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車両設計を担う部署の直属の上司からは「バカ、アホ」「こんな説明ができないなら死んだ方がいい」などと繰り返し言われたそうだ。

トヨタ自動車の男性社員(当時28歳)が、2017年に自殺したのは、上司のパワーハラスメントで適応障害を発症したのが原因だったとして、豊田章男社長がパワハラと自殺との因果関係を認め、男性の遺族に直接謝罪。トヨタ側は徹底した再発防止策を誓うとともに、解決金を支払うことで遺族と和解したという。

きょうの朝日と毎日が1面や社会面で大きく報じている。それによると、 トヨタは当初、社内調査を踏まえパワハラと自殺との因果関係は否定したが、豊田労働基準監督署が19年9月、遺族の主張に沿う形で労災を認定。豊田社長はこの直後に遺族を訪ね、因果関係を一転して認めたという。さらに、和解が成立した際も対面した遺族に再び陳謝し、「ご子息を忘れずに再発防止策の改善を続け、トヨタを変えていく」と述べたそうだ。

和解したのは4月7日付だが、和解金の金額は非公表という。豊田社長は、男性社員の自殺が、報道された後の19年11月、「ニュースで初めて知った。取り返しのつかないことになってしまい、心からお詫びします」と、遺族を訪ねて頭を下げたほか、和解成立時の今年4月にも大阪市内で遺族と面会し、直接謝罪したという。

朝日によると、協議中だった能力重視から人間性重視への評価基準の変更を、パワハラ防止策に位置づけ、実施を前倒し。管理職以上の約1万人を対象に、上司や部下、社内外の関係者ら十数人で評価する「360度フィードバック」を昨年7月に導入し、複眼的に人間性を分析。適性がないと判断すれば所属長などにはしないことを決めたほか、今年度は、対象者を係長らも含めた約2万人に広げる方針だと伝えている。

また、パワハラを受けた際、声を上げやすいよう、どの部署にも属さない独立した相談窓口を設置。家族や同僚も相談できるほか、入り口としてネットから匿名で相談できる仕組みも整備したという。相談があった場合は事実関係の調査を綿密に行う。精神科医が常駐する相談センターも設置したそうだ。

自殺した男性は、東京大大学院を修了して15年4月に入社。翌16年3月に愛知県豊田市の本社で車両の設計などを担う部署に配属。直属の上司からは「バカ,アホ」以外にも個室に呼ばれ「発言を録音してないだろうな。携帯電話を出せ」と言われたとも相談していたという。

来週の6月16日にはトヨタの定時株主総会が予定されている。すでに遺族との和解が成立したとはいえ、株主の前でもパワハラを巡る再発防止の徹底などをどのように説明するのかも注目したい。

2021年6月7日付

●内閣支持最低37%、五輪「開催」50%、「中止」48%、本社世論調査(読売・1面)

●企業研究Panasonic、「幸之助哲学」への回帰、停滞打破、新体制で模索(読売・4面)

●パワハラ自殺、トヨタ和解、遺族と社長面会、人事制度見直し(朝日・1面)

●五輪観客310万人、五輪リスク、本紙試算人の流れ桁違い(東京・1面)

●「ワクチン証明」今夏に、渡航者用経済正常化後押し(日経・1面)

●プロジェクト最前線、LED材料で脱炭素革命、EV用に省エネ半導体(日経・21面)