のろーよ! デンドー車いす《写真撮影 関口敬文》

経済産業省は10月21日、電動車いすの普及と利用促進、安全性の周知などを目的とした「のろーよ! デンドー車いす」プロジェクトの発表会を開催した。

電動車いすの利用の促進は、高齢者の移動・活動を促すだけでなく、自動車を運転することで発生する事故の減少などにも繋がることから、高齢化の進む日本において、重要な役割となる。しかし今日、電動車いすの利用は日常的ではないという状況であり、社会における理解の増進や受容性の向上が、電動車いすの普及に向けた課題となっている。そこで経済産業省は電動車いすの普及、安全性の周知を含めた取り組みとして「のろーよ! デンドー車いすプロジェクト」を発足した。

発表会では、経産省の担当者だけでなく、本プロジェクトのアンバサダーである出川哲朗さんも登場した。

まず始めに、経済産業大臣政務官・佐藤啓氏が登壇し、電動車いすの現状について語られた。

「電動車いすはまだまだなじみが薄いという現状だが、既に利用している高齢者にとっては、お買い物に行くときだけでなく、ゲートボール場や農作業をする畑までの移動といったことにも活用され、いきいきとした生活を送られていることが多い。つまり移動手段としてだけでなく、生活の支えとして利用されているというのが特徴だ。電動車いすはだれかに気遣う必要もなく、自由に外出できるツールであり、高齢者が元気に生きるためのアイテムということをアピールし、世の中に広げていきたい」と述べた。

次に経済産業省 商務・サービス政策統括調整官・山本和徳氏が登壇し、プロジェクト概要について説明があった。

内閣府による調査結果によると、60〜74歳までの高齢者が外出の手段として使用する最も多いものが、自分で運転する車とのこと。しかし2014年から高齢者の免許の自主返納は年々増加傾向にあり、返納後の移動手段やサービスは、電車、バス、タクシー、徒歩、自転車が多く、電動車いす(シニアカー)は、極めて低い水準となっている。またコロナ禍によって外出する機会も減り、公共交通機関の利用も控える傾向が見られているとのこと。こういった状況の今だからこそ、電動車いすについてもっと理解を深めてもらい、高齢者の移動・生活に対するひとつのソリューションとしてとらえてもらおうというのが「のろーよ! デンドー車いす」プロジェクトのコンセプトになっているとのこと。

プロジェクトについては3つの柱を設けているとのことで、まずひとつ目は、『様々な地域環境における電動車いすの導入実証』。ふたつ目が『電動車いすを用いたあらたなサービスの検討』。3つ目が『広報活動を通じた、電動車いすの魅力的な活用・安全な利用の周知』となっている。この3つを推し進めることで、認知度・社会的受容性の向上、活用可能性の拡大、安全な利用方法の普及を目指す。

導入実証については、静岡県静岡市大川地区、茨城県つくば市千現、宝陽台、神奈川県横浜市上郷ネオポリス、京都府京丹後市宇川地区、東京都調布市多摩川住宅の全国5地域で実証を開始。高齢者の方に電動車いすを貸与し、電動車いすの利用が高齢者の活動に与える効果や、地域で活用する際の課題等を把握する。

新たなサービスについては、商業施設、観光施設などに電動車いすを導入し、施設における新たなサービスの可能性や課題を調査する。

広報活動を通じた活用・安全な利用の周知については、本人のみならず、家族や友人への働き方も重要となる。そのために、老若男女問わない認知度・好感度の高さを誇る出川哲朗さんにアンバサダーとなっていただき、電動車いすの価値や魅力を強力に発信していただく予定とのことだ。

次にアンバサダーの出川哲朗さんが登壇。数か月前にアンバサダーの依頼を受け、プレス発表会ではプレゼンをしてほしいと頼まれたとのことで、慣れないながらも渾身のプレゼンを披露してくれた。

まずは今回アンバサダーに就任した際に抱いていた気持ちを報告するところからスタート。アンバサダーの依頼を受けたものの、最初は大変だと思ったと正直な感想を吐露。電動車いすのことを全くと言っていいほど知らなかったということで、実際に販売店に見に行って試乗し、更に高齢者の方たちと一緒に電動車いすを体験することで、こんなに便利なものなのかと気付かされたとのこと。

そんな体験をもとに、4つのポイントに分けて、電動車いすの利点を解説してくれた。

ひとつ目は『リアルガチで便利』というもの。ヘルメットが不要なので髪型を気にすることもなく乗れる。また歩道を走ることができるので自動車と衝突する危険が少ない。そして6km/hしか出ないので安全と、不安要素が少ないことは大きなポイントとのこと。

ふたつ目は『リアルガチで優しい』。これは電動車いすにはハンドル型とジョイスティック型の操作方法があることを紹介し、軽い力で操作できることをアピール。軽い力で操作できるということは、手や腕が不自由な方でも操作しやすく、身体への負担も少ない。これが優しさに繋がっているとアピールしていた。

3つ目は『リアルガチで人生が広がる』。これは簡単に言うと外出が楽しくなるということ。手動の車いすだとどうしても付き添いの方が必要になり、気軽に外出するわけにはいかなかった。ところが電動車いすであれば、自分の思ったときにいつでも外出でき、やりたいことをやれるということは、結果的に笑顔になる。実際に電動車いすを利用されている高齢者の方を撮影したスライドショーを見せてくれたが、みんな笑顔の方ばかりだった。

4つ目は、『リアルガチで家族も安心』ということ。高齢者が自動車を運転すると事故の確率が高いということもあり、家族としてはいつも心配。そこで移動手段を電動車いすにして、運転免許証を自主返納してくれることは、家族にとっても安心が得られる。出川さんが取材に訪れた御家庭では、おじいちゃんが免許を自主返納する代わりに、電動車いすをプレゼントされていた。またお孫さんから、手作りの自動車運転卒業証書を送ってもらい感涙する姿も録画されており、感動のストーリーとなっていた。

最後に出川さんは、「乗ってくれる人にやさしく作ってあって、足が不自由だから出かけるのがおっくうだとか、そういったネガティブな気持ちも解消してくれるのが電動車いすだ。おじいちゃんやおばあちゃんたちに、もっとポジティブになってもらうツールとして電動車いすを使ってほしい」と締めた。

経済産業大臣政務官・佐藤啓氏が電動車いすに乗って登場。《写真撮影 関口敬文》 経済産業大臣政務官・佐藤啓氏。《写真撮影 関口敬文》 経済産業省 商務・サービス政策統括調整官・山本和徳氏。《写真撮影 関口敬文》 出川哲朗さんのアンバサダー就任時の様子がムービーで公開された。《写真撮影 関口敬文》 実際に電動車いすで高齢者の方とお出かけするなど、アンバサダーとして様々な活動を行なっていた。《写真撮影 関口敬文》 登場はもちろん電動車いすに乗って。《写真撮影 関口敬文》 WHILL株式会社の『WHILL Model C2』がジョイスティックを傾けるだけで360度回転するところを実際に見せてくれた。《写真撮影 関口敬文》 プレスやカメラマンの皆さんに4つのポイントを復唱させていた。《写真撮影 関口敬文》 外出できることで気持ちも変わるということをアピール。《写真撮影 関口敬文》 アンバサダーらしく、出川哲朗さんはポップを持って満面の笑顔でアピール。《写真撮影 関口敬文》 経済産業大臣政務官・佐藤啓氏も、展示コーナーで様々な電動車いすを試乗していた。《写真撮影 関口敬文》 経済産業省 商務・サービス政策統括調整官・山本和徳氏も、熱心に担当者の説明を聞きながら試乗。《写真撮影 関口敬文》