メルセデスベンツ GLS 400d《写真撮影 中村孝仁》

全長5210×全幅1955×全高1825mm。さすがに都内をこいつで徘徊するのは少し気が引ける。と言って、不都合を感じるかといえば、それはもっぱら駐車スペースなどで隣に配慮しなくてはいけないことだけ。

現実的にいざ走ってしまうと別に苦労はない。もっともこのクルマ、ターゲットとした市場はもっぱら北米である。勿論生産もアメリカだから、まあこのくらいのサイズにしとこうかといった具合で作られたモデルのような気がしてならない。本当ならもう少し大きくてもイイかな…ぐらいに思っているはずである。

そりゃそうだ。彼の国にはこれよりもさらに大きなキャデラック『エスカレード』だったり、リンカーン『ナビゲーター』といったライバルがひしめいているのだからいくらメルセデスとはいえ、その圧倒的デカさに対抗するにはそれなりの風貌が必要なわけである。

◆史上最高のディーゼルエンジン


現在日本市場の『GLS』は2モデルがラインナップされ、今回試乗したのは直6ターボディーゼルを搭載する「400d」と呼ばれるモデルである。個人的には史上最高のディーゼルエンジンだと思うメルセデスの6気筒ディーゼル。とにかく静かで滑らかな回転フィールは、最初に『Sクラス』で味わって以来正直言って病みつきになっている。しかもGLSの場合は何と2570kg(AMGライン装着のため)にもなる車重をいとも軽々と、それも軽快そうに走らせてしまう力持ちだ。

Sクラスの時も先日試乗した『GLEクーペ』の時も同じ直6ターボディーゼルだったのだが、その感触はクルマによってそれぞれ異なっていた。正直言って、エンジンの透過音が最も大きかったのが、このGLSである。Sクラスの時は、一旦エンジンをかけて表に出ても、それがディーゼルであるという印象は希薄だった。それが証拠に某メーカーの広報氏を乗せて、別れ際に「これ、ディーゼルですよ」というと、広報氏は短く一言「えっ?」であった。つまり降りても気付ないほど静かなのである。

そこへ行くと、GLEにしてもこのGLSにしても表に出ればわずかながらディーゼルの痕跡を感じることが出来る。透過音が大きいといっても、そのレベルは他メーカーのガソリン車と比較できるレベルだから、まあ気にすることはない。

◆エアマチックの乗り心地は、まさしく「なごみの空間」


さすがにメルセデスSUVの頂点に君臨するクルマだけあって、1列目のみならず2列目のシートもすべて電動でアジャストできる。ちょっと時間はかかるが、3列目への乗り込みも2列目を電動で動かして乗り込むことが出来る。それどころか、ラゲッジスペースから3列目を畳むことも、さらに2列目を畳むこともすべて電動。

いちいち場所を変えずすべてテールゲートを開けたところで完結できる。さすがに高級車である。まあ、こんな部分に感心していても仕方ないのだが、たとえ2列目が畳める状態ではない位置にあったとしても、すべて元通りに勝手にやってくれる様は圧巻であった。


静か、スムーズについては前述した通りだが、それはエンジンだけでなく走り全体がその言葉で語りつくしている印象があって、標準装備されるエアマチックの乗り心地は、まさしく車がなごみの空間になると言っても過言ではない。

一時はライバルのBMWとかなりのガチバトルを展開していたが、最近はそれぞれの良さを前面に押し出して差異を印象付ける戦略に出たのか、近頃は同じセグメントのメルセデスとBMWに乗るとその違いが鮮明だったのだが、この巨大なSUVだけはどうやら目指すところが一緒のようで、どちらのモデルも運動性能ではなく快適性が最重視されたモデルだった。思うにこれは、どちらもアメリカ市場最重視で開発が進んだからだろう。

◆快適性重視第一主義


ただ、それは間違いではないと思う。こんなドデカい巨体でワインディングなど攻める強者はほとんどいないだろうし、そんなところにコストをつぎ込んで開発したところで、それによってユーザーが得られるメリットは少ないと思う。だったらとことんこのGLSのように快適性重視第一主義で行った方がユーザーメリットは大きいと考えられるからである。

大きいことは、同時に大荷物を飲み込むというのも通り。2列目、3列目を畳んでみるとそこに出現するスペースは広大と表現するのが適当と思われるスペースである。もっともスペースユーティリティーがそれほど高いかといえば、それは高級感に邪魔されてあまり高いとは言えない。でも十分過ぎるスペース。

アメリカのような広大な土地を、疲労感無く移動しようと思ったらまさにこんなクルマが理想である。ACCを設定して走ったら、きっと快適以外の言葉が見つからない。おねだりするなら後は自動運転だ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来43年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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