バイオ燃料給油式典を行うユーグレナの出雲充社長(右)とライフ白銅の山田広太郎社長《写真撮影 山田清志》

ユーグレナは4月9日、東京葛飾区の国道6号線沿いにある「セルフかつしか6号店」でバイオディーゼル燃料の給油式典を行った。同日から3日間の限定販売だが、ガソリンスタンドでのバイオ燃料販売は日本で初めてのことだ。

今回提供されるバイオディーゼルは、通常の軽油にミドリムシと使用済みの食用油からつくったバイオ燃料を10%混ぜたもので、そのバイオ燃料はミドリムシ10%、廃油90%の割合で製造されている。

「その割合が高いか低いかについてはいろいろと意見があると思うが、これまではB5、5%以上混ぜることができなかったバイオディーゼルが、今回初めて10%混合で出荷できるようになった」と出雲充社長は話し、その開発に12年かけたそうだ。

もちろん品質については折り紙つきで、法令やJIS規格などすべての面で軽油とまったく同じものであることことが確認されている。また、CO2の排出量についても、従来の軽油よりも10%削減できるという。

いま世界的にカーボンニュートラル社会の実現に向けた気運が急速に高まっているが、すべてのクルマを電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)に置き換えるのは不可能だ。しかも、日本のように火力発電が主体だと、製造過程で大量に電気を使うEVはかえって環境に優しくない。そこで、注目されているのがバイオ燃料だ。

バイオ燃料は石油などの化石燃料と同じようにCO2を排出するが、原料となる植物の成長過程において光合成を行うことでCO2を吸収しているため、燃焼時のCO2の排出量はプラスマイナスゼロとなり、カーボンニュートラルな燃料と呼ばれている。

「バイオ燃料はクルマを買い換えることなくCO2を削減でき、これまで築き上げてきたガソリンスタンドというインフラもそのまま活用できるなどのメリットもある」と出雲社長は強調する。

そのうえ、ユーグレナのバイオ燃料は原料が藻の一種であるミドリムシで、トウモロコシやサトウキビなどを原料とする従来のバイオ燃料と違い、食料との競合や森林破壊といった問題もない。「プールさえあれば、ミドリムシを培養できる」(出雲社長)からだ。

しかし、出雲社長によると、バイオ燃料を供給するために最大のネックになっているのが製造コストとのことだ。今回販売するバイオ燃料は完全に採算割れの状態だ。セルフかつしか6号店を運営するライフ白銅の山田広太郎社長も、ユーグレナの努力によって通常の軽油と同じ価格で販売できるようになったから始めたようだ。

「このバイオ燃料をクルマに給油して故障しないか、あるいはガソリンスタンドにとってはタンクを掃除しなければいけないのか、などさまざまな不安があると思う。まずは従来の燃料と同じ価格で提供し、これまでとまったく変わりないことを体験し、広く知ってもらうことが大事だと考えている」と出雲社長は話し、2025年には本格的な商用プラントを建設する計画だという。

ユーグレナの出雲充社長《写真撮影 山田清志》 ライフ白銅の山田広太郎社長《写真撮影 山田清志》 バイオディーゼル燃料と、原料の使用済みの食用油とミドリムシ《写真撮影 山田清志》 セルフかつしか6号店《写真撮影 山田清志》