日産自動車本社《写真撮影 山田清志》

日産自動車は7月28日、2021年度の業績見通しを上方修正した。売上高が9兆1000億円から9兆7500億円(前期比24%増)、営業利益がゼロから1500億円(前期は1506億円の赤字)、当期純損益が600億円の赤字から1200億円の黒字(前期は4486億円の赤字)になりそうだと発表した。

「第1四半期の実績を鑑み、見通しを修正することにした。営業利益率は1.5%の見通しで、これは中国合弁会社比例連結ベースで2%以上に相当し、(事業構造改革計画)『日産NEXT』で掲げる2021年度のマイルストーンを達成できると考えている」と内田誠社長は説明し、最終ゴールである2023年度営業利益率5%の達成に向けて自信を示した。

なにしろ2021年度第1四半期(4〜6月期)の業績が売上高2兆82億円(前年同期比71.0%増)、営業利益756億円(前年同期は1539億円の赤字)、当期純利益1145億円(同2855億円の赤字)と想定以上の数字を残したからだ。

業績回復の大きな要因は販売の質の向上だ。例えば、米国で発売した新型『ローグ』は第1四半期に販売価格が前年同期より22%アップし、1台当たりの売上高も28%も増えた。しかも、セグメントシェアが5.2%から8.2%へとアップしている。国内で販売している『ノート』にしても1台当たりの売上高が31%改善した。

「むやみに販売台数増を追うのではなく、1台当たりの利益と価値を優先する取り組みが奏功した」とアシュワニ・グプタCOOは話す。そのうえ、固定費を18年度に対して3500億円削減、その結果、損益分岐点となる販売台数が500万台から440万台へと下がった。

また、日産が力を入れている電動化について、内田社長は「電動化が進むスピード、お客さまのニーズは市場によって異なるため、それらに柔軟に対応できる商品戦略が求められている。日産はEVとe-POWERの2つの技術で対応していく」と説明。

EVについては、新型クロスオーバー『アリア』に続き、三菱自動車との共同プロジェクトして開発を進めている軽自動車のEVを22年度初頭に国内投入する計画だ。また、英国で欧州向けの新世代クロスオーバーEVを生産していく。e-POWERについては、今年度から中国と欧州での導入を進めていく。

「私たちのやるべきことは、未来について明確なビジョンを社内外に示し、日産を持続的な成長を続けることができる企業へと確実に変えていくことだと考えている、その実現に向け舵を切っていく」と内田社長は強調し、長期ビジョンを今秋に発表するという。

日産ノート《写真撮影 中野英幸》 日産ローグ(北米向け)《photo by Nissan》 日産アリア《写真撮影 高木啓》 日産自動車の内田誠社長《写真提供 日産自動車》 日産自動車のアシュワニ・グプタCOO《写真提供 日産自動車》