トヨタ自動車本社《写真提供 トヨタ自動車》

トヨタ自動車は6月16日、愛知県豊田市の本社本館ホールで定時株主総会を開いた。今年の議案は豊田章男社長ら取締役9人および補欠監査役1人の選任、さらに定款の一部変更の合計3件で、いずれも承認された。

定款の変更は、配当などに特別な条件を付けた種類株の消却に伴うもの。トヨタは個人株主の比率を引き上げる狙いで2015年に4710万株の「AA型種類株」を発行した。元本保証型だが5年間の譲渡制限が付いたもので、発行総額は約4991億円だった。

資金調達面でも一定の成果があったことから、20年12月にこの種類株全ての消却を決め、今年4月に実施していた。株主総会の決議事項ではないものの、トヨタは今年9月30日に普通株式1株を5株とする株式分割を行う。同社の普通株は100株単位から売買できるが、近年の株価上昇もあるため、分割によって個人株主などが購入しやすいようにする。株式分割については、5月に株主へ文書で伝えている。

今年の定時総会は昨年同様、新型コロナの感染拡大防止を徹底するため、株主には総会会場への来場を控え、事前の郵送やインターネットによる議決権行使への協力を要請した。これにより、出席株主は383人で、昨年(361人)と同規模になった。所要時間は1時間49分(昨年は1時間21分)だった。

質疑では、カーボンニュートラルや、建設中の「ウーブンシティ」、水素エンジン、米中事業など幅広い質問が出た。

就任12年となった豊田社長は、その総括を聞かれ「就任以来、対立軸からは何も生まれず、誰かのために動きたいという想いが強まってきた。この12年間、頑張ってこられたのはリーマンショック、東日本大震災、コロナ禍などさまざまな危機があったからだ。危機のなかで、仲間が私の声を聞いて一緒に取り組んできてくれたからこそ、今がある」と振り返った。

また、質疑が終わって採決に入る前の謝辞のなかで、豊田社長は「昨年『幸せの量産』をミッションとして掲げた『トヨタフィロソフィー』をまとめた。ミッションというものは、言葉ではなく『現場』で、『現地現物』で仕事をすることによって初めて共有できる。私には、未来を見通す能力はなく、できることは『現場』の仲間と共にまずやってみて、失敗し、改善を重ねながら前に進んでいくことだけだ。『未来をもっとよくしたい』という意志をもち、情熱をもって、行動すれば20年後、30年後の景色は必ず変わると信じている」と訴えた。

スーパー耐久富士24時間レース:トヨタ水素カローラ《写真撮影 雪岡直樹》 トヨタ自動車の豊田章男社長(参考画像)《Photo by David Becker/Getty Images News/ゲッティイメージズ》