日産自動車グローバル本社《撮影 高木啓》

自動車メーカーの2020年春闘は3月11日に一斉に会社側から回答が提示された。トヨタ自動車がベースアップ(ベア)に相当する賃金改善分をゼロとするなど、労組には厳しい交渉結果となった。

トヨタのベアゼロは2013年以来7年ぶりで、競争力の維持強化に向けた経営側の危機意識が示された格好だ。乗用車メーカー8社のうち、トヨタを除く7社はベアを実施する方向だが、SUBARU(スバル)やマツダは要求・回答ともにベア額は公表していない。

一方、年間一時金(ボーナス)の回答は以下のようになり、要求に対して満額回答としたのはトヨタと日産自動車だけで、6社が要求水準に届かなかった。

◇乗用車メーカー8社の一時金妥結状況
企業 20年妥結(要求) 19年妥結
トヨタ 6.5か月(6.5) 6.7か月(満額)
日産 5.4か月(5.4) 5.7か月(満額) 
ホンダ 5.95か月(6.0)  6.3か月(満額)
スズキ 5.5か月+3万円(5.8) 5.9か月(6.1)
マツダ 4.8か月+6万円(5.0) 5.2か月(満額)
スバル 5.6か月(5.8) 5.6か月(満額)
三菱自 5.2か月(5.5) 5.7か月(満額)
ダイハツ5.7か月(5.8) 5.7か月(満額)

トヨタは10年連続の満額回答だった。各社の業績が悪化するなかで、同社の今期(20年3月期)連結決算は増益見通しとなっていることを反映した。

日産は業績の悪化が著しいものの、昨年を0.3か月分下回る5.4か月分の要求となったこともあり、満額回答が示された。ただし、労使は「20年度上期の業績を踏まえ、会社より見直しの申し入れを行う場合がある」との付帯条項を付けて合意しており、冬季分は減額の可能性も含ませている。

この2社を除く6社は要求に届かなかった。スズキを除く7社が満額回答だった昨年から一転して業績の悪化を映す展開となった。今春闘ではもともと要求水準が低く、スバルとダイハツ工業のみがいずれも5.8か月分と昨年実績を上回る要求としていた。回答ではこの2社のみが昨年と同じ月数を確保したものの、他の6社はすべて前年実績を下回った。

自動車産業は自動運転技術や電動化など「CASE」への開発強化に向けた投資負担増に直面しているが、今年は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大による先行きの不透明さが、春闘交渉にも大きな影を落とした。

トヨタ本社