ボルボ XC40 B4モメンタム《写真撮影 中村孝仁》

◆激戦区の中でも存在感を放つ『XC40』

自動車を選ぶ時の決め手になる要素として考えられるのは、性能、デザイン、価格、走り、それに経済性あたりだろうか。どこを重視するかは人によって異なる。

近年クルマの性能は均一化して、性能で選ぶというのはなかなか難しい。それだけ突出したクルマが無いともいえる。となると、デザイン、価格、走り、経済性は要素として大きい。価格というのは単に車両本体価格だけを見ると騙されるから、ちゃんと装備品をチェックしてから考慮すべきである。またデザインは個人の趣味趣向があるのでこれも一概に断定するのは難しい。

残るは経済性と走り。そういえば使い勝手という項目もある。でもこれまでの自分のクルマ選びを考えてみると、昔はモータージャーナリストらしく、今乗っておきたいクルマという考えや、惹かれるメカニズムで選ぶケースがあった。しかし、最近はデザインや走り、それに使い勝手が先行し、そこに価格を当てはめていくというケースが多くなっている。


で、ボルボ『XC40』である。このセグメントは特に輸入車市場は激戦区となってきている。いわゆるハイエンドではメルセデス『GLA』、『GLB』、BMW『X1』、『X2』、アウディ『Q3』『Q3スポーツバック』、レンジローバー『イヴォーク』、ジャガー『E-PACE』。少し引いたところでVW『ティグアン』、プジョー『3008』、シトロエン『C5エアクロス』。少し変わった部類としてジープ『コンパス』等々。国産モデルを入れるとキリがないからやめておくが、ちょっと考えただけでもこれだけの数が出てくる。

そうした中でデザイン、価格、走り、使い勝手、それに経済性といった全てにおいて極めて高いバランスを取っているクルマが、ボルボXC40だと思う。

◆決め手は走り、価格、使い勝手か


何故か。主として選択の大きな決め手になるのは走りと価格、使い勝手だろうか。走りに関してはこのクルマが日本市場にデビューした時、そのCMPと名付けられたプラットフォームの潜在的ポテンシャルの高さに驚かされ、以来いつ、どのバリエーションに乗ってもこのクルマが期待を裏切ったことがない。性能的には中庸だが、走りのバランスという点では非常に優れたポテンシャルを持っている。

次に価格。ボルボは数多あるライバルの中で唯一、安全運転支援に手を抜かず、装備関係でも「モメンタム」以上を選んでおけばナビも標準装備だし、これは是非と思える装備はほとんど見つからない。だからオプションをてんこ盛りにする必要がないから車両本体価格と諸費用で乗り出せる。


それにワイドバリエーションで選びやすい。エンジンはPHEVを除けばすべて2リットル直4ターボだけだが、チューニングが「B4」、「B5」の2種があり、さらにFWD、AWDのチョイスも可能だ。2021年モデルからはBの頭文字のモデルが48Vマイルドハイブリッド仕様。それにリチャージというPHEVも用意される。

使い勝手に関しても日本車並みにコンビニ袋フックが付いていたり、センターコンソールにテッシュボックスがそのまま入ったり、ドアポケットにパソコンを入れられたりと、他との違いが明白だ。こうした点がXC40が今、この市場のトップランナーにいると考える要素である。

◆「軽妙洒脱」なB4モメンタム


今回試乗したのはB4と呼ばれる2リットルガソリンターボユニットと48VのISGM(インテグレーテッド・ スターター・ジェネレーター・モーター)を組み合わせたモデル。同じ組み合わせにはよりパワフルなB5も用意されている。因みにB4の性能は197ps、300Nmというもので、現代の交通状況を考慮すれば必要十分な性能である。

今回はPHEVのリチャージと乗り比べながら走らせた。リチャージは既に試乗記でもお伝えしているが、ブレーキフィールに個人的には難があると感じていて、それを除けばパーフェクトに近いPHEVとしての要素を持ったクルマだった。


それに比べるとB4モメンタムはFWDということもあったが、車両重量でリチャージよりも140kgも軽い。それに気になっていたブレーキ性能が踏み方に呼応してちゃんとプログレッシブに効いてくれるから、安心して踏み込んでいける。

ステアフィールも極めて正確かつ良好で、残念ながら雨、視界不良、それにヘビーウェットの路面という過酷な条件だった箱根の山坂を、自信を持って攻めることすらできるバランスの良さを見せた。同じ形をしていながら、リチャージのPHEVを重厚長大と形容するなら、B4は軽妙洒脱である。というわけでXC40は走りの面でもワイドバリエーションということが出来る。

◆ライバルと比べて魅力的な価格

価格帯は車両価格のみで409万円〜649万円までとなり、B4モメンタムのFWD仕様は479万円。パッケージオプションが4種類ほど用意されているが、どれもあれば便利だけど、まあなくても良いかなと思うものばかりで、素の状態でも多分大きな不満は出ないと思える。となるとライバル車と比べた時、価格はかなり魅力的に感じると思えるわけだ。

ちなみにFWDが欲しければこのB4モメンタムしかチョイスはない。より上級グレードとなる「Rデザイン」や「インスクリプション」はすべてAWDである。それでもライバルと比べて価格的優位性がある。やはりトップランナーだ。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来43年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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