訳ではないからね。AT車だったらもっと上達が早いはずなんだけど…。でも、最後のタイムトライアル見ていると全員少しは慣れてきて上達しているし、もっともっと練習してもらって速くなってほしい!」(関谷さん)

オーディションの結果ですが、合否ではなく、当日の様子を参戦したいチームに後日伝えて、自分のチームの選手にしたいドライバーを選ぶというスカウト方式。合格者には個人に直接連絡がいきます。(もちろん私は特別枠なので連絡が来ることはありません…)

「KYOJO CUP 2022」のメンバーは開幕戦が開催される1週間前に発表されます。「もっと女性の目標となってもらえる2022シーズンにしていきたいね!」と笑顔で答えてくださった関谷さん。今年はどんな顔ぶれになるのか、新チャンピオンは誰になるのか。今から待ち遠しいですね!

「KYOJO CUP 2022」開幕戦は5月を予定しており、全4大会開催される予定です。

レスポンス編集部員 イオナ《写真撮影 中野英幸》 レスポンス編集部員 イオナ《写真撮影 中野英幸》 KYOJO CUP 2022年シーズン 新規参戦ドライバー合同オーディション《写真撮影 中野英幸》 レスポンス編集部員 イオナ《写真撮影 中野英幸》 関谷正徳氏《写真撮影 中野英幸》 関谷正徳氏《写真撮影 中野英幸》 KYOJO CUP事務局 内山秀樹氏《写真撮影 中野英幸》 シート合わせ《写真撮影 中野英幸》 シート合わせ《写真撮影 中野英幸》 KYOJO CUP 2022年シーズン 新規参戦ドライバー合同オーディション《写真撮影 中野英幸》 KYOJO CUP 2022年シーズン 新規参戦ドライバー合同オーディション《写真撮影 中野英幸》 KYOJO CUP 2022年シーズン 新規参戦ドライバー合同オーディション《写真撮影 中野英幸》 KYOJO CUP 2022年シーズン 新規参戦ドライバー合同オーディション《写真撮影 中野英幸》 猪爪杏奈さん(右)に学ぶ編集部員イオナ(左)《写真撮影 中野英幸》 KYOJO CUP 2022年シーズン 新規参戦ドライバー合同オーディション《写真撮影 中野英幸》 KYOJO CUP 2022年シーズン 新規参戦ドライバー合同オーディション《写真撮影 中野英幸》 KYOJO CUP 2022年シーズン 新規参戦ドライバー合同オーディション《写真撮影 中野英幸》 KYOJO CUP 2022年シーズン 新規参戦ドライバー合同オーディション《写真撮影 中野英幸》 VITA-01《写真撮影 中野英幸》 VITA-01《写真撮影 中野英幸》 VITA-01 エンジン 1NZ-FC《写真撮影 中野英幸》 VITA-01《写真撮影 中野英幸》 VITA-01《写真撮影 中野英幸》 VITA-01《写真撮影 中野英幸》 VITA-01《写真撮影 中野英幸》 KYOJO CUP 2021 最終戦《写真提供 株式会社インタープロトモータースポーツ》 2021シリーズチャンピオン 辻本始温《写真提供 株式会社インタープロトモータースポーツ》 2017/2018シリーズチャンピオン 小山美姫《撮影 吉田知弘》