赤羽大臣(右から2人目)に要望書を手渡す福田弥夫座長《写真撮影 池原照雄》

交通事故被害者や自動車業界団体などによる「自動車損害賠償保障制度を考える会」(以下、考える会)は11月11日、自賠責保険料からの積立資金が国の一般会計に繰り入れられたままとなっている問題で、国土交通省の赤羽一嘉大臣に善処を要望した。

考える会は、事故被害者団体や日本自動車会議所、自動車総連など幅広い関係機関で構成され、2010年の設立時から自賠責資金の繰り戻しや理解活動に取り組んできた。一般会計にプールされているのは、自賠責保険料から交通事故被害者支援などのために積み立てられた資金で、1994年度から95年度にかけて1兆1200億円が繰り入れられた。

考える会の活動などにより、18年度には一般会計からの繰り戻しが15年ぶりに実現、20年度まで継続されている。繰り戻し額は18年度23億円、19年度49億円、20年度40億円だが、なお約6000億円が一般会計にプールされた状態となっており、自動車ユーザーが負担した資金が事故被害者救済など本来の目的に使えないという事態が長年続いている。

国交省で赤羽大臣と会談した、考える会の福田弥夫座長(日本大学危機管理学部部長)は、「21年度予算においても積立金の繰り戻しができるよう活動している。4年連続で繰り戻しとなるとともに、増額となることを願っている」と要請した。

これに対し赤羽大臣は「私はかつて、公明党のプロジェクトで(重篤な交通事故患者の治療施設である)千葉療護センター(千葉市美浜区)を視察したこともあり、介護されるご家族の苦労の大変さも実感させていただいた。ご家族の高齢化も進んでいるし、要望にしっかり対応していきたい」などと述べた。

会談には、考える会から自動車総連の高倉明会長や、会の事務局を務める日本自動車会議所の山岡正博専務理事らも出席した。さらに事故被害者団体である「全国遷延性意識障害者・家族の会」の桑山雄次代表らもオンラインで参加した。

要望後に記者会見した福田座長は「繰り戻しについては、国交省と財務省の大臣間交渉で安定的な道筋をつけるようお願いしていく」と、一定のルール化を求めていく考えを示した。自動車会議所の山岡氏は「資金は税金ではなく、自動車ユーザーが自助で出しているお金であり、早期に戻してほしい」と述べた。

また、家族の会の桑山代表は「われわれ介護者は高齢化が進んでおり、介護できなくなった時が大きな問題だ。しかし、まだ十分なセーフティーネットがない。資金投入で障害の重い人も入居できるグループホームの拡充などを早急に進めていただきたい」と、繰り戻しの差し迫った重要性を訴えた。

自賠責資金の繰り戻し要望を聴く赤羽国土交通大臣(右)《写真撮影 池原照雄》 記者会見した自賠制度を考える会」の福田弥夫座長と(右)と事務局の山岡正博氏《写真撮影 池原照雄》