レベル3自動運転機能を搭載し2020年度中に発売されるホンダ レジェンド(写真は現行モデル)《写真提供 ホンダ》

2021年3月、世界初のレベル3の自動運転技術を搭載した車両がリリースされる。ここでもう一度、道交法に基づいてレベル3を走らせるときのドライバーの責任を確認しておきたい(この原稿は2021年2月執筆)。

まず、自動運転のレベル3とはなにか?である。

いままで販売されているクルマは、すべてレベル2だ。テスラや日産『スカイライン』など、ネット上やテレビCMで「自動運転」という言葉が飛び交っているけれど、あくまでも搭載されている技術は運転支援であり、「周囲監視義務は人」にある。


テスラなどを走行中に、車線をはずれたとか、ぶつかりそうになったなど、ネット上で体験談を目にするけれど、レベル2は支援までなので自動運転で走ってくれるわけではない。車線からはずれそうになったりしたら、「人」がまわりを見て判断し、「人」がハンドルやアクセル&ブレーキ操作をしなければならない。事故につながりかねないアクロバティックなお試しは、ぜひ、やめていただきたい。

しかし、レベル3になると、「周囲監視義務はシステム」になる。「システム」がまわりを見て判断し、「システム」がハンドルやアクセル&ブレーキ操作を行う。まさに、自動運転なのである。

◆レベル3の技術は「まだ完璧ではない」

ただし!(ここ大事!)レベル3の技術は、まだ完璧ではない。白線が薄れていたら「読めません!」だし、逆光が厳しければ「信号が見えません!」と音を上げる。つまり、ある一定の条件(白線がしっかり引かれているとか、逆光が強くないとか、一定の速度以下など)の中でのみ使える条件付きであることをまず理解してほしい。

これまでレベル3は、道交法的に公道を走らせることは不可と言われてきた。私も、数年前にそういう原稿を以前書いた。理由は、日本の道交法の元となるジュネーブ条約に「運転の責任は人にある(岩貞意訳)」とあるからだ。一時的であれシステムが責任を持つレベル3は、その一文に反するのである。

ただ、このままでは、レベル3を始めとする自動運転車両は半永久的に公道を走らせることができない。とはいえジュネーブ条約を変えることは大変な作業らしい。そこで、解釈である。国連のなかにあるWP1(道路交通安全グローバルフォーラム。日本は警察庁が参加)で、ジュネーブ条約の「運転の責任は人にある」という一文を上手に解釈し、レベル3を使いこなす責任を人が持つ、とすることで公道を走らせることを可能にしたのである。

2020年春、日本ではこの決定を受けて世界に先駆けて道交法を整備した。同時に、国土交通省が担う道路運送車両法(販売する車両にはこういう機能をつけること、という法律)も整備され、このふたつをセットにすることで、日本でレベル3のクルマを発売し公道を走らせることが可能になったわけだ。

◆レベル3で走行中にドライバーができること

では、ドライバーはレベル3のクルマに乗ったとき、具体的にどうなるのか。もともとドライバーには、運転操作に係る義務がある。

・安全運転義務
・制限速度順守義務
・信号灯遵守義務
・車間距離保持義務

などである。この義務を果たすためにドライバーには、

・携帯電話の保持による通話の禁止
・カーナビなどの画面注視の禁止

といった禁止事項がある。しかし、レベル3になるとシステムがドライバーの代わりに運転操作に係る義務を果たしてくれるため、ドライバーは禁止事項からも解除されるというわけだ。

つまり、レベル3で走行中は、携帯電話を持ってもいいし、スマホやカーナビの画面を見てもいい、ということである。

◆この価値を、どう判断するかはドライバー次第

ただ、注意してほしいのは前述したとおり、正常にレベル3の機能が作動するためには、さまざまな条件がそろわなければならない。システムが「条件からはずれました。もう無理です!」と音やシグナルで警報を発してきたとき、ドライバーはすみやかにシステムから運転操作を引き継ぐことが求められる。ここが「レベル3を使いこなす責任を人が持つ」という解釈の部分にあたる。

引き継がずに事故が起きれば、ドライバーの責任だ。ちゃんと引き継ごう。そして、居眠りや飲酒は、引き継げなくなるためやっぱり禁止だし、事故時の救護義務、故障時の停止表示機材(発煙筒や三角表示板)の表示義務、運転免許証提示義務も、ドライバーに課せられたままである。

レベル3になっても、すぐに運転操作を引き継げるよう緊張しながら待つのは嫌だとか、そもそもレベル3は必要なのかという声もある。けれど、いま、レベル2を誤った使い方をして(クルマがしっかり走ってくれると期待してスマホを見てしまうなど)事故を起こすケースは後を絶たず、日本でも死亡事故が起きている。渋滞にはまっている間だけでもシステムが運転を担ってくれるのであれば、疲労は軽減するし、安全にメールが読めるようになる。この価値を、どう判断するかはドライバー次第だ。

そしてくれぐれもお願いしたいのは、レベル2、レベル3に限らず、それぞれの技術には限界があり、使いこなす責任はドライバーにあるということ。道具も技術も使う人次第だということは、どこの世界でも同じなのである。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、ノンフィクション作家として子どもたちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。

ホンダ レジェンドをベースにした自動運転の試作車《写真提供 ホンダ》 ダイナミックマップを搭載し「プロパイロット2.0」によるハンズオフ走行を可能にした日産 スカイライン《写真撮影 中野英幸》 「プロパイロット2.0」では限定的にハンズオフ走行が可能となっている《写真撮影 中野英幸》