2021年WRC開幕戦モンテカルロを制したトヨタの#1 オジェ(向かって右がオジェ。左はコ・ドライバーのJ.イングラシア)。《写真提供 TOYOTA》

世界ラリー選手権(WRC)の2021年シーズン開幕戦「ラリーモンテカルロ」が現地24日に終了、セバスチャン・オジェが通算50勝目を達成した。トヨタは1-2フィニッシュで、2017年のワークス参戦再開後では初となるモンテ制覇。勝田貴元も自己最高更新の6位と好発進した。

厳寒期のターマック(舗装路面)戦として知られる伝統のラリーモンテカルロ。雪や氷、低温状況等とも格闘することを強いられる難しい一戦だが、そこでトヨタ・ヤリスWRC勢が見事なシーズンオープニングを演じた。競技3日目の土曜日(23日)には1-2-3態勢を構築し、最終日(24日)に一角が崩れはしたものの、1-2フィニッシュで幸先の良いスタートを飾っている。

優勝は昨季王者の#1 セバスチャン・オジェ。2位に#33 エルフィン・エバンスが続き、3位はヒュンダイi20クーペWRCの#11 ティエリー・ヌービル。土曜日終了時点で3位につけていたトヨタの#69 カッレ・ロバンペラは最終日の最初のSS(スペシャルステージ)でパンクを喫して#11 ヌービルに先行され、4位だった。

また、今季はヤリスWRCでフル参戦するプランが組まれている#18 勝田貴元も、WRCでの自己最高更新となるラリー総合順位、6位に入っている。トヨタ勢は1-2-4-6と、上々の成績で2021年シーズン開幕戦を終えた。

引退(WRCフル参戦終了)の予定を1年延ばして、2年連続8回目のドライバーズタイトル獲得を狙う#1 オジェは最終のパワーステージでも1位となってボーナス5点を加算し、ラリー優勝の25点とあわせて30点フルマークの発進。得意中の得意といえるモンテで、最高のキックオフとなった。オジェのモンテ制覇は2年ぶりで、“WRCのモンテ”優勝は7回目。他にWRCではない開催時の1勝があり、モンテ通算8勝目はセバスチャン・ローブの7勝を超えて単独最多勝記録とされる。

優勝した#1 セバスチャン・オジェ(トヨタ)のコメント
「子供の頃にこのラリーを見て、いつかはドライバーになりたいと夢見ていた(フランスのギャップ=ラリーモンテカルロのサービスパーク地=近郊で生まれ育ったオジェにとってモンテは“地元戦”に相当する)。もし、自分がひとつだけ記録を残せるとしたら、間違いなくこのラリーを選ぶだろう。自分にとってはとても意味のあるものだ。だから今回の表彰台ではとても感情的になってしまったよ」

「完璧なかたちでシーズンをスタートすることができた。この週末のヤリスWRCは素晴らしく、とても良いフィーリングだった。もう1年現役(WRCフル参戦)を続けるというのは正しい決断だったと思うよ。チームも素晴らしく、全員に心から感謝している」

今回の優勝はオジェにとってWRC通算50勝の節目にもなった。WRC50勝はローブ以来2人目の偉業。

今季からトヨタ(TOYOTA GAZOO Racing WRT)のチーム代表に就任した、かつての主戦ドライバー、ヤリ-マティ・ラトバラはピレリ製コントロールタイヤへの履き換え初戦での1-2-4-6という好結果に、「チームを誇りに思う。本当に素晴らしいチームと最高のドライバーたちだ。ラリー開始直後から彼らは速く、その後セブ(オジェ)は他を圧倒するようなステージタイムを何度も記録し、勝利を得た。チーム全体としても最高のかたちでシーズンをスタートできたと思う」と喜びを語っている。

トヨタのモンテ制覇は2017年にワークス参戦を再開して以降では初めて。トヨタ車のモンテ優勝は1998年以来で、23年ぶりとなった。

トヨタのライバル、ヒュンダイ勢は#11 ヌービルの3位が今回の最高位。ヌービルと並ぶ主軸の#8 オット・タナクが土曜日にリタイアするなど、厳しい戦いを強いられていた。マニュファクチャラーズポイント(各陣上位2台のみを“抽出”した順位に対してポイントを割り振る原則)はトヨタ(TGR-WRT)が52点、ヒュンダイ(HYUNDAI SHELL MOBIS WRT)は30点と、初戦終了時にしては2強に大きめの差がついている(今季は最終ステージ=パワーステージの順位によるボーナスポイントの対象が、従来のドライバー/コ・ドライバー部門に加えてマニュファク部門=各陣上位2台が“順位そのまま”で対象=にも広がっている)。

今季のWRCは現段階で全12戦の予定。だが、昨季同様にコロナ禍の影響で変更の連鎖が生じる可能性も否定できず、選手権ポイントの面では、とにかく先行、先行でシーズンを進めていくことが重要になるだろう。そうした意味でも、3年ぶりのマニュファク王座獲得を目指すトヨタにとってはいいかたちのシーズン開幕となった。

WRCの次戦(第2戦)は2月26〜28日に開催予定の「Arctic Rally Finland Powered by CapitalBox」となっている。

(本稿の順位等は、日本時間25日午前9時の時点でのWRC公式サイト等の表示に基づく)

表彰式、ジャンプして勝利を喜ぶセバスチャン・オジェ。《写真提供 TOYOTA》 優勝の#1 オジェ(トヨタ)。《写真提供 TOYOTA》 2年連続王座へ向け、快心のスタートを切った#1 オジェ(トヨタ)。《写真提供 TOYOTA》 #18 勝田貴元(トヨタ)は自己最高位を更新する6位と健闘した。《写真提供 TOYOTA》 2位の#33 エバンス(トヨタ)。《写真提供 TOYOTA》 3位の#11 ヌービル(ヒュンダイ)。《Photo by Red Bull》 トヨタのラトバラ新代表。就任初戦で1-2フィニッシュを飾った。《写真提供 TOYOTA》