三菱 eKクロススペース《写真撮影 中野英幸》

◆不安も諦めもなく「普通に運転できる」こと

これはなかなかなだ。クルマをスタートしてひとつめの交差点を曲がっただけで、仕立ての良さが伝わってきた。

ただ、誤解を受けないように先に伝えておくと、『eKクロススペース』の走行性能は軽自動車全体から見れば特別に高い水準というわけではない。ただし、eKクロススペースのように全長や全幅に制約を受けているうえにとびきり背が高いスーパーハイトワゴンの運動性能は、物理特性上不利となる。そんな不利なパッケージングとしては、かなり頑張って動的性能を作り上げてきたと感じたのだ。


思えば2003年、ダイハツがスーパーハイトワゴンのパイオニアとなった初代『タント』を発売した時、試乗会では広い空間や実用性を引き換えに運動性能が大きく犠牲になったことを実感した。車体の重さゆえに自然吸気エンジン車はもちろん、ターボエンジン搭載車ですらターボ付とは思えないほど加速せず、重心の高さゆえに旋回はロールとアンダーステアが激しすぎてまるで「船」。

あの時から考えれば、ライバルも含めてスーパーハイトワゴンの動的性能は15年ちょっとで、なんと進化したものか。不安も諦めもなく普通に運転できるeKクロススペースの出来の良さに、ただただ驚いた。

◆これはクラストップの実力ではないだろうか


その安定したハンドリングと不安のない感覚の理由は、とにもかくにも車体の安定性に尽きる。まず強靭な車体をつくり、そのうえでしなやかに動くけれど芯のあるサスペンションを作ってきたのだ。ロールスピードがしっかりと一定に保たれることで腰砕け感を作らず、交差点を曲がる際にグラリと車体が不安な傾きをしない。それが運転の安心感になっている。

背が高いこともあってサスペンション自体はそれなりに硬め。だから乗り心地でいえば高速道路など速度の高い領域で、路面のうねりや凹凸などを受けて車体の上下動が気にあることもある。


しかし、市街地走行では路面の段差などを通過する際の衝撃もしっかり吸収し、乗り心地も上々。操縦安定性のレベルがぐっと高まったうえで、乗り心地とのバランスも良好だ。

液体封入エンジンマウントなど高価な部品を採用していることの効果もあるのだろう。3気筒エンジンとは思えないほど乗員に伝わってくる微振動がしっかり遮断されていたのも褒めたい部分。さらに高速巡行中の静粛性が予想以上に高かったこともお伝えしておこう。これはクラストップの実力ではないだろうか。


※5つ星評価はライバルに対してを想定したもの。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

工藤貴宏|モータージャーナリスト
小学校高学年から自動車雑誌を読みはじめ、1日でも早く運転したくて18歳誕生日の翌日には仮免許を取得したクルマ好き。大学在学中から自動車雑誌でアルバイトを始め、自動車専門誌編集部在籍後、編集プロダクションを経てフリーランスライターに。愛車はディーゼルエンジンのSUVと欧州ホットハッチ。

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