日産自動車の本社《撮影 山田清志》

日産自動車は5月28日、2019年度連結決算と事業構造改革計画(2020〜23年度)を発表した。決算は売上高が9兆8789億円(前期比14.6%減)、営業損益が404億円の赤字、当期純損益が6712億円の赤字と、惨憺たる状況だった。

日産が最終赤字になるのはリーマンショック後の08年度(2337億円の赤字)以来11年ぶりで、赤字の額としては1999年度(6843億円の赤字)に次ぐものになった。しかし、状況はその当時よりも悪いと言っていいだろう。

当時はカルロス・ゴーン元会長のもと99年に「リバイバルプラン」を公表し、2000億円を超える構造改革費用を計上しながら、国内5工場閉鎖や2万人を超える人員削減を打ち出して、すぐにV字回復につなげた。ところが今回は新型コロナウイルスの影響で自動車販売がさらに悪化し、20年度も赤字が濃厚だからだ。おそらく大きな額の赤字が今後2年くらい続きそうなのだ。

日産は事業構造改革で生産能力を18年度の720万台から23年度までに540万台に落とし、工場の稼働率を80%以上に維持すると発表した。インドネシアやスペインの両工場を閉鎖する計画だ。

「余剰設備と生産性の低い領域を減らして約3000億円の固定費を削減し、そのレベルを維持する。削減するのは余剰設備、あるいは将来採算性の低い商品群であり、当社が集中する領域では着実な成長を維持する。次に、選択と集中。マーケットで見ると、日本、中国およびメキシコを含む北米をコアマーケットとして健全な経営をする。欧州やASEANはアライアンスを活用しつつ、適正な規模で運営していく。また、韓国からは撤退、ASEANでは一部地域で事業を縮小する。より効率よく事業運営をする」と内田誠社長は説明する。

日産では損益分岐点が“稼働率80%”のようだが、生産能力540万台の80%は432万台になる。ところが、新型コロナウイルスの影響で日産の4月の世界生産は62.4%のマイナスだった。おそらく20年度は432万台よりさらに悪化し、日産の世界生産台数は350万〜400万台になるのではないか。

そうなると、さらに設備の減損処理が必要で、20年度も大幅な最終赤字は避けられないと言っていいだろう。1兆円近い赤字になる可能性もあるといった声も聞かれる。そして、心配なのは日産の財務状況だ。

「われわれは引き続き十分な資産流動性を維持する。危機に対応するには十分。新型コロナに対応するために4〜5月に7000億円を調達している。うまく運用して、会社を厳しい状況のなか維持する」と内田社長は説明し、自動車事業手元資金が1兆4946億円、自動車事業ネットキャッシュが1兆646億円、未使用コミットメントラインが約1兆3000億円あるとした。

ただ、自動車メーカーは固定費の割合が高いため、給料などを含めて多額の資金が必要になる。トヨタ自動車の場合、1カ月で1兆円近い現金が必要と言われており、日産の場合でも数千億円が必要と見られている。いまのようにクルマが売れずに売り上げを計上できない状況が続けば、手元のキャッシュは一気になくなってしまうのだ。2020年度が日産にとって生きるか死ぬかの大きな山場になりそうだ。

日産自動車の内田誠社長《写真提供 日産自動車》 日産自動車の会見《写真提供 日産自動車》 事業構造改革計画:生産能力の最適化《資料提供 日産自動車》 事業構造改革計画:商品ラインアップの効率化《資料提供 日産自動車》