アウディ A6 45 TFSI《撮影 宮崎壮人》

◆2リットルターボ&クワトロの「A6 45 TFSI」

新型アウディ『A6』は“C8”、すなわち前身の『100』時代から数えて8世代目、今年で52年になる。思えばこれほど長いことポジションもコンセプトもブレずに続いていること自体、そういうセダンの実例が少ない日本車から見れば、改めて、羨ましく思える。

レポーター自身、実際に試乗経験があるのは2世代目の『100』以降。記憶が正しければ最初の試乗車は中古車の取材で乗った78〜79年式あたりの5気筒ガソリンエンジン搭載車で、独特のビートを奏でながらゆったりと加速する様や、当時の『80』に対しひとまわり広い室内空間のゆとりなど強く印象に残った。当時としても上級車ではあったけれど、決して気取らないクルマで、何より存分に心地よさを味わいながら乗っていられるところがよかった。

そんな2代目『100』の話を持ち出したのも、2リットルの4気筒エンジンを搭載する今回の試乗車「45 TFSI」でも、まったく不満なく『A6』らしい走りをモノにしていたからだ。

◆恐ろしいほどスムーズなパワートレイン


エンジン自体のスペックは2リットルのインタークーラー付きターボで245ps/37.7kgmの能力をもつ。これに7速のSトロニック(デュアルクラッチ)の組み合わせだ。ところが最新の『A6』の場合、全車にMHEV(マイルドハイブリッドテクノロジー)が適用されており、資料によれば12Vで駆動するこのシステムは、6kW/60Nmで最大5秒エンジンをアシストしているという(もちろんエネルギー回生も行なう)。

3リットルのような条件によるコースティングこそ実行しないから、迂闊にも今回の試乗でそのアシストぶりを“体感”することがなかったのだが、言い換えれば、それほど自然に十分に力強くスムーズな走りをもたらしている……そういっていい。


車重は、スペック表で実車の標準状態からの差異を割り出すのが実にややこしいが(このオプション付きは+○kg、これが加わると+○kg……と細かな文字で注釈だらけなのである)、備え付けの車検証には1800kg(前:970kg/後:830kg)とあり、クワトロであるとはいえ重量級の部類。

しかしゼロ発進であっても、アクセル操作に対する加速はまったく自然だから、まずストレスは感じない。もちろん高速走行も日本の法定速度以内での再加速、減速など、どんなシーンでもスムーズにこなす。

◆どう考えても20インチとは想像できない乗り味のよさ


スムースといえば乗り心地もそう。スペックシートによれば試乗車にはオプションの「ドライビングパッケージ」が装着されており、これはダイナミックオールホイールステアリングとダンピングコントロールサスペンションが組み込まれていた。

前者は駐車スピードで後輪が逆位相に切れ、非常に小さく転回ができることでも実感するが、それ以上に感心したのがこのサスペンションの乗り心地のよさ。これまたややこしいが、試乗車は「S lineパッケージ」を選んでいてタイヤに関して標準の18インチから19インチに上がるところを、さらに“+1インチ分の差額”を上乗せし20インチを履かせた状態になっていた。


しかしどう考えてもとても20インチとは想像できないほど、低速で不快なショックを一切伝えず乗り味が心地いいのである。しかもたとえ乗車人数が変わってもその感触は変わらないし、ひとたび屈曲路を抜けようとすれば、その極上な乗り味はそのままに安定したコーナリング姿勢を保ってくれる、のである。ステアリングフィールも自然であり、クワトロにより、コーナリングはまるでもっと小柄なセダンを駆っているようにヒラヒラとこなす。

パワーフィールも十分だが、この状態の乗り味とアシのよさに799.9万円(+オプション総額220万円)を支払ってもまったく後悔はしない……もしもレポーターがそういう身分なら、きっとそう思うに違いない。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

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